【48話】八武祭見学
八武祭3日目早朝
「マキナス教官、今は八武祭3日目だって。 ギリギリ間に合ったね」
「間に合っておらんわっ! 『七味鳥』を捕まえるのに丸1日も使いおって」
マキナスジジィがキレ気味に怒る。
おかしいな? 一番美味しそうに食べていたのマキナスジジィだよ?
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道中、僕は『七味鳥』と言われる、珍しい鳥を発見し、マキナスジジィが『極上の鳥だ……一度だけ食べた事がある……あの味は忘れられん』と言って、僕に火を着けてしまったのだ。
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「『七味鳥』がめっちゃ美味いって教えてくれたのマキナス教官だし……」
「うっ……だが捕獲難易度が高いあの『七味鳥』をよく捕らえたものじゃな……」
「うん、頑張ったよ。 料理人もいたし、凄く美味しかった」
「……俺は、護衛で雇われた筈なんだが?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
僕はカティス達、見学組と合流して、八武祭見学をカティスの解説付きで見る事になった。
「ランディ、八武祭の事はどこまで知ってる?」
「ん? なんにも知らない」
「…………」
あっ、カティスが呆れてる。
さらに、カティス以外の名前も知らない人達まで呆れてる。
そんなにおかしいな事なのかな?
「まず、8対8で闘うチーム戦って事は知ってるよね?」
「ウン、シッテルヨ」
僕は久しぶりに嘘をつきました。
「……7年前に『捕縛器』が導入されてから、八武祭の戦闘中の死者は、たったの1人だって話だったんだけど、一昨日、数年ぶりに死者が出たんだ」
「死者? 捕獲器?」
「ランディは『捕獲器』の事を知らないのか? この世界には、人知の及ばない不思議なアイテムが存在するのは知ってるよね? 『判別器』や『測定器』とかね。『捕獲器』は装着者の体力が激減すると、スッポリと卵の殻に包まれる様に被われて攻撃出来なくなるから、模擬戦闘に導入されたんだよ」
「うん、理解した。 しかし、それでも死者が出たんだね?」
カティスの話しから伺うと、体力のあるうちから、一気に致命傷を受けると、殻に被われる前に死んじゃうと見た。
「そうなんだよ、あれは滅多に見ないレアなギフト『竜神の愛』の所持者だよ」
カティスの話を聞いて、教官の講義を思い出した。
同じ種類ギフトにも、上位と下位が有ることを。
下位は通常のギフト『○神の加護』、上位は『○神の愛』となるんだって。
余談だけど、5大国国王の次男は必ず『人神の愛』を授かるらしい。
それ以外の『愛』のギフト持ちはカードで言うならば『SSR』くらいのレアなギフトだ。
何せハゲジィに聞いたら、自分の任期内でそんなギフトの生徒はいなかったって、言ってたからな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
カティスの話を聞いていたら、本日の第1試合が始まった。
「ランディ、うまい具合に例の彼奴が見れるよ。
『イーストコート学院』の主力『竜神の愛』のギフト持ち、テスター・バスターを」
試合を観ていると、テスターって言う怪力バカを主軸にガンガン相手の体力を削ってく作戦の様だ。
魔法攻撃は、的確に中和されて、怪力バカにまで届かない。
怪力バカの武器は大ハンマーだから、防具の上からでも命中すれば大ダメージを与えている。
反則だよな……10代前半の少年が、戦闘教官並みの腕力を奮って攻撃しているんだから。
暫く観ていると、ボコボコにやられた奴等から、急に重たそうな鎧に被われて動けなくなる。
便利なマジックアイテムだな。
「ランディ、この試合はもう決まったようなものだ、隣の試合を見に行こう」
そう、八武祭は1度に2試合行い、午前に2回午後に2回の1日に八試合もやる。
カティスに連れられて、歩いて2・2分のもう一試合を見に行く。
それは、攻撃魔法繰り出す時、3人の後衛が両手を使って『火球』を放っていた。
えっ? 何? 1人で同時に2つの攻撃魔法?
僕の驚いた顔を見て、何故かカティスは満足そうにして話す。
「ランディでも、驚いたんだね……あれが『サウスコート学院』名物両手魔法だ。 ラディス兄さんの話だと去年も、3人が繰り出す両手の攻撃魔法に、どこの学院も手を焼いたって話だったよ」
たしかに、通常あの『火球』を相殺するには、六人の魔法使いがいる。
すると、とてもじゃないけど肉弾戦が手薄になる。
『サウスコート学院』は順調に勝利した。
僕は、両手魔法の使い手から、微妙な違和感を覚えた。
試合が終わって、どっかに移動する『サウスコート』の学生達。
「なあカティス、僕ちょっとあの人達、気になるから、覗きに行ってくるね」
「えっ? ええっ!? もうすぐラディス兄さんやダナムさん達が出る試合が…………」
「次の時に見るから」
と言って、カティスをあしらい、探偵ゴッコを始める僕。
しかし、まもなく目で追えない場所まで来てしまう。
一応セキュリティはしっかりしてるね。
まあ、王様も見学に来てるし、不正防止の為にはセキュリティも厳しくなるか。
僕は、石畳の床を『トントン』と踏みしめてニヤリと笑う。
これなら使えるか……
「第3レベル呪文……ハイディングミネラル」
僕は床に沈むように潜っていった。
この呪文は、どうしても勝てないモンスターと、遭遇した時に、鉱物に隠れてやり過ごすために生まれた魔法だけど、僕は覗きや偵察に使う。
薄い壁には潜り込めないけど、地下迷宮、坑道、岩山を使って切り開いた造りの城や砦には使える、便利な呪文なんだ。
さぁ追跡だ。
暫く様子を見ていたら、違和感の正体が判明した。
彼等は利き手がない。
そう、両利きだった。
そんなんで、同時に魔法を使えるの?
自問自答してみたけど、僕も足で回復魔法を使うしな。
学院に戻ったら早速実験しよう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
カティスと合流して、見学組と引率の教官達とお昼ご飯を食べてから、試合の見学を続けた。
今年のうちのチームは五年生二人、四年生四人、三人生が、ラディスとダナムの二人で出場している。
面白いルールを採用していて、同学年に出場者は四人までとなっている。
まあ、そうしないと五年生で埋まっちゃうからな。
さらに、魔法使いを必ず三人以上入れるってルールとギフト無し枠を一人分入れるってルールもある。
そうなると、幅の広い戦術が必要になり、勝敗の読みにくい試合になるんだろうな。
エリート養成&軍隊養成学校かと思っていたけど、楽しそうで、参加したくなってきた。
ドキドキワクワクしていたら、うちのチームが負けていた。
うわっ弱った……
因みに、ラディスと、ダナムは場外に逃げて終っていた。
あの二人が場外負けなんて、する様な性格じゃない……
あのバトルマニア教官の仕業だろう。
全ての試合が終わるまで、会うことは出来ないから
疑問、質問は覚えておいて、まとめてしよう。
ヤバイ……久しぶりにウズウズしてきた。
帰り道は大きい猫ちゃんと本気で戦おっかなあ。
こうして、僕の八武祭見学の一日が終わったんだ。
だけど、僕が『ハイディングミネラル』の呪文を使った時、気を付けてはいたんだけど、遠くから僕の事を見ていた人がいたんだ。
それは後に知ることになる、エリザの筆頭護衛ボヤンキーだ。
当時の僕は、ボヤンキーなんてわすれているけど。
ボヤンキーは『なっ!? 消えた? 沈んだ?? やっぱりアイツは魔物なのか? やはりエリザ様に会わせる訳にはいかんな……』
と、言ってたらしい……それが彼の不幸のはじまりだと知らずに。
次回は、土曜日くらいの目標です。




