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【4話】ランディこの世界を知る

 三歳になって、完全に乳離れの年齢に達すると、当然乳母のレジーナの役目は無くなる。


 因みに乳離れが遅すぎた原因は、レジーナが断乳を拒否したからだ。


 父親から『お役目終了』の言葉を貰って『せめて六歳……五歳でもいいですから』とレジーナは抵抗していた事を、僕は知らない。


 この頃になると、僕は頭の中では父親をロイエンと呼ぶようになった。

 実際は『パパ』を強要されているから『パパ』って呼んでやってる……ロイエンは親バカだなぁと思ってしまう。


 ▲△▲△▲△▲△


 別れの日。


 アイシャとロイエン、僕の三人で家の門から二人を見送る。

 母親のクラリスだけは、見送りに来なかった。


 荷物を沢山抱えた、レジーナが自分の娘のアリサに別れを促す。

「さぁアリサ、みんなにバイバイしないとね……」


 レジーナは微笑もうとしているけど、悲しい顔を隠しきれていない。

 見てるこっちが辛くなるほどだ。


「バイバイ? あぃさ(アリサ)バイバイするの? 」

 どうやアリサも、やっと今の状況を分かったらしい。

 アリサは顔をくしゃくしゃにして、

「ちないの……バイバイちないの……らんてぃ(ランディ)といっしょなの……バイバイちないの……」


 アリサはレジーナの悲しげな表情を見て何かを察したのか、大声で泣き出してしまった。

「バイバイちないの……うわぁぁぁぁん!」


 うっわぁぁ……別れ難いなぁ……なんて思っていたら、ロイエンもアイシャも瞳がうるうるしていた。


 これって、別れる必要無いんじゃないか?


 しかしアリサって可愛いな……僕より1ヶ月早く生まれたとは言え、二足歩行も言葉も僕が早かったからなぁ……アリサはずっと僕の後ろをテクテク付いて来ていたし、寝るときも僕が居ないと愚図ったりするしな……でも、殆んど一緒に寝てないけどね。


 回想に耽っていたら、レジーナまで泣き出していた。


「うぐっ……えぐっ……わ、私も……ぼっちゃまと別れるのは嫌ですぅぅぅぅ!!」


 母娘でワンワン泣き出してしまったよ……ちょっとちょっと、レジーナさん二十?歳の大人でしょ?

 まったく困ったものだ。


 ▲△▲△▲△▲△▲△


 結局、今夜はそのまま家に泊まる事になったが、あの母娘は僕を放してはくれなかった。


 久しぶりに日課の『指折り・回復』のコンボは使えなかった。



 翌日になると、ロイエン、クラリス、アイシャで話し合ったのか、僕の家庭教師として再雇用になっていた。


 レジーナは僕に抱きつき、喜びを(あらわ)にしていた。

 レジーナさん、抱きつく相手を間違っていますよ?

 ロイエンに抱きついて上げたら、きっと喜ぶだろうに……だって、レジーナは超巨乳だからね。


 ▲△▲△▲△▲△▲△


 三歳になってだいぶ経過したし、生活態度や言葉遣い等を、幼児のふりから少しづつ、素の自分に近づけていく。


 それでも見切りが早かったせいか、ロイエンには俺の子は出来すぎだ……本当に俺の子か?

 なんて爆弾発言を呟いていたりするし、アイシャはポカーンと口を開けたまま、後ずさりするし、ちょっとばかり面倒になっていたりもした。


 お陰で、クラリスだけでなく、アイシャも僕からも一線置くようになってしまった。

 まあ、それはそれで都合が良いのかも知れない。


 何故なら僕はいずれは、仲間の所に戻らないと行けないからな……


 香織ちゃん、ガル、アーサー、カーズ……何年かかるか分からないけど、絶対に戻るからね。



 今の僕が出来ることは、非常に少ない。

 とりあえず、来るべき日に備えて勉強、運動、魔力総量の向上に努めよう。


 このまま、回復魔法だけの才能なら、仲間を探すのは至難の技だ……大人になるまでに『金』と『権力』を出来るだけ手に入れておかねば……


因みに、異世界内政チートプランは出来上がっている。

たくさんネット小説を読んだからな。

『農作方法』『甘味』『紙製品』『金メッキ』『ガラス製品』『制服制度』『弁当箱』『調理方法』『手押しポンプ』

ふふっ、夢が膨らむな。


ちなみに、このときの顔をアイシャに見られ、ドン引きされたのは内緒だ。


 ▲△▲△▲△▲△▲


 レジーナは家庭教師として、かなり頑張っている。

 何処からか、本を借りては僕とアリサに読み聞かせをしている。


 そういえば、レジーナから僕の家は『准男爵』の位を持つ貴族って話だ。

 しかし貴族と言う割りには使用人が少ないし、書物も殆ど無い。


 もしかしたら、没落貴族?と思わせる程に。


 そしてこの国及び、周辺国家も爵位制で上から『公爵』『侯爵』『伯爵』『子爵』『男爵』『准男爵』って階級があるって聞いた。


 僕んとこは、この村の四分の一を管理する『ダーナス准男爵家』って事になる。

 まあ、農家の大地主って感じだから、そんなに大した事じゃないのは解った。


 使用人が少ないのを、ロイエンに聞こうかと思った事もあるが、地雷踏んじゃうかも知れないから、遠慮してみた。



 レジーナに聞いたところ、書物は確かに高価だが、高過ぎはしないって話だった。

 結果判明した事は、単に書物が苦手って理由だった。

 これによりロイエンの脳筋説が濃厚になってしまった。


 よくこんなんで、農地の管理なんてやっていけるな……



 レジーナから一桁の足算を教わり、っていうか、この世界の数学レベルを知りたかったが、レジーナはよく分からないそうだ。


 でも、レジーナは二桁の足し算を暗算でやっていたから、この世界の数学レベルはラノベにで出てくる異世界よりは高いかも知れない……微分積分、三角関数や微分積分とか出やがったら、不味いぞ僕……因みにフレミングの法則までは記憶に残ってるが、この世界に電気は無いから役立たずだから、そのうち忘れてしまうだろう。


 △▲△▲△▲△▲


 今日はレジーナが、おとぎ話っぽい本を借りてきたみたいだ。


 この手の本は、アリサが大好きである。

 逆に僕は、眠気を抑えなくてはならない、頑張ろう……

 しかし、今回は眠くならなかった。


 理由はレジーナが、『この世界には三人の神様によって造られました』なんて言ったからだ。

 三体の神には心当たりが有り過ぎた……偶然か?


 レジーナは本を読みながら話を続けた。

「この世界を創造した三人の神様達の名は『魔神エルドラド』『龍神バファイム』『人神アレクトー』と言いまして………………」


 間違いない、この世界は転生前と同じ世界だ。

 あの神どもに無理矢理転生させられたけど……異世界転生じゃなくて、同世界転生だった。

 何故なら、転生前の僕らが戦った神の一人は『アレクトー』だったからな…………


 僕はあの神どもとの戦いを、思い出した。


 ~~~~

「貴様らは死人を何体も蘇生するという大罪を犯した……我々の怒りに触れたことを、後悔しながら、滅び()くがいい……我、人神アレクトーの名において命ずる……ひれ伏せ!」


「「「「断る!!」」」」

 この瞬間、神の術が失敗した反動で神が地に崩れ落ちていたな……


 他の仲間達は、ひれ伏して動けなかった様だから完全に失敗では無いし、神の言葉の力は本物だったのだろう……


 しかし、思い出すだけで笑えた……まさか神が失敗の反動で、地にひれ伏してしまうとわね……



 ーーーゃま、ぼっちゃま、ランディぼちゃま。


 はっ、いかん! 考え事をしていたせいで、レジーナの話を聞いてなかった。


「あ、ごめん……ボケッとしてた」


「まあ、珍しいですね…………では、続きから……この大陸には、はるか昔に人神アレクトーの恩恵を与えられた国々が有りました。」


 ふむふむ……


「その国が人神アレクトーの名の一部を頂いて、大国と呼ばれるまでに発展したそうです。その名もアルカディア王国、アカシア王国、アンダルキア王国、アルテシアンナ王国、アルバトロス王国です。私達はそのアルカディア王国領の端に居るらしいです。その国々は大陸で、五大王国と呼ばれる国々は人神アレクトーの加護によって長い繁栄を続けているのです……って書いてあります」



 ズコッ……本をそのまま読んだだけか……危なく『ビッチ』から『ビッチ先生』に格上げするところだったじゃないか……



 まてよ……ちょっとおかしいぞ? 前世と世界が同じなら、何故カーズは僕を見つけられないんだ?

 いかに別人になってるとは言え、カーズの『シャイニングロード』を使えば、僕の手がかりくらい分かるはずだし、三年も経てばカーズは第10レベル呪文が使えている筈……第10レベル呪文を使えば、僕の所在なんて、楽勝で見つかる筈だ…………なんか嫌な予感しかしないな……



 そんなランディの不安をよそに、ランディ自身は、すくすくと成長して四歳になった。


 ※ランディ 四歳

 ※ギフト 無し

 ※魔法の種別 回復系

 ※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』

 ※魔力総量 1801



次は明日、投稿します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 微分積分が二回書かれてますが、大切なことなんですね
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