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【44話】謎の毒

 ある日、激しい雷を伴う大雨が降っていた。


 年に二度ほどしかないくらいの雷雨だったが、それほど珍しいと言うわけではない。


 だが、この雷雨を起点に、ある河川の一部の水の流れが緩い湿地帯で、奇妙な病気が流行った。


 しかし、幸か不幸か分からないが、人口の少ない集落ばかりの出来事だったので、大きな騒ぎにはならなかった。



 そしてある日、百人を余裕で上回る集団がその河川の近くにある湿地帯に休憩のため、野営していた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 今回の『八武祭』は『ニャニゴール領』で開催される。


 大型の馬車が一台、やっと通過できる狭い道の三叉路に、老朽化した道標が設置されていた。


 道標には一方に『ニャニゴール領』と書かれてあり、他の二つの方向には何もなかった。


 ある日、獣が偶然にも道標に衝突して、これまた偶然に『ニャニゴール領』の道標が別の道を差してしまった。



 それから数日後、ランディとマキナスを乗せた馬車がやって来た。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 ランディ視点


 マキナスジジィが言うには、十五日はかかる『ニャニゴール領』への道程も約半分にショートカット出来ると言う。



「ねぇ、マキナス教官。まったく山賊とか襲って来ないんだけど……」


 せっかくヤル気満々でマキナスジジィと同行したのに期待はずれだ。


 出てきたのは大きい猫ちゃん、数匹だけだった。


「襲われない事は、良いことじゃないか……何を物足りなそうな顔をしている? まさか、お前スクットのように戦闘狂になったのか?」


「失礼ですね、リッツ教官と一緒にしないで下さい。 ただちょっと欲求不満なだけです」


 あれっ? 僕、バトルマニアのリッツ教官の影響なんて受けてないよね?


「サーベルタイガーを四匹も倒しておいて、何が欲求不満だ! この戦闘狂!」


 そうそう、あの大きい猫ちゃんは、サーベルタイガーって言うんですって。

 ある日を境に一日に二回遭遇してます。

 念のため、小声でクレリック呪文の『オグルパワー』を、使わせて貰いました。


 護衛のはずのオジサンは、ただの解体屋さんになっています。


「戦闘狂とはひどいですね、ただのやんちゃしたい子供じゃないですか……あれ? 別れ道がありますよ」


 僕が指を差すと、マキナスジジィはそちらに顔を向けて呟く。


「ほほう……このまま順調に進めば二・三日で領内に着くな。近道は大当たりじゃな……おい、解体屋! 標識の方角だ」


「解体屋じゃなくて、護衛のつもりだったんだけどなぁ」


 護衛は小声で呟きながら、別れ道を進んでいった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 数時間進んでいった辺りで様子がおかしいのに、マキナスジジィが気づいた。


「はて? こんな湿地帯を通る道だったとは、聞いていなかったのう。 それに、何だあれは?」



 僕も、様子がおかしいねに気づいた。

 湿地帯とかじゃなく、先に見える人だかりだ。

 規模からいって盗賊の類いじゃないよな。


 マキナスジジィが『御者』兼『解体屋』のおっちゃんに『そのまま進め』と指示していた。


 近づくと、この国の騎士だってことが判った。

 ちゃんと勉強しておいて良かった。


 だが、明らかに様子が変だ。

 そんな騎士達も、僕らに気づいて、呼び止める。


「止まれ! 我らは王国騎士団所属である! 突然だが身分と名を名乗れ!」


 なんか具合悪いのに、頑張って声を出している感じがする。


 偉そうだが、先に名を名乗っているところが好感触だ……余裕があれば、治してあげたいな。


「騎士団殿、任務ご苦労様です! 私は『ウエストコート高等学院』主任教官、マキナス・ルードマイヤです。 護衛と生徒一名を連れて『ニャニゴール』に向かうところです」


 マキナスジジィの別人か? と思わせるまともな言葉に驚愕していたら、騎士達はすがるような態度を見せた。


「あの学院か。 三人で移動するとは、よほど優秀なのだろう。 その中に回復魔法を使える者はいるか? 」


 僕とマキナスジジィは手を挙げた。


「おおっ二人も使えるのか……悪いが奥に来てくれ」


 足早に歩く騎士の表情を見てると、痛みを我慢しているのが解った。


 そして、歩けている騎士はまだましだったと気づいた。


 野営している騎士の殆どが、まともに立てない状態だったからだ。


 見ることは出来なかったが、痛みで唸っている者も少なくない。


 少々歩くと、豪華な天幕があり、入り口を守るように立ちはだかる、装備のひと味違う騎士が二名いる。


 騎士が完全に敬語で話しているところを見ると、格が違うのが分かる。


 そのまま中に通されると、ただならぬ気配を持った騎士が一人と、気品あふれる男女が一組と、痛みにうなされている少年がいた。


 その瞬間、あのマキナスジジィが、サッと頭を下げ

 僕らにも促す。

「国王様だ、ワシの真似をしろ」


 と小声で言ってくれた。


 教えてくれたおかげで、すぐに反応して真似をしたら、その王様が話してくれた。


「よい、面を上げよ……早速で悪いが我が子に解毒魔法を掛けてくれないか? 親バカですまないが、痛がる我が子を見てるのが辛いのだ」


 恐らく王さまの妃だと思われる、美女も悲痛な表情で、少年を撫でている。



 マキナスジジィは珍しくキビキビしている。

「はっ、解毒の種類は判明しているのでしょうか?」


 すると、ただ者じゃない騎士が口を開く。


「解毒の種類は『デトックスC』だ」


 そして、マキナスジジィの眉間に一瞬シワがよったのを見た。

 それは、この騎士も見ていたようです。


「『C』のデトックスは使えぬか……」


 そうなんです。

 マキナスジジィのデトックスは『A』『B』『D』『F』の四つだ。


 通常は二・三個って言うから、マキナスジジィは多い方なんだが、偶然対応しない『C』に当たって、表情に僅かな揺らぎが出たんだろう。


「はい、僕が使えます」


 すると、王と王妃は『頼む』と頭を下げた。


「王!! 気軽に頭を下げるなど……」

「よいのだ、この状況を打開出来ず誰一人救えないで、なにが『王』か。 それに今は、王より父親でありたい」


 騎士の注意を、途中で遮った王様。

 あっ、僕この人の事、気に入っちゃった。

 疑問点がいくつもあるけど、先ずは解毒だ。


「じゃ、デトックスC」

 脚部に激しい痛みを訴えていた少年……王子様か。

 王子様は痛みが消えてたような、ほっとした顔になった。


 だけど、また直ぐに暗い顔になって話す。


「また、あの痛みが来るの? もう嫌だよう……助けてお兄ちゃん……うわぁぁぁん!!」


 だよね、解毒で完全回復するなら、王様の従者が出来ない訳ないはすだ。


 それに、対応する解毒魔法も調査済みだしね。


 僕は、騎士に向かって話した。

「今までで分かってる事、全て話してくれますか?」



次回は少し短めなので、火曜日、水曜日の連投予定をしています。

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