【3話】ランディ回復魔法習得する
自分の身体に、何か説明出来ない感じで、力の流れを感じる……何だろうか?
目を開けると、父親と母親、メイドのアイシャ、乳母のレジーナと、初めて見る顔のジジィがいた。
「ランディ!」
「「ぼっちゃま!」」
三人の心配そうな表情から一転、ほっとした顔になった。
そうか……僕は階段から転げ落ちたんだっけ……よく助かったな。
「ほっほっ……これで大丈夫じゃと思うが、もう一回かけとくかの」
と言ってジジィは僕の頭に触り、ある言葉を発する。
「ヒーリング」
「んあ~」
(これだ。身体に流れる正体不明の力は)
これから、これは魔力の流れと言うことにしよう。
ついでに少しだけ痛かった身体の一部の痛みが、治まった。
なんか、流れのコツを掴んだぞ。
「あうばんぶ」
(ヒーリング)
まだ上手く話せないが、ちょっとだけ身体に魔力の流れを感じた……まぁ魔法は失敗したけどね。
今はまだ、魔法は使えない様だが、そのうち使えるかも知れないな。
きっちり言葉を発音出来る様になったら、また試そう。
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ついに、ベビースキル『二足歩行』が出来るようになった。
歩けるって事は、なんと素晴らしい事なんだろうか……
幸せを噛み締めるように、よちよち歩く。
日頃から座ったり、つかまり立ちしていたからな……日々の訓練の賜物だ。
一ヶ月早く生まれた、アリサも僕に触発されたのか唸りながら、つかまり立ちをしている。
この分ならアリサも、近いうちに伝い歩きが出来るようになるだろう。
最近のアリサは『ダァ、アダッ』と叫びながら僕を叩いたり髪を引っ張ったりする。
もちろん大人の知識がある僕には、アリサの行動は敵対行動じゃなく、興味があるから確認行為をしていると理解出来る……出来るんだけど、僕の心許ない髪を引っ張るのは勘弁して欲しい。
ハゲるのは嫌なのだよ。
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どうやら、僕は一歳になったようだ。
一歳になったお祝いとして、いろんな豪華な食事を食べる真似をさせられたよ。
きっと健康に育って欲しいの意味を込めた儀式かなんかだろう。
この日を境に、一日一回だった離乳食が一日四回になった。
それでもレジーナの母乳は有りがたく頂いている。
そして、みんなには内緒にしているが、結構言葉を話せるようになったんだぜ。
今は、ビックリされないように、
『パパ』『ママ』『ごはん』『う○ち』『ちっこ』『だっこ』『おりる』『あーしゃ(アイシャ)』『ありた(アリサ)』『びっち(レジーナ)』
くらいに留めて、言ってやってる。
レジーナは何故私だけ『ビッチ』なのかしらと頭を捻っているけど、教えてやんない。
そして、ある程度言葉が出るようになったから、
回復魔法の『ヒーリング』を試すことにした。
寝る前に、家具の角に自分の手を打ち付ける。
ジンジンと痛みが伴うが、この程度の痛みなど、僕にとって大した事では無い。
あの時に感じた魔力の流れを思い出し、
「ヒーリング」
どうだ!
すると手の痺れはスゥーと引いていった。
やった成功だ。
しかし、急に頭がぼうっとして、目眩までする。
魔法の副作用? それとも魔力切れ?
判らないので、もう一度手を角に打ち付けて『ヒーリング』を唱えた瞬間、僕の意識は無くなった。
※ランディ魔力総量 12→11
どうやら、昨日は魔力が枯渇して気を失ったみたいだな……これは覚えておこう。
しかし『ヒーリング』一回で打ち止めとは悲しくなってくるな……
今夜は気絶しないように一回だけにしよう。
ヒーリングを一回唱えると、目眩がしてきた。
恐らく魔力の枯渇寸前の、サインみたいな物だろう。
今夜はこれで終わりにしよう。
※ランディ魔力総量 11→13
ヒーリングを唱える毎日が続いた。
全く成長しない日々に焦り出す……ラノベだと日をおうごとに成長して、英雄の道を歩き始める筈なんですけどね?
そんなある日、ヒーリングを一回唱えても、魔力枯渇のサインである『目眩』が無い……まさか。
もう一度唱えて見た。
するとヒーリングは無事に成功した。
よしっ! ヒーリングが二回唱えることが出来るようになったぞ。
俺の魔力総量は使えば使うほど上がっていると見た。
今はまた目眩がしているけど、試しに枯渇するまでヒーリングを使い、僕は気を失う。
※ランディ魔力総量 21→19
夜になってヒーリングを使ったが、何故か今回はヒーリング一回で、魔力切れのサインが出た。
まさか、気絶するまで魔法を使うと魔力総量が減るのか?
だとしたら、魔力総量の増減の仕組みは、魔法を限界近くまで使うと魔力総量が増えて、枯渇まで魔法を使うと、逆に魔力総量が減ってしまう、と仮説を立てて見た。
いや、これでほぼ間違いないだろう。
今、ここで気がついて良かったかも知れないな……
これからは魔力切れのサインが出たら、魔法は使わない事にしよう。
こうしてランディは約一年間ずっとヒーリングを使い続けた。
※ランディ 二歳
※ギフト 無し
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法 『ヒーリング』
※魔力総量 401
僕の魔力総量は判らないけど、ヒーリングを三十回以上唱えても魔力切れしないようになった。
ヒーリングの消費魔力は、計算すると6~10って予想が出来る。
つまり僕の魔力総量は、少なく見積もっても、180……いや200は有るだろう。
この調子でガンガン行きたいけど、毎日ヒーリングを三十数回もかけるのは、手間になってきたな……
何か良い案は無いだろうか。
数日してから、僕は父親に片言で頼み事をしてみた。
「パパ、ジジィ、見る、ヒール、見る、ジジィ、行く」
(親父ぃ、ヒーリング使えるジジィに会いたいんだけど連れて行ってくれねえか?)
同じ言葉を何回か繰り返したら、意味を解ってくれたみたいだ。
どうやらジジィは、この村の人間で二人しかいない治療師の一人だって話だ。
回復魔法ってそんなにレアなのか?
父親にジジィのいる場所に連れてきて貰い、対面する。
「おう、おう……あの時の赤ん坊か……大きくなったもんじゃのう……ケガで来た訳じゃなかろう?」
「それがですね……」
「ジジィ、魔法使う、それ、見る」
「なんと、もうこんなに話せるのか? この子の素質は?」
どうやら、ジジィは僕がこれだけ話せる事に驚いているな……本気の僕はもっと凄いんだぜ。
「はい、ランディは回復魔法の素質が有るんですが……」
語尾が、小さくなる我が父親。
「が?」
「魔力総量が12しか無くて……」
ジジィも、僕の魔力総量には驚いてる。
「なんと、たったの12とな!? それは可哀想じゃが、子供のうちから鍛えれば30……もしかしてこの子なら50は行くかも知れんぞ?」
「魔力総量ってそんなに増える物なんですか? 私は聞いたこと無いですね」
僕……結構増えてますが?
「訓練学校で、みっちり訓練すればある程度増える子もいるんじゃよ」
ふぅん……やっぱり学校とかあるんだね。
「でも、学費がかなり高いから厳しいかな……」
やっぱりうちは貧乏貴族だったか……凹むな。
「じゃな……ギフト持ちなら確実に学費免除なんじゃがの……」
う~ん僕の目的は『ヒーリング』以上の回復魔法を見たいんだけど……
「ジジィ、魔法、見る」
ジジィはジジィと言われるのが不快なのか、苦い顔で、
「もったいないのう、このガキはかなり頭が良くなりそうなのにの……」
タイミングよく、何人か怪我人が来た……でも、重症じゃないな……
ジジィは、手早く『ヒーリング』で治していく。
「ワシくらいになれば、一日四十回もヒーリングが使えるのじゃ、どうじゃ? 凄いじゃろ?」
(ほんとは百回以上はギリギリでイけるが、バレると不味いんでな……)
僕も、それくらいなら使えるぜ。
でも、ここは持ち上げておこう。
「ジジィ、スゴイ、もっと、スゴイ、見る」
ジジィは、僕の言葉に調子に乗った。
ジジィも『チョロい星』の出身らしい。
「ようし、良く見ておけよ……エクスヒーリング」
しめた! 僕はさりげなくジジィの背中に触れていた。
……うん、やはり魔力の流れが理解出来る。
僕って天才?
……
…………
ジジィを、出来るだけおだてた僕は、家に戻ってから
自分に回復魔法をかける事にした。
「エクスヒーリング」
テコの原理でへし折った、僕の小指が治った。
ふふふ……成功した。
僕は、これを目眩がするまで繰り返した。
だけど、僕はMじゃないからな。
僕は、このエクスヒーリングを、毎晩使い続けた。
そして、ランディは三歳になる。
※ランディ 三歳
※ギフト 無し
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』
※魔力総量 1101
本日、もう一本投稿します。