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【32話】ダナム登場

少し短めです

 俺様はダナム・マツヤ……天才だ。


 俺様は今、ウエストコート高等学院の二年エリートコースに在籍している。


 ここでは、将来有望なスゴ腕達が集まると言う。

 入学当初は、俺様の様な天才がごろごろしてるのかと思い驚愕したが、エリートコースでも俺様の成績は上位だった……天才で良かった。


 この世の騎士の階級は強さで決まると言ってもいい……だから俺様は努力を怠らない。


 二年に進級した時は、エリートコースのベスト5までのしあがった。


 しかし、2位から5位までの実力は伯仲だ。

 だから、俺様含めての四人に順位はほぼ無意味で、『二年のエリートベスト5』と呼ばれている。


 だけど、俺様には一人だけどうしても勝てないやつがいた。

 それが、ラディス・ノートンだった。

 ラディスは、座学も模擬戦闘も肉体強化魔法全て、俺様を越えていた。

 だが不思議な事に悔しさはそれほど感じない……目標が出来て嬉しいくらいだ。

 俺様は、ラディス・ノートンを尊敬するようになった。


 そのラディスが、俺様の弟を使って一年のランディ・ダーナスを調べてほしいと言ってきた。


 そんな回りくどい事をしなくても、ラディスにも弟がいるだろうにと思ったが、素直に従う事にした。

 上下関係とはこう言う物だからな。


 しかし、ランディ……ランディ…………どっかで聞いた名前だな……何故か名前を聞いてから、ランディの事が気になる様になってしまった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 弟のカイモンが、ランディの情報を持ってきた。


 何と驚く事に、傭兵見習いどもがやっている、儀式(リンチ)を返り討ちにしたり、クラス全員に、ヒーリングの魔法を覚えさせたとか、聞いた。

 マジかよ……ランディって奴は何者だ?

 と、思っていたら、もっとビックリする事を聞いた。

 ランディ・ダーナスは俺様と同じ村の出身だったんだ。


 同じ村……ランディ……同じ村……ランディ……ランディ? ああっ、思い出した! 四年くらい前に俺様にはむかったガキだ……あいつ俺様より年下だったよな? ならあいつも特待生なのか……生意気だな……


 しかしいくら生意気でも、四年も前の事を蒸し返して、立場を分からせる様な事はしない。

 もう、俺様は大人だからな……


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 ある日、訓練の終わりに、仲間と食堂へ立ち寄った。

 すると、女の獣人が俺様達を見てあたふた、あわてふためいている。


 俺様は獣人が嫌いだ。

 まあ、ただ獣人が嫌いな他の貴族と違って、俺様には理由がある。

 あいつらは卑屈なんだ、いくら弱いからって、必要以上に縮こまっているからな……

 別に俺様と対面してる時以外は堂々としていればいいんだ。


 今見ている獣人の女も、堂々してれば良いのにあたふたしている。

 そして、走り去るようにすれ違い……すれ違わなかった……あの獣人は慌てすぎて躓いて、スープを俺様ともう二人に引っかけやがった。


 普通に歩いていればこんな事にはならないだろう……だから、俺様は獣人が嫌いなんだ!



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 この学院では、やり過ぎる暴力や陰湿な虐待を管理統制するため、わざと訓練場内での暴力を黙認していたが、それでも『0』になるわけでは無い。

 もう一つの方法として『炭を交ぜた水をぶっかける』と言う方法を慣例と仕立て上げ、訓練所以外での虐待を惨事にならない様に誘導していた。


 そして、ダナム・マツヤ含むエリートコースの生徒に捕まった獣人のレオパルダが、黒色の水をぶっかけられていた。


「ううぅ……グスッ……ご、ごめんなさい……」


「いいや、許せないな……俺たちももちろんだが、ダナムさんの服を汚した罪は簡単に消えないぜ……」


 ダナムもこうした虐めは、好まない方であったが、レオパルダの態度にイラついていたため、止めたりはしない。


 レオパルダの水攻めは暫く続いた。

 ある男が、この場に乱入するまで続いた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 う~ん、パルダ先輩おそいなぁ……


 今日はパルダ先輩を、脳内でモフモフしなから、勉強していた。


 そして休憩時に、パルダ先輩が僕をベンチで待たせてどっか行ってしまった。

 まあ、どっかと言っても食堂なのは、分かってるんだけど…………


 だからこそおかしい……食堂からここまでそんなに時間はかからない……パルダ先輩がニコニコしながら『ランディは待ってて』なんて言うから、待っていたのに……パルダ先輩はなかなか来ない。


 僕は、パルダ先輩を探しに行くことにした。


 ……

 …………

 ………………


 食堂には誰もいない……友達に捕まって、ここで時間を取られているかも……なんて可能性は無くなった。

 そして、嫌な予感が駆け巡る。


 こんな時はこれ。

「第3レベル呪文……ディテクトアイテム」

 呪文の詠唱と共に、パルダ先輩の髪留めを頭に浮かばせた。


 この呪文は、アイテムの正確な名称または、実際見たものでハッキリとイメージ出来る物を対象として、探しだす事が出来る。


 無くし物の多い困ったちゃんには、必須の呪文である。


 呪文の発動は成功しているので、僕は自分だけに見える光の筋を追って、駆け出した。


 ……

 …………


「ここは……」


 ここは、エリートコースの教室から最寄りの更衣室……

 まあ、更衣室って言っても着替える仕切りがいくつも有って、ついでに汗を流せる所があるって程度の部屋だけどね。


 そこから、女の子の鳴き声がした。

 パルダ先輩だ。


 僕は更衣室の扉を蹴破った。


 そこには、黒い水をかけられて、泣いているパルダ先輩と四人の生徒がいた。


 様子から察するにパルダ先輩の過失は『0』じなゃないだろうが、知ったことか!

 僕の愛玩先輩をっ!!

 

 許さん!

次回は日曜日の予定です。

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