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【31話】電撃魔法誕生

 あれからしばらくたって、マキナスジジイから、連絡があった。

 そうモルモットの到着だ。


 二年生攻撃魔法コースから、三人。

 一年生攻撃魔法コースから、一人。

 昨年落第した、元攻撃魔法コースの生徒が二人。

 一昨年落第した、元攻撃魔法コースの生徒が一人。


 七人の英雄(モルモット)がやって来た。



「マキナス教官、協力ありがとうございます」


「なぁに、今度はお前で実験するから問題はないわい……それに、お前がどんな事を思い付いたか興味深いからな……クックックッ」


「期待しないでくださいね、マキナス教官。クックックッ」


「「クックックッ……カーカッカッカッカッ」」


 子供と、じいさんの高笑いに、生徒達(モルモット)は自分の腕を抱きながら、青ざめていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 十分弱茹でたじゃがいもを、四分の一にスライスして、銅と亜鉛の電極板を作り、じゃがいもに突き刺して、電線で直列接続する。


 軽くショートさせると、バチッと音がなり青白くスパークした。


 殺傷能力は無いが、魔法を覚えるきっかけを作るだけ……失敗したらカロ○ーメイトを食べさせて逃げるだけ……ノーリスクだ。



 マキナスジジイには、攻撃魔法コースの教官を一名借りたいと言ったけど、説明だけだからワシがやるって言ってた。


 先ずは、二年生の三人にマキナスジジイが説明している。


「いいか? お前たち……火の攻撃魔法を覚えた日を思い出せ……そして思い出したなら、始めるぞ、ランディ!」


「はっ! では先輩……行きますよ……なぁに、ちょっと痛いだけです……ぽちっとな」


 バチッ!

「あづっ!」


 引き続き別の先輩を感電させる。

「ぽちっとな」


 バチッ!

「ぎゃっ!」


 はい三人目。

「ぽちっとな」


 バチッ!

「いでっ!」


 これを三回づつ続けた。


「ようし、今の衝撃を、魔力を放出しながら思い出せ……そうだ」


 三人の先輩のうち一人は、指先から青白い光が瞬いている。


「おい、ランディ! なにかイメージしやすい名称とかないのか? 初めはそれっぽいのを口に出すと成功しやすい……理由は聞くな、ワシもしらんからの」


 イメージ、イメージ……イメージかなら、カーズのあの呪文の名を借りよう。

「ライトニングで、お願いします」


「よし! お前たち、もう少しで出来ると思ったら、目標物に向かって叫べ、『ライトニング』と……」


 三人の先輩は、マキナスジジイの言葉に従って叫んだ。

「「「ライトニング!!」」」


 バリバリッ!! ドガンッ!

 何と、一人の先輩が電撃を、目標物に当て、もう一人の先輩も目標物の近くに電撃を放っていた。

 もう一人は、手の近くでスパークしただけだった。



 だが、成功だ……電撃魔法の完成の瞬間だ……

 僕はマキナスジジイと見つめ合い、手を叩きあった。



 バチン!

「痛いのう……お前は竜神のギフトでも隠しもっとるんか?」

と、赤くなった手にヒーリングをしている、マキナスジジィ。

 ……

 …………

 ………………


 暫くすると、二年生の先輩は完全に電撃を物にしている。

 先輩達が言うには『火の玉』よりずっと簡単に覚えられたそうだ。


 二年生の先輩達も指導側になって、実験は続けられた。



 そして、三日後…………


「やった……オラも魔法を覚えただ……ランディ、オラも不思議な痛いあの光の魔法を覚えただ!」


「ソイホォン『ライトニング』な」


「ああ、ライトニングだか……意味は解らないだけども、ずいぶんカッコええ名前でねか」



「ああ……これで進級確定だね、おめでとう」


 なんて言ったら、ソイホォンが涙ぐんでいた。

「ありがとなランディ、これでみんなにばかにされずに済むだよ」


 なんて、語り合っていたら、マキナスジジイがやって来た。


「悪いが、進級は確定じゃが、ランディの編み出した『ライトニング』は非公開に指定された……」


「えっ?」

「あの、僕らは……学院に復学できるんじゃ……」


 退学組の人達が不安げに聞いてくる。

「残念だがお前らは、復学は出来ん……じゃがなお前らはを非常勤教官として雇う準備は出来ておる……そのための人選じゃからな……」



 後で聞いた話だけど、マキナスジジイは、この学院から近くに住んでいて、学院で働き手となっても問題の無い家庭を狙って、呼んでいた事を知った。


 おいおい……僕の電撃魔法が計画倒れだったらどうすんだよ? 無茶するなぁ……


 こうして、口の固そうな生徒たち、昨年と一昨年に退学になった元生徒達を集めて、電撃魔法を内密に広めていった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 ◇学院長室◇


 ここには、攻撃魔法コースの教官三名と、マキナス教官、ハベンスキー学院長、キッツネー学院長代理が、会議をしていた。


「して、結果どうじゃった? ランディの考案した『ライトニング』は?……」


 学院長の問いに攻撃魔法コースの教官である一人が答えた。


「結果として、『ファイヤーボール』より範囲が狭く、同程度魔力を込めた場合、ダメージが八割程度に下がります……軍事的にはそれほど影響を与える新魔法ではありません……さらに、電撃を産み出すための金属は一つは銅で、もう一つは不明です……初めは銀かと思い試したところ、電撃は発生しませんでした」


「なら、彼が見つけた謎の金属は、判別器と同じく未知の物体か……」


ランディは、亜鉛を学院に向かう道中に偶然見つけたと、苦しい誤魔化しをしていた。



「恐らくそうかと……一応彼が見つけたとしている場所は聞いてはおりますが、それを捜索するにも、学院の力だけでは……」



「そうか……」

 キッツネーが、落胆の溜め息をつく。


「しかし、魔法の習得率が二週間で十割を誇るのは異常です。……さらには、近接戦闘ではレジストがし難く、大発見なのは間違いないです」



「ほう……すると、軍事利用が難しいなら、我が学院で暫くの間は、独占しても問題あるまい……どのみち、百人分くらいしかないのだろ?」

 ハベンスキーはニヤリとした。


「ハゲスキー、もしや新魔法『ライトニング』の披露目を『八武祭』にするつもりか? なら二年間我慢出来るか? のうハゲスギーよ……」


「ハベンスキーだっ! 二年も待てとは、マキナス…………『八武祭』でランディと『ライトニング』を同時に披露させるつもりだな?」


 学院長とマキナスの会話に、キッツネー学院長代理が、割り込む。


「黙って聞いていれば、回復魔法を連発出来るだけの小僧をあの『八武祭』に、出場させる気か? 話にならんっ、あの小僧は教官の真似事でもさせておけばよいものを……」



「キツネ、だから貴様は馬鹿だと言われるんじゃ……あやつは、二年傭兵コースで無双しとるぞ? さらに、騎士コース・エリートコースのガキどもも目を付け始めておる」


 ちなみに、キッツネー学院長代理を『馬鹿』と呼ぶのは、マキナスと学院長の二人しかいない。


「は? 回復魔法しか使えない小僧が? 一学年上の傭兵コースで!? バカな……」



「まあ、そんな訳じゃから、上には一年に生きの良いのが来たから、再来年に期待しろとワシから言っておこう……じゃから暫くは口外せぬようにな……」



 話が纏まりかけた時、誰かが扉を叩いた。


「失礼します! ウエストコート公(侯爵以下なら卿でOK)より、使者が来ております」


 扉の外からの声に、マキナスはおやつが待ちきれない子供の様に立ち上がった。


 「判別器がついに来たか……」

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