【30話】攻撃魔法コース
最近の僕は、必須授業以外は、二年傭兵コースと商人コースにちょくちょく足を運んでいるが、時間に余裕があるときは、一年の攻撃魔法コースにも顔を出す様になっていた。
何せ、エリートコース以外は出入り自由なんだから、たくさん学ばないと損だからね。
このコースも進級条件は攻撃魔法の修得となる。
そして、平均すると十人に三人は落第するらしい。
まぁまぁ厳しいと思うな。
ここでも、何か介入出来る事はないかと虎視眈々としていましたが、マキナスジジィが事前に教えてくれたから、僕は余り役にたたないかもな……
マキナスジジィから貰った知識は、魔法の覚えの悪い生徒の八割は、幼少の頃に火傷をした経験の有る奴って事だ。
そして、魔法を覚える切っ掛けも炎に触れてみるって話しだった。
マキナスジジィの話に確証が無いのは、過去に火傷をした事の有る少年でも、攻撃魔法を修得しているからだって話だ。
でも、何か落とし穴がある気がするな……
この世界の攻撃魔法は『火の玉』一本だ……掛け声は『ファイヤー』らしい。
一応、冷却系も有るらしいが、殺傷力が無いため授業のカリキュラムに含まれないが、遊び程度で学んでいる生徒も多いらしい。
そして『火の玉』を修得すると、火の玉の操作、魔力を多く込めれば威力が上がり、飛距離が伸びる。
その後は、火の玉のレジストをやるらしい。
実際、火の玉さえ修得出来れば、後はとんとん拍子に進むらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は。マキナスジジィの権力を使って、二年生攻撃魔法コースのアンケート調査を行った。
理由は、二年生になると授業に余裕が出てきて『冷却』を習っている生徒が増えるからだ。
アンケートの結果『冷却』を修得していたのは裕福な家の者だけだった。
言い換えると、凍えるような思いを経験した生徒は『冷却』が使えない……
これにより、マキナスジジィの仮説は、真実だと断定した。
過去にトラウマとまでいかなくても、辛い思いを経験すると攻撃魔法は非常に覚え難くなるって訳だ。
なんだ……? 何か、画期的なアイデアが喉まで出かかってるのに、出てこない……もやもやする。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は、攻撃魔法魔法コースで、一人だけポツンといる生徒に絡んで行った、別にカツアゲとかじゃないぞ。
ポツンと寂しそうにしているのが獣人だからって、餌付けしようだなんて思ってないからね。
「おらになにか用だか? 」
「ええ、一緒に勉強しようと思いまして……」
「あ? お前は馬鹿か? おらは獣人だぞ?」
オープンな校風を謳っておいて、ここでも差別があるのかつ……つまらん……
~~
実は、数十年前に差別撤廃の令が出てからは、差別は徐々に減っていき、意識しているのは、一部の凝り固まった貴族と、被害者の獣人くらいに減ってきている……もちろん地域や場所に左右されていて、完全に差別の無い地域や、差別の激しい地域もある。
~~
そう言えば、昔に全生物を一致団結させるために、僕たちを魔王と偽って脅かした事があったな……
しかし、どこの世界でも差別は無くならない……もう僕を見習いなさい。
………………あっ、でも巨乳のおねぇちゃんが、重そうなおっぱいを、テーブルにのせて、『ああ、喉渇いたぁ』と言われた時は、奢ってしまったよな……
僕も差別する側の人間だったかぁ……みんな、ごめんよぅ……
「お前は、キチガイか? なに、頭を抱えてフリフリしてるだ?」
ヤバイ……話を逸らそう。
「そう言えば、獣人の差別される原因って、男がカッコ良く、女がカワイイからなんですって。知ってました?」
「はっ? お前、それほんとか? そうか……そうだったか……おらはイケメンだったか……」
あっ、ちなみにあなたは違いますからね。
口には出さないけど……違いますからね!
「お前、名前はなんだだか? おらはソイホォン」
うわっっ、名前だけはカッケー!
後は、顔と言葉使いを直せば、おねぇちゃんの隣に座って、酒を飲んでるだけで稼げるよ?
「僕はランディです……よろしく」
「ランディって、あの回復魔法コースのランディか?」
「えっ、僕って有名人? 」
今度サインの練習でもしよう。
「いくら、あのランディでも、攻撃魔法は覚えられないだろ?……なんでこのクラスに来ただか?」
「はい、色々と攻撃魔法の仕組みを知りたくてね……」
発動と妨害の、タイミングを知りたいんだよ……
特に気になったのは、攻撃魔法の消去だ。
どうにかして、僕も魔法の消去が出来れば、色々便利になる。
しかし、攻撃魔法の教官の話だと、攻撃魔法の消去は攻撃魔法使いしか出来ないって話だ……
何とか出来ないものか……
とりあえず、ソイホォンとはこの日を境に仲良くなっていった。
そう、カロリーメ○トを使って。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ある日の晩御飯は、メインディッシュはじゃがいもを厚くスライスして、焼いて塩を振りかけた物だった。
同室のベルナントと食べていたら、ベルナントが幸せそうに食べながら、話しかけてきた。
「しかし、じゃがいもは美味いな、ランディさんもそう思うよね?」
「ああ、確かに万能食材の一つだけど……それほど?」
「スライスもいいけど、細かく砕いて小麦粉を混ぜて、焼いて塩で食べる……あれがいい……」
ああ、油を使わないハッシュポテトね……確かに美味かった。
「きっと、まだまだ素晴らしい、調理法が有るはずだよ……煮たり、茹でたり」
煮たり……茹で・た・り?
僕は先日、攻撃魔法コースで感じだモヤモヤが一気に晴れて行くのを感じた。
「これだ!!」
「ひいっ!? ランディさんごめんなさいっ!」
僕の勢いに、何も悪くないベルナントが謝っている……
「あっごめん、勢いがありすぎたか? ポテトだポテトなんだよっ サンキュウなベルナント!」
呆然としているベルナントを置いてきぼりにして、僕は一足早く部屋に戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
僕はさっそく頭の中で、必要な物をピックアップしていた。
先ずは、じゃがいもだな……とにかくたくさん要る。
次は実験台……攻撃魔法コースの生徒を四・五人ほど調達したい。
次に、 銅板と亜鉛に通電線が要るな……これも大量に使うだろう。
幸い、コイツらは『リカバー』で直した物品に含まれている。
じゃがいもは量を問わなければ、直ぐに手に入るだろう……
問題は生徒か……一人だけ心当たりが有るな……まずは彼に犠牲になって貰おう。
投資したカ○リーメイト分の価値を早くも回収です。
僕は、翌日から行動に移した。




