【29話】内政チートは不発になりそうです
週に二・三回ほど、ランディはドラグス先輩と模擬戦闘をしていた。
見返りとして、ランディは傭兵コースの生徒と一対五のハンデ戦をして、ついでにランディも鍛えていた。
瞬殺出来るなら、五人がかりでも問題のないランディだが、手加減しながら五人同時に相手をするのは、ランディでも大変そうだった。
ランディとドラグスの戦いは、訓練場で行われていた……なので、当然見ている者も少なからずいる。
その中で、遠目から見ていた二人の少年がいた。
その生徒とは、二年エリートコースのラディス・ノートンと一年騎士コースのカティス・ノートンの二人だ。
「ラディス兄、あいつすごいね……全く本気をだしてないよ……あんなすごいの二年にいた?」
「カティスも、あいつが本気じゃないのに気づいたか……でも、二年じゃない……初めて見る顔だ、一年だろ?」
カティスは兄の言葉に驚く。
「一年!? だって、あいつはたぶん僕より強いよ」
「カティスも、もうノートン家の十一歳になったんだ『私』と言うようにな」
カティスは騎士コースで、ギフトは持っていない。
それでも、周りからは天才と呼ばれるくらい、桁違いに強い。
ラディスが一年歳上で、ギフト『人神の加護』が無ければ、兄と慕われていなかった可能性が有るほど、カティスは才能に恵まれていた。
ラディスはカティスが自分より強いと言い切ったランディに興味を持った。
(たしか、ダナムの弟が一年にいたよな……頼んでみるか……)
そして、二人はランディの名前を知ることなく、訓練場を去っていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は、必須授業以外は殆ど、他のコースに出かけている。
本日は商人コースです。
ぼくは、ここで算数チートをしようと思ったんだけど、思ったよりこの学院の数学力は高かった。
どこのラノベだよ? 二桁の足し算引き算で、ちやほやされるって書いていたのは……
この一年で、簡単な四則演算、二年生で桁の多い四則演算に少数、分数を使うって聞いたぞ?
三年生にいたっては、円と面積、距離と液体の単位に道のり、計算、グラフまである。
もう、話が違うじゃんよ~
掛け算の九九でヒーローとか無理でした。
まあ、それでも一年生の中じゃ、ぶっちぎりのトップだけどね……元は大人だし……
ここで、僕は二人の生徒と仲良くなった。
名前は『メクルカ・シオン』『イルムナ・シオン』
そこそこの商家出身の双子だ。
今日も、彼らと昼飯を食べている。
「なぁ、ランディはいつも同じ物を食べてるな」
「そう言えば、そうだね。好きなのか? それ」
僕が食べているのは、第2レベル呪文『クリエイトフード』で召喚した食べ物、解りやすく説明すると、カロリ○メイトだ。
だって知らなかったんだもん……昼食だけは自腹だったなんて。
ロイエンはお金を持たせてくれませんでした。
パパのアホ、バカ、オタンコナス!
「ああ、僕の家は貴族だけど貧乏だからね……これしか無いんだ」
畜生! 早く金持ちになって金貨の上でゴロゴロ寝てやる!
僕は彼らを使って、内政チートの足掛かりとして、情報収集をしていた。
ひとつ目は『薄紙』『色紙』だ。
しかし、高級品ではあるが、ちゃんと存在していました。
ラノベと違うじゃん……ボツ。
ふたつ目は『ハチミツ』の量産。
しかし、西洋蜜蜂と違って、この世界の蜂は人工の巣には定着しない……したがって量産は不可能。
ラノベと違うじゃん……ボツ。
みっつ目は『ガラス』製品。
しかし、希少ではあるけど、しっかりとした生産体制が確立されていました。
誰よ? ビー玉で大金持ちになれたヤツって……
ラノベと違うじゃん……ボツ。
よっつ目は、『チョコ』を使用したスイーツ。
しかし、気候のせいなのか、はたまた存在していないのか、いくら聞いても調べても、『カカオ』の存在すら見つけられませんでした。
ラノベと違うじゃん……ボツ。
いつつ目は、『制服』の導入……って、この学院は既に制服でした。
ラノベと違うじゃん……ボツ。
むっつ目は『手押しポンプ』に『水車』だこれでウハウハ間違いなし。
しかし、これも既に開発済みで、とどめに風車まで有りました。
だれ? 異世界舐めていたヤツ……はい、僕でございます。
ラノベと違うじゃん……ボツ。
更に色々考えて双子に相談したが、殆どが既出のアイデアで、僕の知識は役立たずでした。
こんちくしょう!
世間は僕に厳しく出来ているようです。
しかも、僕の内政チートプランには無かった、カロリー○イトの方が、お小遣いを稼げているんです。
何故なら、毎日食べていたら、他の生徒たちも興味を持っていたようなので食べさせた。
すると、何人かの生徒がハマったらしい。
しかも、貧乏人の僕にタカるのは気が引けるらしく、いつのまにか一本、鉄貨一枚で取引されるようになってしまった。
僕のクリエイトフードは一回で四百本のカ○リーメイトを出現させる事が出来る。
屈強な冒険者の胃袋で、百人前の量である。
僕達は二本も食べれば、満足になる。
まあ、それほどでかいんだ。
貯まりすぎた鉄貨は、両替をして、銀貨が二枚と大量の鉄貨が僕の懐に有る。
僕のチートは小遣い稼ぎ程度で終わりそうです。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇学生寮◇
ある一室で、未来の商人、メクルカ・シオンとイルムナ・シオンが語り合っていた。
「なあ、メクル……ランディはスゲーとこの貴族なんじゃねぇか? 知識と教養が半端無い……」
「イルム、ランディは昼食も満足に買えない貧乏だって言ってたぞ? それに准男爵家だって話だ」
「ブラフだよ、ブラフ。あの食べ物だって、スゲー金がかかってそうだ……それを鉄貨一枚で売ってるんだ……あんなに旨い保存食は初めて食べた」
「イルム、それより紙の製法、ポンプの作り方、水車の基本構造を知っていたよ? 恐らく代々口伝で伝えられている部分まで、知っているみたいでした……ランディは貴族なんでしょうか? まるで伝説の鍛冶師の身内かと思うほどに……」
「それより、大手の商人が独占している『砂糖』『ハチミツ』の事まで、突っ込んで聞いてきたぜ……」
「そんなやつが、ただ僕らに近づいて来たと思うか?」
「ああ、考えられるのは一つ、僕らの勧誘だな……ランディの事だ……きっと私とイルムの将来性を見たんだろう」
彼らの実家は割りと規模の大きい商家で、幼少の頃より、商人になるために教育を受けていたのだった。
そして、この学院でさえも、彼らの学力が高いせいで、暇だと思われていたのだった。
そんな時、近くにいたランディが、
『つまらん……二年の商人コースに行くか』
と、呟いていたのが知り合うきっかけだった。
「なあ、今はまだ先の話だけど、考えて見ないか……」
「何を?」
「惚けなくていいよ。実家を継ぐか、ランディと一緒に行くかだよ……」
「イルム……お前……」
「だから、先の話だって……メクルだって、ランディと会ってからは楽しそうじゃんか……」
「うっ……まあ、否定はしないけどよ……」
「まあ、しばらくはランディと二年の商人コースで勉強しよう」
「ああ……そうだな……」
双子の兄弟の話は深夜まで続いた。
捕捉……この内政チートは、生産系の内政チート検索して、ランディによの中は甘くないよと学ぶ話です。
内政チートを作中に載せたラノベ作家を馬鹿にするものではありません。




