【22話】歓迎訓練
◇屋内訓練場◇
僕は、訓練場と思われる場所に連れて来られた。
見るとここでは、三十人近くの生徒が自己鍛練をしている……
僕たち一団を見ても、気にした様子は無い。
隅まで歩くと、僕を連行した一人が名前を聞いてきた。
「おい、お前の名前は?」
「ランディ・ダーナスです!」
滑舌を良くして、きっちり答えておいた……第一印象は大事だからね。
……でも、完全に手遅れな雰囲気だけど……
「よおぅし、ランディ。今回はお前のために1年生回復コース恒例の特別訓練を開始する……ありがたく思え」
僕を取り囲んでいる他の生徒がニヤニヤしてる……やな雰囲気。
「回復コースの訓練は特別で、毎週やってるからな……だけど回復魔法を覚えたら訓練は卒業だ、頑張るんだな」
うーん、苛めなのか応援してるのか、判断つかないんだけど……
「あのぅ、僕に拒否権は……」
すると、まわりが騒ぎ出した。
「有るわけ無いだろ!」
「こいつ、初回と2回目もサボったのに……」
「この新入生、生意気過ぎんぞ」
「なあ……オレ、知り合いの回復魔法使い連れて来るから、おもいっきりやっちまわないか?」
「大体、回復コースだけ学費免除なのが気に入らねぇ」
「オレら2年に、対して生意気だぞ!」
「よし、まずは俺が稽古をつけてやる」
そして布を軽く巻いた木刀が出て来た。
僕と対戦してくれそうな上級生達も木刀の先を布で被っている。
気を使ってるのかな?
やりづらいなぁ……完全に悪者なら僕も遠慮なく出来るのに……
「今日の訓練は長いからな……簡単に大怪我はさせられねぇんだ」
なるほど、ジックリいたぶる為の『布巻き』でしたか……騙された。
よくも、純真な僕の心を弄んだな!
ヤル気が出てきた! やってやる!!
すると、一人の上級生が僕の前に来た。
「オイ、次はオレだからな……やり過ぎるなよ」
「わかってるって……よし始め! ぶっ、ほがっ、ぶほっ」
…………ドサッ
僕が名付けた、先輩Aは3連撃で倒れた。
ああ、もう木刀は扱い難いなぁ……
「次、誰?」
と、睨んでみた。
「ちっ……油断しやがって、次はオレだっ。肉体強化『1』!」
あれっ? 肉体強化魔法って、無詠唱じゃなかったっけ?
~~~~
ランディはまだ知らないが、肉体強化魔法は慣れるまでは、声に出した方が発動が楽なのであった。
~~~~
僕は、先輩Bの力を見るため、攻撃を受ける事にした。
しかし、先輩Bの攻撃は、ただ力任せに武器を振り回しているだけに感じた。
はぁ……弱っ……これなら金属製の箸でも防げるよ……。
ランディが受けに転じた事で、上級生は自分が優勢だと思い、調子に乗った。
「ふははっ、どうだ、大人顔負けのこの威力は……生意気言った事を後悔するんだぶっ!? ゴバァ、ギャン! 」
…………ドチャ……
ふふ……相手の喋りかけに、ぶっ倒すのって楽しい。
「はい次……いち、にい、さん……あと七人か」
僕の言葉にムカついたのか、布を巻いていない木刀で二人の先輩、CとDが二人がかりで来た。
「これは、実践形式の訓練だからな2対1ってのも、実戦じゃあり得るからなっ」
「そう言うこった……複数の戦いかたも教えっ!?」
先輩Dが話終わらない内に、先輩Cは床と友達になってもらった。
「どこが、2対1かな?」
「なっ? えっ? なっ? ……ちくしょう! 肉体強化ばぶっ、おんぎゃ、みぎゃっ!」
……バタン……
先輩Dも床と仲良くしてる。
「実戦じゃ、肉体強化魔法の掛け声なんて、しないよ」
僕は、残りの五人の先輩を見た。
「ぐっ、おい全員で、やるぞ」
「よし! あいつらの仇だ」
「しねぇぇぇぇぇ!」
「おらぁぁぁぁぁ!」
「くたばれぇぇぇぇ!」
先輩達は品がないなぁ……もうやられキャラ確定じゃん……よしアレを使おう。
「第1レベル呪文……レベルサーチ」
僕は先輩達に聞こえないように、小声で呪文を唱える。
五人の先輩は全てクラス『1』駄目だ……ヤル気なくした。
もう一気にけりを付けよう。
「第3レベル呪文……ホールドパーソンLVⅠ」
五人の先輩を麻痺させた。
「「「「「……!?」」」」」
(か、身体が動かない!?)
(なんで? なんで?)
(動け、動けぇ!)
(はっ、ヤバイ)
(助けてぇ!)
僕は、先輩達の首をちょっと押さえて、意識を手放して貰った。
因みに『しね』と言った先輩Gには、蹴りを一回ぶち込んでおきましたよ。
さて、帰るかな……
と思っていたら、誰かを呼びに行った先輩が、誰かを連れて戻ってきた。
「ボクを呼んだってことは、やり過ぎる気だろ? 回復魔法を速く覚えて貰うためとは言え、やり過ぎるのは、ボクはん、た……い…………だ? けど……これは……なに?」
「えっ? なっ!? えっ?」
先輩Jが先輩AからIまで倒れているのを見て、驚いている。
「あっ先輩、訓練は終りました。もう帰っていいですよね?」
「えっ? あっ……あ、あぁ……ああ」
先輩Jは、もう言葉になってませんね……
「じゃ、失礼しましたぁ」
僕は、自分の教室をめざして歩いていると、後ろから大きな声がした。
「まって、キミ! 待ってよっ、キミッ!」
口調からすると、仕返しじゃないよな……
「はい、何でしょうか?」
振り返ると、ケモノのコスプレをしたナイスな娘が走って来た。
「はぁはぁ、さっきの、本当に君が倒したのかい? 凄いなあ……あっボクはレオパルダ、よろしくっ」
「…………」
コスプレじゃない? 本物? しかもボクっ娘!?
あぁ、神は居たんだ……秋葉原の神様が僕にプレゼントを下さいました。
僕は『カレアス』の信徒だけど、今は秋葉原の神様に感謝の祈りを捧げよう。
しかも、この校舎にいるのは、1年生か2年生……間違い無く2年生だろう……なら12歳?あのバストサイズや顔立ちは15歳でも充分通用するな……発育早えぇ……
なんで、胸の膨らみを吟味していたら、急にパルダ先輩が表情を暗くした。
「やっぱりキミもなんだね……」
ヤバイ……ガン見し過ぎたか……だってこの娘、将来有望なんだもん!
しかし、男ランディ素直に謝ります。
「ご、ゴメン! 素敵なおっぱいしてたから、舐めるように見ちゃいました」
「えっ!? そっち? や、やぁぁぁぁ!!」
レオパルダの、ビンタは空を切る……素晴らしき僕の反射神経……ここは、頬にもみじ形の痕を付けるのが、お約束だろ?
……
…………
どうやら、レオパルダ先輩は獣人を差別の目で見ていたと、勘違いしていたのだった。
なのでオッパイガン見事件は、不起訴になりました。
どうやら、獣人は貴族にとって差別対象になってるらしい……初めて聞いたよ。
もう、異世界で獣人差別なんてテンプレじゃん。
「ふ~ん、なんで差別なんか有るんだろうね……むしろパルダ先輩、ど真ん中のストライクなのに……」
「えっ? ストライクって何?」
パルダ先輩は『ストライク』の意味が解らないらしい……それに、今ボクは回想に入っているから、説明できない。
そう……僕には7つの萌え属性がある……それは『巨乳』『未亡人』『ナース』『魔女っ娘』『メガネっ娘』『ケモノ』『ボクっ娘』だ。
だがガルは、僕の純粋なエロ魂を『七つの大罪』とか言いやがった……
まあいい……それより、パルダ先輩は『ケモノ属性』と『ボクっ娘属性』さらに将来まで見据えると『巨乳属性』まで秘めている……是非ともお持ち帰り……じゃなくて、お尻愛……でなくって、お知り合いならなければ。
「…………ミ…………キミ…………キミ!」
はっしまった……僕どのくらい回想していました?
「な、何でしょうか、美しいお姉さん」
「えっ? ええっ!? ボクそんなこと言われたの初めてだよ? ってキミは、ボクの容姿に偏見とか無いの? 」
「いや、偏見どころか、好感度レッドゾーンなんですが」
「レッドゾーン? キミはよく解らない単語を使うね」
「じゃあ、さっきはボクの事、変な目でみていたんじゃなくて……」
「はい、エッチな目で見ていました」
パルダ先輩は複雑そうに笑いながら、
「キミって、子供なのにエッチだなぁ」
「子供って、そんなに変わらないじゃん……」
(外見はもう少しで大人だけどね……)
僕とパルダ先輩の会話は続く。
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