表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/195

【20話】暗殺事件、後編

 目の前に、強そうなオッサン騎士が、僕に剣先を向けていた。


「貴様! 何奴! 正体を見せろっ!」



 なんか、ムカッと来るな、このオッサン……


「お待ちなさいっ! 私達を助けた少年に、その行動は騎士道に反しますよ!」


「エリ、お嬢様……しかし、その外見にあの動き、間違いなく新種の魔物でしょう」


「魔物とは失礼ですね、このオッサンは……」

 僕も、魔物扱いされたから、オッサンと言い返しておいた。


 オッサンの顔が茹でダコになっていく。

「ぶ、無礼者! 我は、エリ……お嬢様の護衛隊長の『ボヤンキー』だっ!」

 と、言って剣を振りかざして、襲ってきた。


 見ると、剣の腹で僕を叩くつもりの様だ……殺す気が無いなら、僕も手加減してあげよう。


 オッサン騎士の装備は、要所を金属で固めてあるだけで、全身を被っている訳じゃない。

丸見えの脚部を『バシッ』と叩く事にした。


 ボギンッ!


「うがぁぁぁぁぁぁ!!」


 あっ、ゴメン……『オグルパワー』と『ストライキング』を掛けていたの忘れてた……骨、折れちゃったね……


 でも、無礼なオッサンより、倒れている虫の息な騎士達を助けないと……


 その後『グランヒーリング』を四回使って、四人を助けた。

 後は、死んでいたから、治せなかった。


 意識ある人は、僕のグランヒーリングに、かなり驚いていたが、お嬢様ってのが、いち早く立ち直った。


「危ないところを、助けて頂き、有り難うございます」

 お嬢さんの見た目は、十四歳から十六歳位だろうか、しっかりしているな……


「なりません! エ、お嬢様! 得体の知れぬ下賎の者に頭を下げるなど……ふごっ」


 お嬢様が手近な布で、(やかま)しいオッサンを黙らせた。

 因みにその布は……さっき、泥汚れを拭いていたやつじゃ……


 このお嬢様、面白い!


「御礼をしたいのですが、手持ちの貨幣ですと、はした金しか所持していませんので、出来れば私の屋敷に、来て頂けないでしょうか?」


 僕は、チョット考えてみた……どうせ遅刻確定なら、お姉さんから、たんまりと小遣いを貰ってから、学校に行くのも有りなんじゃ……


「お姉さんすみません、その屋敷にまで、どれくらい掛かるのでしょうか?」


 と、質問すると、布を吐き出したオッサンが、クワッ!と目を見開いて、力一杯怒鳴ってきた。


「このくそガキ! エリ、お嬢様に向かって『お姉さん』とは、無礼にも程があるわっ! それに得体の知れぬ物を、屋敷に招くなどモガモガ……」


 お姉さんは、更に汚れた布を、騒いでいるオッサンに詰め直した。


 このお姉さん、やるなぁ。


「私の屋敷には……一週間と半分くらい掛かりますわ」


 この世界の一週間は、十日だ。

 それなら、約十五日掛かるのか……さすがに、それだけ、ロスしたら退学になってしまうかも……


「あっ、そりゃ無理だわ……学院長に怒られちゃうよ……」


「キサマッ! エ、お嬢様の誘いを断るとは、何処までも無礼……モゴモゴ……」


「ボヤンキー、次に私の許可無く、その布を取ったら、解雇しますわね……」


 と、三度泥布を詰めている……ダメだ笑いが堪えられない。

 

「学院ってもしかして、あの『ウエストコート高等学院』の事ですか? そう……それなら、強いのも納得出来ます……」


 えっ!? 高等学院って、そんなに強いのがゴロゴロしてんの? 恐ぇぇ……なんて所だ……あっ返事をしなきゃ。


「はい、そこの生徒(予定)です。だから残念だけど、御礼は要りません」


 でもお姉さんは、くいさがる。

「ですが、恩人に何もしないなんて言う訳には……」


「う~ん……それなら、五年後の僕は、色々と商売を始めている予定なんです。そのお得意様になってくれませんか?」


「えっ? 五年後!? ……ふふっ、良いわよ。あなた名前は? 」


「僕の名前は、ランディだよ、じゃ、僕は急いでいるんで、よろしくねぇ」


「あっ、ランディ待って……私はエリザよ、よろしく……五年後の大商人さん」


 と言って、首飾りを僕は貰った。

「有り難う、エリザお姉さん」


 この僕の、馴れ馴れしい行動に、血の涙を流しそうな形相のオッサンを、ちらりと見てしまったが、見なかった事にしよう。



 この後、御者を見つけて、適当な説明をしてから、ウエストコート高等学院に向かった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「よろしいのですか? あの首飾りは……」


「いいのですよ、私の命よりは軽い物ですから…………」


「ですが……なっ!?」

 枝を杖の代わりに使い、何とか歩く護衛隊長のボヤンキーは、林を抜けて道に出た途端、驚く。


「ボヤンキー、どうしまし……えっ!?」

 エリザも外の様子を見て、驚いた。


 そこには、全滅していた筈の、付き人三人と騎士が一人座っていたからだ……


 付き人一人が残り三人を看病している様子を見ていたら、エリザ達に気づいた様だった。


「お嬢様!! 良かった……ご無事で……やっぱりあの子の言った通り……」


 エリザは、小走りで付き人に駆け寄った。

「カンヌ! 生きていたのですか? 良かった……でも、一体…………」


「十歳くらいの、男の子が助けてくれたんです。お嬢様も、助けたと言っていたので、待っていました」


「ランディが?」

 エリザは、驚く……この場を逃げる時には、動けるものなど居なかった筈だ。


「もしかして、ランディの他にも助けてくれた方が……」


「?……男の子一人でしたけど……」


 そんな事って……あり得るの?

 エリザは、付き人に一つ質問をした。


「カンヌ、あの子は、どうやって皆を助けたの?」


 カンヌは、エリザの迫力に怯えながら、話した。

「か、回復魔法を掛けてもらいました……私達全員死にかけだったそうです。それに騎士様を回復しているのを見ました。『グランヒーリング』を使っていました……」


 グランヒーリングですって!? 私も見ましたわ……恐らくですが、一人一人に『グランヒーリング』を二回づつ使用したのかも……


 でも、でも……すると『グランヒーリング』を十一回も使っていることに……そんな事って、あり得るの?


「まさか、ギフト持ちの中でも、滅多に出現しないあの……」


 エリザの台詞を遮るように、ボヤンキーが話す。

「あり得ません! あのガキの戦いぶりは、間違い無く『竜神の加護』です。同時に『魔神の加護』など、持っているはずが無いですぞ……それに、お嬢様はアレを想像しましたな……」



「しょうがないでしょ? 一流の回復魔法使いでも『グランヒーリング』四・五回が限度なのよ……魔力総量三倍の『魔神の加護』より、魔力総量五倍の『魔神の愛』を想像してしまいますわ。」


「それこそバカな話です……もし、そんなギフトを持っていたら、もっと名が知れている筈です……」


「なら、あの者たちを、どう説明するのです?」

 エリザだって信じがたい出来事なのだが、無傷の付き人の存在が、証明しているのだ。


「うっ……そうだ、偽装だ! 偽装に決まってる! 『グランヒーリング』と見せかけて、ヒーリングを連発したに違いない……それなら…………」


 エリザは、もうボヤンキーの話を聞いていなかった。


 あの子、……見た目は十歳くらいよね?

 でも、高等学院に在籍して、あの強さなら……一年ってことは無いわね……三年生ってところかしら……だとしたら十四歳?……そう、きっと童顔なのね。


 でも……何故そんな子供に、こんなにもドキドキするのかしら……


 エリザは、死を覚悟した時に、颯爽と現れて自分達を救った、ランディの姿を思い出す。


 ランディは、あの強さを持っていながら、商人になるつもりなの? ……ふふっ五年後か……でもね、五年も待つつもりなんて、無いわよ。

 ランディ……卒業と同時に、あなた自身を丸ごと買ってあげるわ。


 この私、エリザベート・フォン・ウエストコートがね。

これにて、幼年編終わりです。

閑話を一話上げてから、

学園編を……書きますので、更新がとまるでしょう……ほんとすいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ