【178話】戦後処理
遅れました
現世に戻った僕たちは、香織ちゃんや分身に、勝利を報告して、一番の大仕事をする。
当初、第10レベル呪文を念頭に入れてなかったから、別の作戦を用意していたけど、変更することにした。
こっちの方が楽しいからね。
「香織ちゃん、マーニャ案内してくれ」
「うんっ」
「うん!」
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行き着いた先は死体の安置所、この戦争で死んだナパやユタの民とベルデタルの戦士、キャンブルビクト侯爵から預かった傭兵たちだ。
香織ちゃんたちと合流したときに、依頼しておいたんだ。
「お兄ちゃん、じっくり復活させて別世界に送り込む予定だったんじゃないの?」
マーニャが急いでここに来たことに、疑問をぶつける。
「闇の力が満タンになったから、予定変更だ」
「あっ」
「お兄ちゃん悪い顔」
香織ちゃんもマーニャも僕が『新呪文』を使うことまでは解ったようだ。
じゃあやりますか。
「第10レベル呪文……レイズレイン」
僕の周囲に命の雨が降る。
この呪文はレイズデッドLVⅠとLVⅡの中間点くらいの蘇生能力がある。
生き返っても、直ぐには戦闘に復帰できないが、二晩休憩すれば、日常生活は余裕で出来る。
さあ、蘇れ! 命を懸けて戦った者たちよ。
「……う、うん? ここは?」
「確か、俺は死んだよな」
「うわっ、助けてくれっっあれ? あれっ?」
「て、敵はどこだ、寝てる場合じゃない!」
「落ち着け、ここは死後の世界に違いない。死んだ仲間がたくさん居るしな」
さて、ここからは分身の出番だ。
僕はマスクを被って、分身に任せよう。
「よくぞ、あの大軍に命を懸けて戦ってくれた」
「領主様」
「伯爵様……まさか伯爵様も死んでしまわれるとは……」
「申し訳ありません!」
「申し訳ありません!」
「申し訳ありません!」
一斉に土下座する蘇生者たち。
そう来たか。
「勝手に僕を殺すなぁ!!」
みんなに拳骨やビンタをお見舞いした僕は、生き返ってたことを説明した。
「戦死したお前たちは、僕の力の源である、本物の神の使徒が蘇らせた。さらにアカシア軍を追い払ってくれたのだ」
今度は僕に土下座をするみんな。
こんな雰囲気いやなんだよな。
ガルに代わってもらえばよかった。
「やめろお前ら、この方は敬われるのが苦手なんだ、褒められるの好きだけどな」
さすが分身。
その通りでございます。
「土下座する元気があるなら、這ってでも宴会に参加しろ。なにせお前らは10倍以上の大軍を退けた英雄なんだからな」
分身は事細かに、戦争の勝利者は君たちだと説明していた。
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宴会がすでにはじまっている。
僕たちはスペシャルゲストとして、少し遅れて参加する予定だ。
そう、この死から復活した者共を従えて。
彼らも杖をつきながら、スタンバってる。
マスクから声が聞こえる。
『ランディさん、ランディさん、こちらキンジです。もう来ても良いっスよ』
僕が被ってるマスクは『グルトリアの面』と言って、同じ面を被ってる仲間と会話することができる、便利なマジックアイテムだ。
キンジからの合図で、宴会に乱入する。
しかし、見た目恐ろしいマスクと、復活した死者を見て、宴会が一旦中止になるほどのパニックが起きてしまった。
分身よ……ちゃんと説明はしたのかい?
……
…………
宴会は、明け方まで続いた。
僕たち4人は『神の使徒』どころか『神と同格』扱いまでされてしまった。
ちょっぴり迷惑だ。
いったい、僕たちが何をしたんだ。
仲間も分身と悪のりして、ゲームを始めるしね。
ゲームには賞品として、このような催し物が用意されていた。
『ヴェルカーズと一緒に森のモンスター食べ歩きツアー』
『アーサーと学ぶ王神流の極意』
『ガルと潜ろう、アンデッドの蔓延る素敵ダンジョン』
『アーサーと体験、毒虫と毒茸の食べ分け方』
『ガルと体験、谷底バンジージャンプ』
『ヴェルランデイヤと体験、瀕死から復活までのプロセス』
『ヴェルカーズと一緒に、空中飛行体現』
『ヴェルランデイヤの苺食べ比べツアー(注:胃袋を空にしてから、ご参加ください)』
……完全にふざけてるな。
宴会が終わってからの、催し物は物凄い悲鳴……じゃなくて好評だった筈だ。
そう言うことにしておこう。
それから十数日は忙しかった。
アカシア王国にこっそり偵察に行かせたり、今後のために有刺鉄線などの防御柵を直したりした。
そして、王都にも使者を送り、キャンブルビクト侯爵にはお礼の手紙と、金を握らせた傭兵を返却した。
残された僕の仕事は、ドリアさんを瀕死に追いやった貴族に報復するのと、今回の戦争で援軍が来なかった事を、ネチネチ聞き返す事だな。
そんなとき、分身ランディ・ライトグラムに、一通の書簡が届いた。
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『ライトグラム伯爵』
『貴殿の師匠を若干名保護している』
『至急、会談の席に付くように』
『ヒタドイタ・ウラタギラタ』
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