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【178話】戦後処理

遅れました

 現世に戻った僕たちは、香織ちゃんや分身(ぼく)に、勝利を報告して、一番の大仕事をする。


 当初、第10レベル呪文を念頭に入れてなかったから、別の作戦を用意していたけど、変更することにした。


 こっちの方が楽しいからね。


「香織ちゃん、マーニャ案内してくれ」


「うんっ」

「うん!」


 ◆

 ◆

 ◆



 行き着いた先は死体の安置所、この戦争で死んだナパやユタの民とベルデタルの戦士、キャンブルビクト侯爵から預かった傭兵たちだ。


 香織ちゃんたちと合流したときに、依頼しておいたんだ。


「お兄ちゃん、じっくり復活させて別世界に送り込む予定だったんじゃないの?」


 マーニャが急いでここに来たことに、疑問をぶつける。


「闇の力が満タンになったから、予定変更だ」


「あっ」

「お兄ちゃん悪い顔」


 香織ちゃんもマーニャも僕が『新呪文』を使うことまでは解ったようだ。


 じゃあやりますか。


「第10レベル呪文……レイズレイン」


 僕の周囲に命の雨が降る。


 この呪文はレイズデッドLVⅠとLVⅡの中間点くらいの蘇生能力がある。


 生き返っても、直ぐには戦闘に復帰できないが、二晩休憩すれば、日常生活は余裕で出来る。


 さあ、蘇れ! 命を懸けて戦った者たちよ。





「……う、うん? ここは?」

「確か、俺は死んだよな」

「うわっ、助けてくれっっあれ? あれっ?」

「て、敵はどこだ、寝てる場合じゃない!」

「落ち着け、ここは死後の世界に違いない。死んだ仲間がたくさん居るしな」



 さて、ここからは分身(ぼく)の出番だ。


 僕はマスクを被って、分身に任せよう。



「よくぞ、あの大軍に命を懸けて戦ってくれた」



「領主様」

「伯爵様……まさか伯爵様も死んでしまわれるとは……」

「申し訳ありません!」

「申し訳ありません!」

「申し訳ありません!」



 一斉に土下座する蘇生者たち。

 そう来たか。


「勝手に僕を殺すなぁ!!」



 みんなに拳骨やビンタをお見舞いした僕は、生き返ってたことを説明した。


「戦死したお前たちは、僕の力の源である、本物の神の使徒が蘇らせた。さらにアカシア軍を追い払ってくれたのだ」


 今度は僕に土下座をするみんな。


 こんな雰囲気いやなんだよな。

 ガルに代わってもらえばよかった。


「やめろお前ら、この方は敬われるのが苦手なんだ、褒められるの好きだけどな」


 さすが分身。

 その通りでございます。


「土下座する元気があるなら、這ってでも宴会に参加しろ。なにせお前らは10倍以上の大軍を退けた英雄なんだからな」




 分身は事細かに、戦争の勝利者は君たちだと説明していた。





 ◆

 ◆

 ◆



 宴会がすでにはじまっている。


 僕たちはスペシャルゲストとして、少し遅れて参加する予定だ。


 そう、この死から復活した者共を従えて。


 彼らも杖をつきながら、スタンバってる。




 マスクから声が聞こえる。


『ランディさん、ランディさん、こちらキンジです。もう来ても良いっスよ』


 僕が被ってるマスクは『グルトリアの面』と言って、同じ面を被ってる仲間と会話することができる、便利なマジックアイテムだ。


 キンジからの合図で、宴会に乱入する。


 しかし、見た目恐ろしいマスクと、復活した死者を見て、宴会が一旦中止になるほどのパニックが起きてしまった。


 分身よ……ちゃんと説明はしたのかい?




 ……

 …………


 宴会は、明け方まで続いた。


 僕たち4人は『神の使徒』どころか『神と同格』扱いまでされてしまった。


 ちょっぴり迷惑だ。

 いったい、僕たちが何をしたんだ。



 仲間も分身と悪のりして、ゲームを始めるしね。


 ゲームには賞品として、このような催し物が用意されていた。

『ヴェルカーズと一緒に森のモンスター食べ歩きツアー』

『アーサーと学ぶ王神流の極意』

『ガルと潜ろう、アンデッドの蔓延る素敵ダンジョン』

『アーサーと体験、毒虫と毒茸の食べ分け方』

『ガルと体験、谷底バンジージャンプ』

『ヴェルランデイヤと体験、瀕死から復活までのプロセス』

『ヴェルカーズと一緒に、空中飛行体現』

『ヴェルランデイヤの苺食べ比べツアー(注:胃袋を空にしてから、ご参加ください)』



 ……完全にふざけてるな。



 宴会が終わってからの、催し物は物凄い悲鳴……じゃなくて好評だった筈だ。


 そう言うことにしておこう。




 それから十数日は忙しかった。


 アカシア王国にこっそり偵察に行かせたり、今後のために有刺鉄線などの防御柵を直したりした。


 そして、王都にも使者を送り、キャンブルビクト侯爵にはお礼の手紙と、金を握らせた傭兵を返却した。


 残された僕の仕事は、ドリアさんを瀕死に追いやった貴族に報復するのと、今回の戦争で援軍が来なかった事を、ネチネチ聞き返す事だな。




 そんなとき、分身ランディ・ライトグラムに、一通の書簡が届いた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ライトグラム伯爵』

『貴殿の師匠を若干名保護している』

『至急、会談の席に付くように』

『ヒタドイタ・ウラタギラタ』

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