【177話】帰還
帰る方法を全く考えていなかったカーズを、扱き下ろしたあと。
しばらくの間、冥界は静寂に包まれた。
『ギャッギャッ、この空気耐えられん。だれか何か話せ』
「五月蝿い駄剣!」
神剣アマテラスとガルのコンビはやるな……空気を一変させやがった。
だけど、僕たちはカーズの思考を邪魔しないようにしていただけなんだが。
「2分半も思考したので、幾つかの脱出案は思い付きましたよ」
「さすが カーズ 言ってみろ」
流石だカーズ、先の『愚弟』は取り消そう。
「解っているのですが、確認させてもらいます。兄さんは第9レベル呪文『トラベル』を覚えてませんね?」
「勿論だカーズ。戦いの予感がしたから、戦闘系に呪文を全フリした」
「私もです。どちらかが『トラベル』を覚えていれば私の『ウィッシュ』で座標修正して元の世界に戻れるのですが」
となると、帰るまで最短6時間以上はかかるな。
「冥王も死んだから、モニターは消えちゃって、あっちがどうなったか確認もできません。なので6時間待つか、10分待つかの2択ですね」
『流石だなカーズ、もう帰る手段を考えたか。魂の相棒ガルよ、少しは見習え』
「サヨナラ」
『ああっ!? 待って、もう少しこの世界を堪能させ……』
神剣アマテラスは鞘に収められた。
「カーズ、出来れば早めに戻りたいな」
「やはり兄さん、そう言うと思ってました。アーサーこっちに……ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ」
カーズがないしょ話なんて、珍しい。
しかし、嫌な予感がするんですが。
「カーズ 天才 お前が No.1だ」
嬉しそうなアーサー、物凄く嫌な予感が止まらない。
「大丈夫です。こんな場合のアーサーは、絶対に暴走しません」
アーサーの右手が妖しく鈍く光る。
僕でも理解した。
僕に闇の力を吸収させて、限定的に僕の力を上昇させるつもりだ。
「待てカーズ、それは確証あるのか? 僕らの知らない種類の冥界だぞ!」
「兄さんの呪文を、信じてください。それに私もやりましたが『真魔神剣』2回で溜まりましたよ」
あれを2回も喰らうのか!?
回復呪文を間に挟めば、間違いなく死なないけど、恐いものは恐い。
「アーサー、体力はどうなんだ? 秘奥義の連発はさすがに無理だろ?」
アーサーも打ち止めだよね? ねっ?
「ランディ 心配ない 後4回 使える」
化け物め……
「諦めろ、ランディなら2回は余裕で耐えられる」
ガルぅ、いくら耐えられるからって、走ってくる電車の前で笑顔で立っている奴はいません!
心で解説をしている間に、アーサーがスタンバイオッケーになってました。
「王神流奥義、真魔神剣」
「うんぎゃあぁぁぁぁぁ…………」
こうして、闇の力をMaxまで溜めた僕は、限定的に第10レベル呪文を2つ覚えた。
「これで失敗したらお仕置きな、カーズ」
「大丈夫です。兄さんに復活させられない死者はいません。念のためガルにも頑張って貰いました」
僕の前にあるのは、溶けた岩石だ。
「俺様の目で確認した、冥王の消滅した付近の溶けた石ころを幾つか持ってきた」
「ふう……仕方ない、やってみるか。冥界の死は、完全なる消滅って言ってたのに。第10レベル呪文……レイズデッドLVⅣ」
溶けた岩石から少しだけ煙が出ると、その煙から冥王が復活した。
『ここは? たしか我は……ひっ!』
冥王が僕たちを見て、怯えるような仕草をする。
失礼な。
僕たちは、怒らせないかぎりは安全ですから。
いっそのこと4人揃って『安全地帯』と呼んで貰っても良いし。
「冥王エリュシオン、事情があって貴女を甦らせました」
事情とは、お家に早く帰りたいから。
『バカな、この生と死の狭間の世界で命を落とせば我であろうと、2度と復活できぬはず……』
うん、うん、言いたいこと解る。
僕も呪文が成功するとは、思ってなかったもん。
「そんな貴女の狭い常識は無視しまして、私たちに完全なる敗北を認めてもらいましょうか」
『ふむ、それで我だけを復活させて、現世に帰りたいと言うのか。言い換えれば我がいないと、現世に帰れないと言うことになるな』
おお、そう来たか。
でも、それ言っちゃうとカーズが喜びます。
あとは、アーサーもか。
「そうなんです、エリュシオン。私たちだけで元居た場所に戻るには、8時間くらい費やすので、手っ取り早く貴女を甦らせた次第です。もちろん8時間とは、アーサーがゆっくりと貴女を始末する時間も込みの計算です」
ようは、2時間かけて神様をいたぶろうってのか、我が弟ながら酷すぎる。
『くっ……たった数時間のためだけに、我を復活させたと言うのか? お主らの思考は、人の常識を逸脱しておる』
僕は、僕だけは常識人だよ?
「貴女と物事の常識を語るつもりはありません。エリュシオンに命ずることは2つ、私たちを元の世界に帰すこと、もうひとつはこれから行う商談に従うことです」
さすがカーズ、命ずるとしながらもアメを用意してくるとは。
『先の要求には応えよう。しかし後の商談とは何じゃ? 』
「今、向こうの世界にいる『ランディ・ライトグラム』とその家族に貴女の加護を与えて下さい。対価として、1年以内の私たちの退去と、貴女の真の名前を復活させましょう」
顔を上げてカーズを見つめる冥王。
よほど好条件みたいだ。
僕たちがよっぽど邪魔なんだろうか。
ちなみに僕らは、直に別世界へ『巻き添え召喚』されるだろうし、冥神の名前を復活なんて、カーズのウイッシュがあれば、造作もない。
『出来るのか? 出来るのならば、ぬしらの頼みに従ってやろう』
「では……冥王エリュシオンよ『ヴェルカーズ』が命ずる、真の名を取り戻せ!」
えっ?
こんだけ?
呪文使ってないよね?
「第6レベル呪文……トゥルーサイト。あっ本当に『冥神エリシュオン』になってるわ」
『判る、判るぞ。我は真の名を取り戻した』
「3人の神を直接殺したのは私ですから、簡単なことです」
うん、カンタンダッタネ……
こうして、喜ぶ冥神に現世に連れていってもらい、香織ちゃんと合流した。
因みに生き残った冥神の配下は、カーズのウイッシュで加護を剥奪させてから、お仕置きして棄てた。
生きていたのは、ガチムチ君だけだったしな。
さて、宴会の前に僕は大仕事をしなければいけない。
せっかく第10レベル呪文がもう1つ残っているのだから。
ここで、重大なお知らせがあります。
神罰転生も書きたいこと等を書ききってしまいました。
後は、後始末とエピローグだけになりますが、決まった案がありません。
ヒロイン候補も『レジーナ』『アリサ』『エルザ』の誰にするか決まっていません。
もし、ご希望があれば、そえる部分があるかもしれません。
ご意見ご要望があれば、お待ちしています。
因みに、先行で『アリサ』に1票入っております。
ではもう少しだけ、この作品にお付き合い下さい。




