【175話】全力
『注意書』
通常神々は一柱、二柱と数えますが、
人外四人衆は、敵に対しては神々であっても『柱』を使いません。
例
カーズ……一人、二人
ランディ……一体、二体
ガル……一匹、二匹
アーサー……一食、二食
では、本編をどうぞ。
分身たちの戦いぶりを見ていたんだけど、ついつい最後の決着がつくまで見いってしまった。
冥王がワナワナと震えてる。
面白れぇ。
『そんな、まさか……こんな事があり得るのか……』
そんなことを呟く冥王に、魔神が近寄る。
『案ずるなエリュシオン、ここにいる4人の罪人を始末した後、あの地区ごと焦土に変えれば良いだけだ』
4体の神が、此方を向き敵意を顕にする。
「偉大なる神々よ……戦いの前にひとつお詫びをさせて下さい」
カーズが軽く頭をさげる。
『なんだ? 今更詫びても貴様らの死は変わらぬぞ』
人神の言葉には反応しないで、カーズは話を続ける。
「先の戦いでは、事情があって全力を出せずに申し訳なく感じています。ですが今回は全力の『ヴェル・カーズ』を見せることが出来ますので……第10レベル呪文……泥人形……」
初っぱなから僕とカーズ、最強のオリジナル呪文が来た。
最初は……アーサーか。
「ゴールドオプティマイザー」
最強装備をしたアーサーの近くで、泥が盛り上がり、人型を形成する。
そして、泥人形はアーサーの姿を形作り、着色されて完成する。
見た目は、鎧を着たアーサーそっくりになる。
まあ、装備は見た目だけで能力まではコピー出来ない。
『なっ!? 』
『エリュシオン、案ずるでない。分体の方は脆弱で、使う魔法にだけ気を付ければよい』
ふっ、こいつら『泥人形』と『ドッペルゲンガー』を同列に視ている。
この油断でお前たち神々の勝率は、2%を切ることになるぞ?
「出よ神刀アマテラス」
『ギャーハッハッハッハッハァ!』
ガルも動いた。
僕も後れをとるわけには行かない。
「ブラックオプティマイザー! 第9レベル呪文……リバース……ネバーエンディングジョイ!!」
あることが切っ掛けで、更なる力を解放した僕は、『赤の装備』よりランクが上の『黒の装備』を身に纏う。
体を護る鎧はギャラクシーメイル。
銀河の力を内包した神秘の鎧。
単純な防御力ならば、アーサーの『絶対神の鎧』を凌駕する。
数々の攻撃を防ぐ盾はゾディアックシールド。
黄道十二星座の力を内包した伝説の盾。
盾の表と裏では見える世界が違い、盾を構えるだけで、最適な防御方法を知らせてくれる。
マントやリングの性能は『赤の装備』と同等で、手に持つ武器はゴッドメイス。
神を凌駕したと言われる大魔王を倒すため、神が材料となり、神が直接武器を造り、神が装備して直接戦ったと言われる、神話級の武器。
『フレイムフレイル』では、神々に届かなかったが、この『ゴッドメイス』ならば、どうかな?
さらに、第9レベル呪文で僕自身の力も上乗せする……1度限りの大技で。
ネバーエンディングジョイを唱えた瞬間、上空に巨大な水晶が出現する。
第9レベル呪文のネバーエンディングアンガーは、今まで受けた恨みや憎しみを力に変換して、パワーアップを成す呪文。
そのリバース呪文は、今まで感じた喜びや楽しかった思い出を力にする呪文だ。
本来の思いは分身に移したから、パワーアップは2割か3割程度だろう。
水晶が僕の思い出を映しだす。
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戦争前に、この世界での仲間が、みんな集まったこと。
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エスパルで、焼き芋の食べ比べをしたこと。
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仲間が、シュガーとソルティの下着をずり下ろしたこと。
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お笑い吸血鬼バハムアークと遊んだ日々。
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仲違いしていたユタの民が、1つになったこと。
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一時は殺そうと思っていたカツドンが、僕と一緒に辺境に着いてきたことや、元奴隷の子供たちに囲まれて慕われて、揉みくちゃになった時のこと。
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バカ王子と馬鹿をして遊んだ日々。
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アルカディア最大の式典パーティではっちゃけた時。
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ダナムとテスターが意外にも仲良くなったこと。
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ベルデタルの剣士団がかなり笑えたことや、剣聖のヘキサゴンと兄のペンタゴンが和解したこと。
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王宮騎士の団長とリッツ教官と僕で闘ったこと。
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ドリアさんと出会って食のバトルをしたこと。
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アルテシアンナの公爵、ドルデルガーさんと相方のトワイライムさんたちと暮らして、復興の名目で、沢山やらかしちゃった日々。
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ムアミレプ王国で、アンジェラ女王を助けて、と仲良くなったこと。
ネオハイムのお笑いプレイは素晴らしかった。
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やっと使えるようになったクリエイトフードフリーで、食べ物チートをやりまくったあの日々。
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王族特務隊と王宮騎士団と仲良くなったこと。
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ウエストコート高等学院で非公式の卒業をして、リッツ教官の初の本気バトルをしたこと。
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ウエストコート高等学院の八武祭で力を合わせて優勝したこと。
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高等学院で、僕と闘った教官たちが、凄く面白かったこと。
特にモーブ教官とザーコ教官。
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高等学院にレジーナとアリサが乱入したかのようにやって来たこと。
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高等学院に入学して調子にのり過ぎた日々。
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ダナムと喧嘩で勝って、いつのまにか仲間になったこと。
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高等学院に入る道中で、エリザお姉さんと出会ったこと。
特に護衛のボヤンキーに泥布を詰める姿は見事だった。
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ロイエンやセナリースと真面目に修行した日々。
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アリサに回復魔法を使うのがバレて、協力したあの日。
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ダナムとの喧嘩に負けた事が切っ掛けで、暗黒女神カレアスの声を聞き、クレリックに目覚めたあの日。
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マキナスジジィを使って回復魔法を覚えたこと。
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授乳時に舌技を披露しすぎて、レジーナとクラリスの人生を変えてしまったこと。
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その思い出が、巻き戻した映画のように写し出された。
『ギャハハハハハハハハッ、ランディ笑える、笑え過ぎんぞ、魂の相棒ガルよ負けるな!』
「プククッ、無理無理。最後の授乳事件は絶対に無理! ブハッ」
「ククッ、兄さんに失礼ですよガル……ププッ」
アマテラスもガルもカーズまで失礼なやつだ。
でもこの映像は、かなり恥ずかしいんだが。
神様たちも、状況を把握するためなのか黙って見ていた。
「これだけ 大量 思い 力 何れだけ 与える?」
訳すと、これだけの長い思い出が力になったら、どれ程の力が僕に加算されるのか計算してみろって話だ。
現に今の僕は今まで経験したことのない、力が沸き上がっていた。
これで2、3割なのか……
想像以上の力を得たせいか、僕に可視のオーラが吹き上がる。
解る、理解できる。
今なら……今の僕なら、アーサーと単独で渡り合えると。
でも、僕の相手は4体の神。
「人神、魔神、竜神よ、僕に思い出を与えた事を後悔するがいい!!」
神々との本当の戦いが始まった。
キンジ「次は神罰転生、最大最後のバトル……かもしれません。お楽しみにって、ランディさん第9レベル呪文に目覚めたんすね……もう神様より恐いんじゃないすか?」




