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【173話】分身

ランディ分身視点です。


 ここからは、もう1人の僕が話を始めよう。


 本体(ぼく)のクローンと言っても、僕は僕だ。


 しかし、この僕はレベル25のクレリックだから、恐ろしく弱い。

 でもこの世界で暮らすには、適切な強さだと思う。


 本体と違うのは、父さんと母さんを深く愛してることに気づいた事だ。


 もう1人の僕は、その感情を薄めたんだ。


 ピーチク騒ぐキンジをパンチで黙らせ、ナパの町に帰る。


 すぐに、みんなが本体(ぼく)を出迎えて、戦争の勝利を喜んでいた。


 レジーナが本体と僕を交互に見て、不思議そうな顔を浮かべている。


 恐らく、僕がランディだと判ったんだろう。

 フードで顔を隠すだけじゃだめだな、恐るべしレジーナの嗅覚。


 母さんの様子もおかしい。


 何かに気づいて、別れを恐れているような……

 さすがは母さん、どことなく僕の正体に気づいたのかも知れない。


 これ以上母さんの悲しい顔は見たくないから、他には見えないようにして、正体を明かすことにした。


 ローブのフード部分を、母さんにだけ見えるように外す。


「母さん、僕だよ僕」


「え? ええっ!? ランディ? あ、あっちのランディは?」


 本体と僕を、交互に見てる母さんの様子が面白い。


「あっちは、キチガイ剣士やドリアさんが喜ぶ化物の『ヴェル・ランデイヤ』僕は、父さん母さんをからかうのが大好きな『ランディ・ライトグラム』だよ」


 不思議なことに、母さんは『ヴェル・ランデイヤ』に聞き覚えがあるようなそぶりを見せたあと、僕に抱きつく。


 僕が本体の名前を口走った時は、記憶に残る限りでは、たった1度だけ。

 たしか、危篤の母さんを助けた時だったはずだ。



 ……まぁいっかぁ。


 すると、嫉妬の炎を燃やしながら父さんがやって来た。


「父さん、話があるんだ。ちょっとおいで、」


 レジーナとも目が合ったから、手招きして家に移動する。



 ……

 …………


「父さん、母さん、レジーナ、僕も……いや、僕がランディなんだ」


 ローブを脱いで、3人に説明する。


「なっ!? じゃあ、あれは誰なんだ?」


 ここで、ガルと相談した作戦を使う。


「分離したんだ。神と遜色のない力を使う『使徒ランディ』と、神の力がなくなった普通の青年『ランディ・ライトグラム』と」


「そんなバカな……いやしかし、それなら10歳も満たない子に負けたのもうなずける」


「では、お2人は同じお坊っちゃまと言うことですね。匂いが全く一緒なのも解りました」


 その後やって来たアリサにも、同じ説明をして家族揃って夜を明かした。


 朝、父さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。


「ランディ、今のお前は弱くなったって、認識でいいんだな?」


 父さんの意図は解らないが、何かしら企んでいるのは判る。


「はい、あっちと比べると、かなり弱いですね」


「弱いままじゃいかんな。よぉし、この俺が久しぶりに稽古をつけてやろう」


「懐かしいわね、昔を思い出すわ。ランディ、あなた頑張って」


 母さんも参加して、僕と父さんを応援する。


 さて、僕のこと舐めてる父さんに、レベル25の僕を見せて上げよう。



 こうして、父さんと道中で拾ったセナリースをボコボコに調理した。


「ど、何処が弱くなったんだ! 嘘つきっ」


「嘘つきは旦那もだろ!何が『弱くなった息子に仕返しをしよう』だよ。危なくボンに殺されるところだったぞ?」


 これでも、レベルは50%減なんだけど、技術的なものは20%減で、身体能力は5%減にとどまるのがあらためて解った。

 予想通りだった。



 ……

 …………


 それから、もう一度正体を隠して、本体と仲間たちの様子を窺っている。


 不穏な気配を複数感じるけど、近距離じゃないし、呪文を使っていないから、敵かどうかも正しく判別出来ない。


 本体やカーズが気にしていないから、僕もそのまま見守っている。



 本体とカーズ、アーサー、ガルが拳を合わせた瞬間、何かに吸い込まれるように渦を巻きながら、消えていった。


 香織ちゃんや、僕の仲間……ドリアさん等が驚いて慌て出す。



 ここで、やっと『不穏な気配』が『敵の気配』だと認識できて、その人物を探った。


「ふははははっ、冥王様の機嫌を損ねた者等は、たった今死んだ。後はその仲間たちを我々がじっくりといたぶり、捻り殺してくれよう」


 敵の数は3人、と1体なのか? 気配を感じないっていうか、昔戦った『テラストラム』って魔法攻撃も物理攻撃も無効にする面倒な兵器にそっくりじゃん。


 3人の内1人はヴァンパイアか、レスラーみたいな体格のやつと、気配だけで人が切れそうな剣士か……


「おい、こら! 使徒様たちをどこに隠した?」


 ベルデタルの剣士が、3人に向かって突っ掛かって来た。


「下がれ!!」


「神速剣奥義……」


 僕の声にベルデタルの剣士は、反応出来なかった。


 だが、助かった。

 ペンタゴンが僕の声に反応して、味方の剣士を引っ張ったからだ。


 下手をしたら一撃で殺られていたぞ。


 この剣士の強さは相当なものだと理解できる。


 僕の勘だと、まだペンタゴンの方が上だと思うが、冥王のギフト持ちだと、安心出来ない。


 ならばここは……


 僕はフードを外して、指揮をとる。


「心配するな、4人が固まっていればなんの心配もいらない。しかもカーズは()()()だぞ。ここは僕に任せろ!」


「ランディさぁん!やっぱり頼りになりすぎるっす。空気がガラリとかわったっすよ!」


 このまま、勝てる布陣で相手をしてやろう。


「王神流の剣士には、カーミラが相手をしてやれ」


「解ったのじゃ、主殿」



「吸血鬼には、ひなたんが処理してくれ」


「解ったぞぅ、ご褒美を期待していいかぁ?」



「ガチムチプロレスラーには、キンジ担当だ……逝ってこい」


「どっかで聞いたようなセリフキター!?打ち合わせもなしに、何でこんなことが出来るんすか! 油断を誘ってなお、1回死んじゃってるのに、今度は3回は死ぬっすよ?」


 ほう、キンジは死の恐怖を乗り越えたのか。

 カーズとガルも、いい仕事をする。



 みんなが、冥王を倒して戻ってくる前に、けりを付けちゃえ。



ランディの分身視点は次回で完了の予定です。

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