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【171話】神敵

 エスパルの領主なのに、軍を離れ単独行動をしてから丸一日が経過しちゃった。


 カミーラとひなたん、おまけにドリアさんがいるから、何とかなるだろうと、自分勝手な信頼をしてるけど、事後処理は深く考えない。


 面倒ごとは、全部丸投げで行こう。


 久しぶりにアーサーたちと歩いていると、身体がいつもより軽く感じる。


 その軽さを試すために、ひと暴れしたくなってくる。


「ランディ、神速は覚えたな? どのくらいだ? 」


 ガルが質問してくる。

 僕の闘気の流れを見て確信にしたのだろう。


 ガルとアーサーは見えないはずの闘気が見える。


「多分カーズと同程度だと思う。それにすこし前までは、代償として魔力を使っていたからな。それより、僕も王神流の秘奥義が使えるようになった」


「鬼人剣 鬼人剣 返した 俺 楽しい」


「アーサーさんのモンスターパワーの鬼人剣を、ランディさんが同じ技で防いだんすね。ランディさんも化物だ」


 キンジよあまり、触れてくれるな。

 アーサーがまた、発情したらどうするんだ。


「先ずは適当に報告したあとは、1回寝たいな。ガルもいることだし、カーズとアーサーも休息しよう」


「おう、任せろ」


 他人が近くに居ると、眠ることが出来ない体質の僕とカーズだけど、ガルやアーサーが入れば、たとえ敵陣の中でも眠ることが出来るんだ。


 ガルとアーサーは睡眠をほとんどは必要としないが、アーサーは呪文の再取得に6時間の睡眠をとらなければならない。


 よって、4人で行動するときは大体ガルが寝ずの見張りをする。


「俺 呪文 未使用 休息 不要」


 じゃあ僕とカーズだけ休めばいっかぁ。


 だけどロイエンとクラリスに、何て言い訳しようかな? やっぱり同士と相談した作戦を使うしかないかな。



「ランディ、このまま歩くと2分で誰かと遭遇する。見た感じ仲間だろうな」


 ガルが遠くにいる誰かを見つけた。

 そして、言った通り2分後に僕らを見つけてくれた。


「領主様!? 領主様だ!! 領主様のお仲間もいらっしゃる」


「本当だ、あの大軍を退けて、戻っていらした!」



 ◆

 ◆

 ◆



 それからは、町あげてのお祭り騒ぎになってしまった。


 アーサーたちは、使徒様と呼ばれ受け入れられた。


 人々の波が襲ってくる。


 早く、香織ちゃんと合流したいのに、なかなか前に進めない。


「お兄ちゃん!!」


 そう思っていたら、マーニャがやって来て抱きついてきた。


「マーニャ、久しぶりだな。()()は済んでいるか?」


「ぶうっ、久しぶりの再会なのにっ。ちゃんと終わってるから、後はお兄ちゃん次第だよ」


 さすがのマーニャ、久しぶりなのに言いたいことを理解している。



 続いて、香織ちゃん、ドリアさん、カミーラ、ひなたん、リリスたん、ロイエン、クラリスと会った。


 みんな、僕の帰りを温かく迎えてくれた。

 だけど、クラリスの様子がおかしい。


 そう、まるでこれから別れるのを知っているかの様だ。


「主殿!? こ、これは」

「ランディ、まさか、いたずらをするのかぁ」


 鼻の利くカミーラ、ひなたんが僕たちの違和感にいち早く気付いた。


 そう、今の僕たちは6人組だからだ。


 僕に、カーズ、アーサー、ガルにキンジと、そして後もう1人。


 ローブを深く被って、顔や体つきの判別が出来ない者が1人いる。


 さっきから居るレジーナも僕とローブの男を見て混乱している。



 男を見てると、彼はある行動にでた。

 そう、クラリスの悲しみに暮れる姿を見て動いた。


 そっとクラリスにだけ見えるように、フードを外して見せる。

 一言二言会話すると、クラリスがフードをかぶり直した男を抱きしめる。


 それに気付いたロイエンは、殺気を振り撒きながらクラリスと男に近づく。


 彼はそんなロイエンを取っ捕まえ、僕の屋敷に消えていく。


 僕は、レジーナに追いかけろとジェスチャーをしてから、香織ちゃんを連行して、休憩しに行く。


「ガル、カーズ、後は頼んだ」



「ランディ、他の女たちに言い訳は?」

「任せた」


「兄さん、下級神を倒すより面倒なんですが?」

「信じてる」


 その後、久しぶりの、本当に久しぶりの香織ちゃんを堪能した。



 ◆

 ◆

 ◆


 翌日、マーニャに怒られ、リリスたんに拗ねられ、カミーラに血を要求され、ひなたんに血肉をねだられて、大変だった。


 若干、嫌な気配がするが、カーズとのアイコンタクトの結果、全く無視していいと判断した。



 半日遅れたけど、戦争の勝利宣言をしてから、仲間の紹介をする。


 その後、町全体で宴会を開催するので、今日から明日の昼までを準備期間にして、全員働かせた。


 ユタの町にいる、ダナムとテスター、戦えなくて避難していた民たちも、全て呼びつける。


 そして今、一段落ついたので、改めて仲間に礼を言う。


「カーズ、ガル、アーサー、みんな、おまけにキンジ。みんな、ありがとう」


 僕は、拳を斜め上につき出す。


 僕の拳に合わせるように、カーズが拳をぶつけてくる。


 ガルも『悪くねぇ』と言って僕とカーズの合わせた拳に、拳を合わせる。


「俺 3ヶ月 ぶり ランディ 約 17年 ぶり」


 最後にアーサーが拳を合わせた瞬間、魂に響くような声が聞こえた。


『この時を待っていた』


 その瞬間、周囲の時間が留まり、景色が色褪せる。


 色褪せた世界が大きく歪んで、一枚の巨大なモニターになったように空中に浮かんだ。


 辺り一面が、モニターのようになって写し出されると、この場所は『終わりを迎えた世界』がピッタリと当てはまる景色に変化していた。

 僕流の知識で言うなら、クレーターのない月面って感じだ。


「これは……なんだ? ここは……」


 僕の言葉に答えるように『圧』のかかった声が響いた。

『ここは我が管理する冥界ぞ。罪深き者共よ』



「冥王 エリュシオン」


 アーサーの喜ぶ姿に、三神との戦い以来、最大の戦いになる確信をした。



キンジ「ぬわぁぁぁぁぁ、カーズさんたちが急に消えたっす。大事件っすよ!?」

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