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【160話】人外四人衆VS三神

冒頭、ランディが見た夢の話です。

 これは……夢を見ているのか……


 僕は夢を見ているのを、直感で理解した。

 転生前の三神との戦いの夢だった。


 あの戦いは、不味かった。


 何せ、僕とカーズが融合してから、時が経過していないため、弱体化中だったんだ。


 カーズは第9レベル呪文まで、僕に至っては第8レベル呪文までしか使えず、最強装備も取り出せない状況だったんだ。




 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



 三神のうち一柱が、ランディ達に死の宣告をする。

「貴様らは既に死んだ人間を何体も蘇生するという大罪を犯した……我々の怒りに触れたことを、後悔しながら、滅び()くがいい……我、人神アレクトーの名において命ずる……ひれ伏せ!」


「「「「断る!!」」」」

 ランディ、カーズ、ガル、アーサーが言い返した瞬間、神の術が失敗した。

 その反動で神が地に崩れ落ちる。


 キンジ、香織、リリス、マーニャは地にひれ伏し、ひなたとカミーラは片膝を付いたが、ランディ含めた人外四人衆は、神命を弾き動いた。


「今です、第8レベル呪文……プリズムティックウォール」

 カーズの呪文により、人神アレクトーの周囲に七色の障壁が覆う。


「ゴールドオプティマイザー!」

 アーサーは瞬時に黄金の鎧と盾を装備した。


「レッドオプティマイザー!」

 ランディは瞬時に赤色の装備を身に纏った。


()でよ神刀アマテラス!」

『ギャーハッハッハッ! 俺様満を持して参上……今回は特別だ、魂の相棒ガルよ、我に血を3㏄献上せよ』


 ガルが神刀アマテラスに血を与えると、アマテラスは眩く光り輝きだす。

 その光りは三神にも匹敵する存在感を放つ。



 ランディは呪文を唱えた。

「第7レベル呪文……エアリアルサーバント」

 ランディの隣に術者そっくりの精霊が出現した。


 竜神バファイムと魔神エルドラドは、驚きはしたが、只それだけだった。


 どんなに足掻こうが、我々神の足元にも及ぶ筈がない……そう思ったのだ。


 竜神が淡々と呟く。

「エルドラドよ元凶の断罪を……我はその他大勢を無に帰す」


「理解した……アレクトーが何と言うか……」



 その瞬間、ものすごい速度でランディに迫り、腕を振り下ろした。


 ランディは腕で攻撃を受け止めたが、腕その物が消滅した後、全て消えてしまった。

「なんと脆い……むっ? まさか……」


「せぇかぁい……僕とエアリアルは瞬時に交代出来るんだ。しかしエアリアルを一撃ってチート過ぎるな」


 ランディのメイスが魔神に炸裂する。

 しかしメイスは魔神の数センチ手前で弾かれる。

「神さんの防御反則。フレイムフレイルでノーダメージとか無いわぁ。第4レベル呪文……リバース……クリティカルダメージ」


 ランディの呪文も魔神には届かない。

「我は神……人間の攻撃など、届くはずも無い……消えよ」


 魔神が再度ランディに攻撃しようとしたその時、魔神の体に2つの武器が刺さり、ダメージを与えた。


「なん……だと!?」

 そこに『神殺のダガー』を持ったカーズと、『神刀アマテラス』を持ったガルがいた。

『ぎゃっぎゃっぎゃ……油断し過ぎだぜ同胞よ』


 魔神は、自分を傷つけた武器にも驚いたが、なぜその他大勢を任せたはずの竜神が何をしていたのか、この場を離脱しながら確認した。


 竜神は黄金の戦士アーサーと互角の戦いをしていた。


「この力……貴様……何者だ?」


「俺は神人アーサー、人間のまま神々と同じ界域に達した、八百万の神々の敵……怒らないのは、カレアスぐらいだっ! 」


『ギャーハッハッ、アーサーが饒舌になってやがる。本気か、本気だなアーサー! 楽しい!!』

 本気を出すと話し方が、普通に戻るアーサーを神刀アマテラスが楽しげに輝きを増す。



 アーサーと竜神の戦いは互角だったが、アーサーが時おり放つ『秘奥技』を繰り出す時は、アーサーが優勢に戦いを進めていた。


「ぐぅ……人間相手にこれを使うとは……」

 竜神は『ドラゴンブレス』を使った。


 この攻撃で、人間は苦しむ間もなく消滅するはずだった。


「王神流秘奥技、真魔神剣」

 ドラコンブレスはかき消され、『真魔神剣』の余波を竜神は受けた。

「ゴォァァァァ……ば、ばかな……我が圧されている?」


「真魔神剣は連発出来ないんだな、お前が優勢だな」



 魔神は竜神とアーサーの戦いに、一瞬気を取られた。


「第7レベル呪文……ドラゴニックサンダー!」


 カーズの第7レベル呪文は、神の纏う防御膜を貫通した。


「何故、我の身体に損傷を与えられる?」

 魔神はさらに遠くに距離をおいた。


『あっコイツ馬鹿だ……ギャーハッハッハッ』


 距離おいたため、カーズに大呪文を使わせてしまう。

「第9レベル呪文……メテオスォーム」

 魔神の周囲に8つの隕石が降ってきた、


「こ、これは……」


 その直後、9つ目の隕石が高速で落下して魔神に衝突する。

 数瞬遅れて、残り8つの隕石が同時に爆発した。


 爆発の中から傷1つない魔神が、急いでカーズに向かって行った。


「その力……人間に在ってならぬ!」

 魔神は傷こそないが、人間で言う体力である『神力』を少なからず失っていた。



『魂の相棒ガルよ、同胞が物凄い勢いで【プリズムティックウォール】を侵食してるぞ……もうじき破られる』

 人神を覆っていた7色の障壁は、2色にまで減っていた。


「あいよ、俺様あっちに行くわ」

 人神に向かって移動するガル。



 魔神とカーズは攻撃と防御を6回ほど繰り返したが、7回目でカーズの腕がもがれた。


「第5レベル呪文……ドッペルゲンガー」

「第7レベル呪文……ドッペルゲンガー」

 ランディは第5レベル呪文を、カーズは第7レベル呪文の分身の術を使った。

 同じ名前の呪文だが、効果は別物だ。





 カーズの前と横に、カーズの分身体が出現した。

 名前が同じこの呪文でも、相違点がある。


 マジックユーザー呪文のドッペルゲンガーは、なんの代償も無しに分身体を作るが、その力は半分程度で一定の時間が過ぎると、制御が解け、自分と同じ姿をした者を殺そうとする。


 一方、クレリック呪文のドッペルゲンガーは、肉体の一部を触媒としなければならず、腕一本で約五割近い力を持った分身体を作り出す。

 しかし、自分と同じ姿をした者に対しても、敵対せずに同調する。

 但し、一定時間を過ぎると自然に消滅してしまう。


 分身Aが呪文を唱える。

「第7レベル呪文……ドラゴニックブリザード」


 魔神の驚異的な反射能力で身を翻し、カーズ分身Aの攻撃呪文を2割のダメージを受けるだけに止めた。


 カーズ分身Bがタイミングを見計らって呪文を唱えた。

「第8レベル呪文……プリズムティックウォール」


 ドラゴニックブリザードを避けるのに力を使った魔神は、見事にプリズムティックウォールの障壁に囚われてしまう。

「しまった……赦さん……赦さんぞ……」


「空き時間確保、第5レベル呪文……シリアスリジェネレイト。第3レベル呪文……シリアスヒール」


 ランディは、カーズの腕を再生し、HPの回復をさせた。



 またその頃、プリズムティックウォールから脱出した人神アレクトーとガルが戦闘を始めていた。


「手順を踏まずにアレを破るなんて、非常識にも程がありますね……」

 カーズの言葉に分身達が応える。


「力業で破ろうとすると、即死して異世界転送する筈なんだけどな……」

「私たち分身体は、もうアレは使えない……ここからが本当の戦いですね」


「それよりも、人神の動きが速い……スピードで神速使ったガルが負けてるって久しぶりに見た。カーズ、僕がガルに加勢しよう」


 ランディが加勢してからは、ガルは肉を切らせて、確実にダメージを与える戦い方に変えていった。



 速度で確実に上回る人神であっても、 圧倒的でなければ、技術や駆け引き、数の違いで簡単に速度差の有利は覆る。


 ランディが後方で補助呪文と回復呪文を使うようになってから、人神は劣勢を強いられていた。


 さらに、殆ど互角で戦っていたアーサーと竜神はカーズ本体の加勢で、完全に押し負けていた。



 カーズの分身である2人は、直に『プリズムティックウォール』の障壁を破るであろう魔神を待ち構えていた。



 そして、神々が苦戦をしているなか、ガルの神剣『アマテラス』が疑問を口にする。



『魂の相棒ガルよ、魔神が障壁の解除に手こずっている。人神より苦手とかあり得ねぇだろ。警戒しておけ』


「えぇぇ、それじゃランディがいても優勢に出来ないじゃん」


 と、愚痴をこぼすガル。


 そして、プリズムティックウォールが消滅した。


「今です。第9レベル呪文……メテオスォーム」

「今です。第9レベル呪文……メテオスォーム」


 カーズの分身2人が障壁から抜け出た魔神に、二重の魔流星(メテオ)攻撃を仕掛けた。


「ご、ごはぁぁぁぁぁぁ」



 魔流星の一つ一つの威力はカーズ本体より、劣るものの、合計では上回る威力を魔神は耐え抜いた。


 耐え抜いた魔神は、集めた神力を、棘の付いた巨大な槍に具現化して、高速回転をさせていた。


『ギャッ!? あれは不味い! 人間が耐えられるもんじゃねぇ。たまし……』


「遅い!」


 ガルに注意をしようとしたアマテラスより、魔神の攻撃が先に放たれた。


 魔神は、プリズムティックウォールの解除には全力を注がず、一撃必殺の攻撃をするために、神力の大半を使った。


 その攻撃力は凄まじく、カーズの分身2人を瞬く間に消滅させ、威力を保ったままランディに迫る。


「おらよっ、ガッ!!」


 瞬時にランディを庇ったガルは、アマテラスで弾こうとするが、弾ききれずに頭部が吹き飛んだ。


 魔神は目標である、ランディを討ち洩らしたが、それでも『ニヤリ』と口角を上げる。


 敵が1人減る事の意味が大きいからだ。


「第8レベル呪文……レイズデッドLVⅢ」


「ぶはぁ、ビックリしたぜ。ナイス、ランディ、王神流秘奥義、彗星剣。そらっ」


 人神はガルが死んだと思い込み、動きが止まったところを、大技を叩き込まれた。


 さらに、瞬時にボウガンを装備して、魔神に矢を放つ。


 ガルの持つボウガンと矢は『神剣』や『神殺剣』ほどの威力はないが、神にダメージを与えられる、伝説級のマジックアイテムだ。



 ガルを殺して、優勢になったはずの三神側は、一転神力のを大きく消耗する結果となった。


『神殺剣』を持つガルたちに意識をおいていた、人神は、ランディに狙いを定め直す。


 ただ、それはガルの攻撃を受けやすくなると言う事だ。


 ここぞとはかりに、ガルがダメージを与えまくる。


 そして、ランディに渾身の一撃が命中した。


 常人なら跡形も残らない威力なのだが、ランディの防御力とHPはアーサーを除けばダントツで人の域を超えている。


 ランディは吹き飛びながらも、行動にでる。


「第4レベル呪文……クリティカルヒール」


 そして吹き飛んだ先は、徐々にHPを失いつつあるアーサーの背中だった。


「第5レベル呪文……オールヒール」


 竜神が苦労して削ぎ落としたHPは、完全に回復してしまう。



 この瞬間、三神に焦りが見えた。


 神々の結界を簡単に突き破る武器を持つガル、カーズ、アーサー。


 神々の虚をつく動きを可能にするガル。


 神々が驚愕するほどの呪文を連発するカーズ。


 神々と単独で渡り合える、本物の人外アーサー。


 それらを傷つけ倒しても、瞬時に回復させるランディ。

 しかも、回復には生死を問わない。


 感情では、ランディを最優先で殺さなければならない事は理解している。


 しかし、神々の本能は『神殺剣』を持つカーズ、ガル、アーサーを滅するべきと訴える。


 その感情と本能のせめぎ合いのせいで、4人につけ込まれ、終には敗北を悟る。


 その時、三神は同調した。

 せめて、せめて自分たちが死んでしまう元凶の存在だけは、なんとか始末をと。


 持てる最後の力を使って、魔神、竜神、人神は、ランディを強制的に赤子に転生させた。


 そう、誰の助けも届かない所に。



 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



「ふわぁぁぁぁ、転生前の夢なんて初めて見たな」


 僕は、懐かしいと思いながらも、今日の呪文を取得する。


「あっ…………そうか、もうそんな時なのか」


 そう、僕は第8レベル呪文が使えるようになっていた。



 ◆

 ◇

 ◆



 ランディがこの夢を見てから、数日後のアルバトロス王国。


 五大王国の国王の次男及び、嫡男の次男は必ず神々からの贈り物(ギフト)『人神の愛』を授かる。


 アルバトロス王国の皇太子、マジノ・フォン・アルバトロスは、2人目の子を授かった。


 通常、産まれて直ぐには判別器は使わないのだが、王家だけは例外だった。


 この子は将来、王家に多大な貢献をするであろう。


 人神のギフトに、肉体強化魔法の合わせ技は反則と言っても良いほど、強力なものだ。


 この子はどんな魔法を備わっているのか、期待に膨らむ判別器の結果は…………


 ※ギフト 無し

 ※魔法の種別 回復系 攻撃系

 ※魔力総量 112




「ばばばばばばば、バカなっ! ギフトが、ギフトがないだと!?」


 この瞬間より、アルバトロス王国は揺れに揺れた。


 マジノ・フォン・アルバトロスの隠し子騒動から、皇太子の入れ替わりの疑いにまで発展したと言う。


 だが、ギフトを授からなかった真相は誰にも解らないどころか、今後王族の次男にギフトが発現しない事件が、ずっと続く事になった。


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