【159話】集結②
シリアスに話を持っていこうと思いましたが、うまく出来ませんでした。
やるべき事は、やっているつもりだ。
しかし、まともに戦える兵は、かき集めても1000人で、他の人は後方支援をやって貰う。
その1000人の殆どは、対獣用に頑張ってきた者ばかり。
戦争となると、半人前になると見ている。
そして、敵は推定3万。
しかも、大半が新型鎧を装備してやってくる。
戦えるイメージどころか、半日持てば御の字だろう。
「ああっ! こんちくしょう!!」
僕の様子を心配そうに見ていたロイエン、クラリス、レジーナ。
もう、家族には情けない姿を見せっぱなしだった。
「ぼっちゃま、今夜の食事は消化の良いものにしました」
病人かよ僕は。
……そうか、今の僕は病人に間違われるほど、酷いのか。
ロイエン、クラリス、レジーナ……せめて、おまえたちだけでも、逃げて欲しかった。
親孝行をするつもりが、死地に誘う事になるなんておかしな話だ。
だが、これより数日後、ある程度予想していたイベント後に、まったく予想もしなかった出来事がおきた。
予想したイベントとは、王都からやって来た20数名の黒尾騎士団。
若すぎる新米騎士団または、引退目前の老兵だった。
予想はしていたけど、猫の手も借りたい状況だ。
感謝してこき使おう。
「りょ、領主様……め、面会です」
「ん、どうした? そんなに動揺して」
「あの、そ、外に、外に」
何を言ってるか解らないけど、外に出れば解るんだな?
自室から腰を上げて、言われた場所に行く。
すると、そこには。
「ヌハァァッ!! お久しぶりですランディ殿」
ド、ドリアさん?
「ドリアさん、また抜け出してきたんですか? それに、いったいこれは」
「ヌホォォ! アカシア王国が、きな臭いとの話があったのです。ヌフゥ、実は我が国ターベールは、アルテシアンナ、ムアミレプと『投光器』を使った情報交換をしていました。そして今回、次期国王のドルデルガー殿が、王都に『マイス』を送る道中、護衛にエスパルで暫く休ませよとの助言を貰いましてな。ヌヒョォ、こうして、ランディ殿の元に馳せ参じた次第です。ヌホォ!」
ドリアさんの後ろには、ドロワット、ゴーシュを始め多数の兵士がいた。
「ヌハァ、アルテシアンナからは200人。ムアミレプからも200人、ターベールからは280人がランディ殿の下に来ました。ヌハァ、持参したマイス共々、お好きに使って下さい」
「ははっ、休憩に来たんだろ? ようこそ未来の地獄に、ほんとドリアさんたちはバカだなあ」
本当に馬鹿だ、これじゃ家族だけ逃がすなんて出来ないじゃないか。
ドリアさん率いる外国部隊を移動させていたら、別の集団がやって来た。
「使徒様ぁ!」
「ランディ様!!」
「……」
こ、こいつらはベルデタルの脳筋集団!?
しかも、200人以上いるぞ。
さらに半分近くは、見た事のある顔だった。
お前ら任期が終わって国に帰ったんだよな?
「お久しぶりです使徒ランディ様、このロシナンテと我が国の剣士200名、使徒ランディ様の麾下にお加え下さい」
「200名って言っても、もっといるよね?」
「もちろん、兵士だけでは色々と出来ないことがありますからな。家族たちが勝手に来てしまいました」
「勝手に言ってろ」
僕は『ポカッ』とロシナンテを殴る。
そして、抱きしめる。
「よく来てくれた」
この後、ベルデタルの剣士から歓声が鳴り響いた。
主な言葉は『ズルイぞ』だったけど。
「ラ、ランディ伯爵、外にまた……」
これ以上関わった国はないはずだと思いつつ、外に出ると、懐かしい顔があった。
「久しぶりだな小僧。いや、今はランディ・ライトグラム伯爵か。あのイタズラ小僧が、もう辺境を治める大貴族か」
「大貴族なんて、まだまだですよ、マキナス元教官。で、これは?」
マキナスジジィの後ろに控える沢山の人を見る。
その中で見知った顔の青年が、僕に向かって叫ぶ。
「ランディ伯爵! 学院時代の恩を返しに、電撃魔法使い……ランディ電撃隊224名、ここに参上しますた!」
いかん、目頭が熱くなる。
「くくっ、ソイフォン。かっこよく出て来たのに、最後に訛ってたら台無しじゃんか」
僕は、顔を下げる。
「ら、ランディさん、そげな震えて笑わなくても、いいでねぇか」
周りから大きな笑い声が響く。
別に笑って震えてるわけじゃないんだが、そう言うことにしておこう。
今の僕は正に『顔向け出来ない』くらいな顔をしてるはずだから。
……
…………
マキナスジジィ率いる電撃魔法隊を、空いている建物に押し込めて、面倒な事は執事のシープレスに任せる。
まったく、食糧を大量に集めておいて大正解だったな。
一段落したであろう、シープレスの表情は、思いきりやつれていた。
何故だ? たしかにいっぱい働かせたけど、ここまでにはならないだろう?
「ランディぼっちゃま。また、来客です……」
原因はこれか。
またしても外に出ると、砦の町『ルネ』にいる、お兄さん3人組だった。
問題はその後続が見えないくらいな列をなしていて、最後尾が見えない。
「ライトグラム伯爵、我々の本当の主からの書状です」
書状はキャンブルビクト侯爵の物だった。
失礼に当たるかも知れないが、その場で封を切って、書状を読む。
『ランディ・ダーナス……いやランディ・ライトグラム伯爵よ、返事が遅れたな。我が領地の正規兵は、タカカッタ高原の戦地へ、ほぼ強制的に行く事になっている。エスパルに送るのは、ワシの領地を守る最低限の小飼いの兵とガラの悪い傭兵だ。これらを集めるのに時を費やした。ここの兵900、掛け金としてお前に預ける。かの『八武祭』で、サウスコートに大金を賭けた試合は、お前の登場で水の泡。お前の戦いぶりに惚れ込んだワシは、翌年大金をウエストコートにつぎ込んだが、お前が退学していて、掛け金が水の泡。それ以来ずっとお前を探していたのだ。知っているぞ……単独で100人の盗賊を倒した話を。知っているぞ……ムアミレプで女王を助けて手籠めにした話を。知っているぞ……ターベールで第3王子に忠誠を誓わせた事を。知っているぞ……アルテシアンナで大活躍した数々の話を。知っているぞ……王宮騎士最高峰の2人を相手して、勝ち逃げした事を。知っているぞ……オステンバーグ公爵の嫡男を助けに行って、ベルデタルの全国民がお前に頭を下げた事を。直に見たぞ……2人の王子の式典を差し置いて、主役の様に目立っていたあのパーティを。ワシの命を賭けたギャンブル、見届けてやろうぞ』
この書状を読んだ後、3人組が補足してくれた。
僕が、高等学園を退学になってから、キャンブルビクト侯爵は、吟遊詩人を大量に雇い調べて、僕の動きを誇張して報告していたみたいだ。
だって、書状の『知っているぞ』は微妙に違うんだもの。
そして、キャンブルビクト侯爵から、精鋭900人、吟遊詩人100を借り受けた。
でも、吟遊詩人は返却しても、いいかな?
翌朝……
戦える人材が一気に2000人以上増えて、管理が大変だなぁって考えながら、朝食を食べる。
「おぼっちゃま、今朝はいい顔をしていますね。惚れなおしてしまいます」
「いやいや、お母さん。あれは、すごぉぉく悪巧みしている顔だよ?」
「あなた、私昨日までは早く元気なランディに戻って欲しいって思っていたんだけど……ランディは元気ないくらいが、良いのかもしれない」
「ランディ、お前は普通に出来ないのか? 普通に」
まだ何もやってませんが。
「だが、あのボンの顔をみていると、戦争になったとしても、絶望感がしねぇな」
セナリース、それでも9割方負ける戦いだからね。
ただ、兵力差10倍なら戦うことは出来る。
そして、時間を稼ぐ事もね。
時間を稼ぐことが出来れば、援軍が来てくれるまで持ちこたえるだけでいいし。
相手も、それを懸念して撤退してくれるかもしれない。
でも僕は、これから起こるであろう戦争を前に、1つ見落としていた事が、あったんだ。
ダイハピネス家の金蔓、オタッキ・ダイハピネスとヤオイ・ダイハピネスの2人が、エスパルに来ていたのを、1ヶ月以上も気づかなかった。
まあ、戦争には役に立たないしね。




