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【157話】偵察返し

すみません遅れました。

 恐らく1人を残して、アカシア王国と思われる密偵は殲滅させた。


 これで、来年起きるであろう戦争は、例年とは違った戦いになるのは間違いない。


 僕の予想だと、国境地帯の十数ヵ所に、陽動部隊を展開して、遊撃、挟撃や破壊工作など、様々な嫌がらせをすると見た。


 次の戦争での、アルカディア王国側は兵力5万弱、アカシア王国が例年通りだとしても、2倍に届かない。


 補給線を襲われたり、ピンポイントで遊撃、挟撃などされたら、大敗もあり得る。


 そして、アカシア兵の一部がエスパル経由で来るのは、密偵がいた事から確信できる。


 一応、有刺鉄線の攻略法は教えたから、その方法で攻略してくると信じたい。


 思いもよらない方法を使われるより、対処がしやすいからな。


 問題は、エスパルにやって来るアカシア兵が、どの程度の規模でやって来るかだ。


 50なのか、100なのか。

 軽装なのか、新型鎧で来るのか。


 新型鎧で来るのなら、どんな手段を用いて谷を渡るのか。



 僕は、2ヵ月ほど間を置いて、単身でアカシア王国側に乗り込むことにした。



 ◆

 ◇

 ◆



 そして、2ヶ月が経過してアカシア王国に潜入していた。



 3日ほど費やして見つけたのは、僕の足で半日の距離にアカシア王国軍と思われる施設だった。



 その施設は、殆ど空っぽの駐屯地と何かをしまっておく施設だ。


 僕は自分の考えの甘さに、衝撃を覚えた。


 駐屯地は少なくとも、3万人ほど待機が出来るほど広大だった。


 3万人全てが集結するとは限らないが、兵力100って事はないだろう。


 駐屯地は殆ど無人だが、何かの施設は人が多くいる。


 夜になるのを待って、施設に侵入する事にした。



 ……

 …………


 敵兵の目を掻い潜って、見つけたのは、1000着を超える新型鎧に剣。


 そしてその奥にある、巨大な建造物。


 ば、バカな……こんな物を造っていたなんて……

 確かに、あの軽量で丈夫な金属を使えば、可能だが、そんな発想をするとは。



 ま、不味い。


 アカシア王国の狙いは、挟撃でも遊撃でも破壊工作でもなかった。


 狙いは恐らく、兵力の空になった王都。


 だが、王都に着く前にエスパルは蹂躙される。



 せめて、1つか2つでも破壊をしないと。


 僕はその建造物を破壊しようと、少し近づいた。


 ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!


 なんだと!?

 警報? 僕が人の気配を察知出来ずに、警報を鳴らされただと!?


 辺りを再度確認すると、この世界では見たことがない物が、僕の直線上にあった。


 ま、まさか赤外線? くっ、遺跡のマジックアイテムか。


 警備兵の反応も早く、かなりの数の人の気配がしてきた。


「第3レベル呪文……プロテクションノーマルミサイル」


 この呪文を唱えた10秒後、短い形の矢が飛んできた。


 ボウガンだと!?


 しかも、狙いも正確だ。


 なるほど、特務隊が満身創痍で帰ってくる訳だ。


 僕も建造物の破壊はあきらめて、逃げ帰る。


 次々と増えていく追手。

 中には新型鎧を装備して馬に乗っているのもいる。


 火矢を使い、僕のいる場所を仲間にも特定させて、一部は先回り、他は退路を限定させるように移動する。


「矢が何本か当たっているのに、速度がおちねぇ」

「人神の加護、いや人神の愛をもっているギフト持ちかも知れない」

「生け捕りは諦めよう。確実に殺せ」


 追手の声も、よく聞こえる距離まで近づいてくる。


「第1レベル呪文……コーズフィアー」


 相手の馬に恐怖を与える、呪文を使い追手を撒く。


 この鬼ごっこは半日近く続いた。


 プロテクションノーマルミサイルも、24時間対応の強力な呪文をかけ直し、国境のある谷までもう少しのところまで来た。

 


 後は、助走をつけて向こう岸までジャンプするだけなのだが。


 僕はちょっとだけ考え事をしていた。



「恐らくこっちだ」

「逃がすなっ」

「投光器を持った、騎兵が直に来るぞ」


 もう近くまで来ているのか。


 では、先程考えた作戦で行くか。


 アカシア兵に気づかれるのを覚悟で、谷に向かって走る。


「いたぞ!」

「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール!」


 攻撃魔法使いもいたか。

 ちょっと熱いけど、都合がいい。


 僕は谷を飛び越える様に大きく飛んだ。


「なっ!?」

「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール!」

「ファイヤーボール!」


 3発のファイヤーボールの内、2発が僕に命中した。


 そして失速した僕は、向こう岸までたどり着かず、切り立った崖に吸い込まれるように、ぶつかって行った。



「やったか?」

「ああ、仮にファイヤーボールに耐えられても、転落死だな」

「念のため、投光器で崖を照らせ」


 ……

 …………


「見つからないな、間違いなく死んだか」

「だが、たった1人とはいえ、我々の包囲網を掻い潜りここまで来たんだ。これが噂に聞くアルカディア最強部隊、王族特務隊か」

「アルカディアも流石たが、密偵の話だと、本当に凄いのは十数人にとどまるらしい」

「そうだ、一般兵の錬度はアカシア王国が上なのだ。その証拠にあの男は自国に帰れず転落死だ」

「念のため、投光器を朝まで使い、確認せよ」

「はっ!」


 他にも色々兵士が話していたが、聞こえていたのは、この程度だった。


 僕は『ハイディングミネラル』で崖の中にダイブしたのだ。


 鉱物の中では、空中浮揚(レビテート)の感覚でしか移動出来ないから、ゆっくりと移動してナパの町に帰った。


 せっかくここまで町を発展させたのに、その全てが台無しになる。


 僕の帰る足どりは、思いの外、重かったのを感じた。





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