【155話】戦争の報告
エスパルの発展も順調に行くなか、ある人たちの別れの時が来た。
それは、ベルデタルの剣士たちだ。
任期の1年を経過し、本国へ戻る事になった。
ここからベルデタルまでは、遠い。
ゆっくりと進むなら一ヶ月半はかかるだろう。
さらに、雷撃のガルも王都に戻る。
ここは辺境、幹部が入り浸っていい場所じゃない。
こうして考えると、別れは寂しいものだな。
「い、嫌だ! 俺は使徒様と永遠に居たい」
「くっ、1年とはなんて短いのだ」
「ま、まだ、俺は奥義を修得していないんだ。もう、半年いさせてくれっ」
「使徒様との別れがこんなに辛いとは」
「この国に亡命するって、どうすればいいんだ?」
「主殿、徹夜で、仕事をこなして、また、帰ってくる」
色々突っ込みたいが、寂しさは忘れられた。
お前ら早く行け。
恐らく交替で来るベルデタルの剣士は、約3ヶ月後になるだろう。
話を聞くと、ガルサンダーの交替要員はマテラ・ラーンだった。
初回のアルテリオンといい、こうちょこちょこと幹部が来てて良いのだろうか。
……
…………
数日後
「師匠、ただいま到着いたしました」
「マテラ・ラーン、ご苦労様。まさか、こんなに早く来るとは思わなかったよ。雷撃との引き継ぎは問題なく終わった?」
ガルサンダーとマテラ・ラーンは砦の町で落ち合い、引き継ぎをしてからお互い移動したらしい。
「はい、引き継ぎは問題ありません。が、2つ問題が発生しました」
「ほう、どんな問題ですか?」
それでもマテラ・ラーンの表情は深刻そうじゃないから、安心して茶を啜る。
「交替のベルデタル聖国の剣士団が、あと10日ほどで、ナパの町に到着します」
「ぶっ!!」
ベルデタルの剣士が出発してから5日しか経ってないじゃん。
あいつら、移動差を考慮して早めに出国したのか。
移動期間を含めての任期1年じゃないのか?
ベルデタル聖国に、人間の常識は当てはめちゃいけない。
そう僕自身に言い聞かせて、もう1つの問題点を聞く。
「6年間の休戦協定が終わり、7年ぶりにアカシア王国と開戦しました」
そうか、ついに始まったか。
マテラ・ラーンから聞いた、戦争の話はこうだった。
~~~~~~
アルカディアとアカシアの戦争は例年通り、ノルデンバーグ地方のタタカッタ高原で行われた。
そこは見通しもよく、大軍を動員するのに適した場所なのが、理由となっている。
アルカディア側は約3万6千、アカシア側は約3万の兵力を用いて開戦となった。
例年ならば、多数の兵を細かく展開させた後、先端で衝突したら直ぐに兵を引いて、終わりとなる。
両軍とも、勝利を掲げて撤退する。
だが、今年はアカシア王国が密かに開発した、新型の鎧が一部の部隊に導入されていて、アルカディア王国も、新型の鎧に対策を練った王宮騎士団が多数動員されていた。
しかし、蓋を開けてみると、例年と同じ小競り合いで戦争は収束してしまう。
この戦の被害は、アカシア王国側が約100人、アルカディア王国側が約200人となった。
この規模の戦争にしては、被害がかなり少ないものとなっていたが、アルカディア軍は『新型の鎧』対策をした、王宮騎士団を動員したにもかかわらず、戦死した兵の差が2倍近くも開いてしまった。
アルカディア軍主幹部は戦慄を覚えた。
1年後はアカシア王国の軍主幹部が、再編されることは、密偵によりほぼ間違いない事になっている。
そんな年は例年よりも激しく戦って行く事は、アルカディア王国軍とアカシア王国軍にとって、当たり前の事になっていた。
その事もあって、アルカディア王国軍は、地方から、さらに兵をかき集め、兵力4万8千、全ての王宮騎士団を動員する作戦の立案を中央に申し立てた。
~~~~~~
そこまでが、マテラ・ラーンから聞いた話だった。
話を聞くと、強烈な違和感を覚える。
1つの1つの出来事に疑問点はない。
ただ、それらを組み合わせると、どうしても辻褄が合わない。
戦争の時期……収穫後なら民兵や農兵を頭数に加えるのも容易で、実害は少ない。
現に小競り合いしかしないのなら、被害は皆無だろう。
被害の少なさ……戦争とは言え、被害が少ない事は良いことだ。
アカシア王国は『戦って勝った』と戦果が欲しいのだから、小一時間戦って収束するのも、ありだろう。
戦争の場所……戦場は毎年同じ所で始まる。
両軍合わせると6万を超える兵力だ、場所は限られているし、命がけの体育祭だと思えば不思議はない。
問題は6年間の休戦協定だ。
何故、6年間も恒例行事を休んだのか。
新型の金属を武具に加工する研究に使われたのは、解る。
だからと言って、6年間も戦争を休むのは、おかしい。
小競り合いで終わらせるなら、戦争を休まずに、少しずつ新型の鎧を導入すればいい。
それに、僕なら一気に新型の鎧を導入し、一気に攻め立てるよ。
特務隊の活躍で開戦前に、新型鎧が露見したからか?
ちょっと隠し部屋が見つかったからと言って、6年間の努力をなかった事にするのだろうか。
僕だったら、もし僕がやるんだったら……
来年は大がかりな戦争になる。
それは、誰もが予想する。
そして、その対策も練られている。
やはり、相手の虚を突くのなら……
僕はマテラ・ラーンに、もう一度、アルカディアとアカシアの国境について質問した。
「師匠、万を超える大軍を容易に移動するには、タタカッタ高原以外はありませんでした。西方は険しい山脈があり、行軍には適しません。東方ならばあるにはあるのですが、ツクション王国とベルデタル聖国を経由しないと、我が国には入れません」
特務隊ほどの諜報能力でも、不可能なのか。
なら、僕の取り越し苦労だったのかもしれない。
僕は、2つの可能性を考えたが、マテラ・ラーンの言葉で、1つは保留にした。
何故『削除』でなく『保留』したのかは、違和感だった。
そう、噛みきれない一本の麺がずっと喉元につっかかる様な、不快感に近い違和感が消えなかったからだ。
僕は翌日から、ある行動を起こした。
実は、ブックマーク10000達成記念に向けてストックを作成中だったのですが、じわりじわりと減っていってる様な気がします。
(;・ω・)
ためたストックはどうすれば?( ;∀;)




