【153話】不死城③
不死城に幾つか存在するアトラクション『巨大滑り台』を降って、たどり着いたのは、地下10階層。
出現するモンスターはレイス。
このモンスターは。闇の長衣をまとった幽霊じみた姿をしている。
赤く光るその眼以外は、はっきりと見える特徴や手足はない。
レイスは邪悪と暗闇から生まれた非実体のモンスターで、命ある や光を嫌う習性がある。
ぼんやりと見える姿は、生前の姿を維持するが、実態はないので攻撃力や防御力に差はない。
ただ触れることがダメージとなる。
「ここは、何処なのだ?」
「解りません。ただ地下8階より、下に降りたのですから、最低でも地下9階になりますね」
(嘘です。地下10階です。ただ教えちゃうと、地下9階までしか行ったことがないって嘘がばれちゃうので)
「お前たちは地下9階まで、たどり着いたと聞いた。ここが地下9階かどうか判からないのか?」
「地下8階と9階のモンスターは、倒した事がないらしいのです。ただただ逃げるのに、必死だったとか」
(今日は嘘つきの日だな。そろそろ正直に喋ってしまいそうだから、質問はなしにしてくれませんか?)
警戒しながら、上に行ける階段を探している。
しかし、見つけたのは4体のレイス。
レイスが一度に4体なんて運が悪い。
「見たことがないモンスターですね。僕はリマシターさんを守るのに専念します」
レイスとの逃げながらの戦いが始まった。
しかし、実体のないレイス相手に、こっちが有効な手段は全くない。
戦士が1人死んだところで、無理矢理にでも逃げる事を選んだ。
実体のないことを逆手に取って、無理矢理すり抜けて逃げ出した。
先導者は僕じゃない事から、上に行く階段を見つけた時には、僕とリマシター、回復魔法使いと横取り戦士が2名となっていた。
「さあ、急いで逃げましょう」
……
…………
地下9階層
ここで、出現するのはマミー。
包帯をぐるぐるに巻いた怪力アンデッドモンスター。
まあ、アンデッドモンスターなんで、怯まず、恐れず、受けたダメージをものともしないで反撃してくるから、オーガなんかよりちょっとだけ手強く感じるだろう。
物理攻撃に耐性はあるが、ワイトやレイスのように無効化しないので、ある意味楽なのかも知れない。
ただ、実体があるせいで逃げるには難易度が上がるし、一撃の攻撃力も高い。
僕だって、呪文なし衣類なし武器なしで戦えって言われたら、嫌だなって思うくらい汚いし臭いし強い。
「リマシターさん、どうやらここが地下9階みたいです。ここのモンスターは実体がありますが、強いらしいです」
「そ、そうか。おいっ、後1つ階段を昇れば、仲間と合流が出来る。もうひとふん張りだ!」
だけど、移動中に2体のマミーと遭遇する。
「ぬおおおおっ肉体強化!!」
「ふおおおおっ肉体強化っ!」
余裕がないせいか、叫びながら肉体強化魔法を使う。
完全に押されているが、圧倒的ではない。
「エクスヒーリング」
ヒーリングでは、回復量も回復速度も間に合わないから、1つ上位の回復魔法を使って援護している。
ただその短い間は、2対1になるので、すぐにダメージを蓄積してしまう。
何とか勝って、ドロップしたアイテムは見た目が大きな汚れた布だった。
「な、何なんだこの遺跡は!? ゴミばかりじゃないかっ! そんなもののために命をかけて戦っていたのか!!」
まだ、叫ぶ力があるとはけっこう元気だな。
その命をかけて手に入れる素材を横取りしようとするのが悪いんじゃないか。
それに。この布は洗剤で洗えばきれいになるからね。
しかも、かなり丈夫で、他の効果もありそうなんだよな。
……
…………
それから、階段を見つけた時には、戦士が1人欠け、回復魔法使いは魔力の枯渇で気絶して、僕もドロップアイテムは捨てて、回復魔法使いを背負っている。
「よし、階段を見つけた。すぐに上がろう。んっ、どうした? おい、モロブ、おい!」
どうやら、力尽き、ここで死んだようだ。
「くっ、ライトグラム伯爵、行くぞ。案内を頼む」
地下8階からは、再びワイトが出現するが、蹴ったり、転ばしたりして人1人背負いながら逃げまくる。
一度、地上に帰ったら、ペンタゴンを連れて来よう。
ワイト相手に逃げてばかりだから、ストレスが溜まる。
リマシターがハァハァと息を弾ませながら、見つけたのは、佇むように立ち尽くす、横取り戦士たち。
「おおっ、あの化け物を倒したのか良くやったザリコ。……ザリコ?」
1体の横取り戦士が振り向くと、それはザリコの肉体を借りたワイトだった。
「オオオォォォォ」
「うピゃゃゃゃゃゃゃ!!」
なんて悲鳴を上げてるんだよ。
悲鳴と同時に残りのワイトも動き出した。
「ベコリ、ナムコ、ワルタ、ストレっ!」
ワイトを倒したと思っていた味方が、実はワイトになってましたなんて、予備知識がなかったら、大変だろうな。
しかし、この位置からリマシターを助けるのも大変だからね。
「リマシターさん、もう手遅れです。今回はこれで引き上げましょう」
「わ、わかった、ぐぎゃああああっ!!」
ワイトの精神攻撃を喰らったか。
喰らいすぎると、死んでワイトになっちゃうから、早く助けよう。
「おっちゃん、こっち!」
「ぐえっ、くるじい」
こっから先は本当に大変だった。
人間1人背負いつつ、リマシターをかばいながらアンデッドモンスターを弾く。
途中、3人のぐったりした戦士を見つけた。
恐らくワイトから逃げたが、途中で何名か命を落としたのだろう。
僕たちを見て、ほっとしたのもつかの間、生き残りの少なさに表情が悪くなる。
地下4階からは、逃げながら脚で蹴散らしたから、楽に帰れた。
……
…………
地上
荷物や戦利品は、運び屋に任せて、足早にナパの町の拠点に戻る。
「ライトグラム伯爵、ご苦労だった」
(くっ、こんな事になるなんて)
「はい、しかしこの程度で挫けてはいけません。リマシターさんの戦士を30名追加して、攻撃力魔法使いと回復魔法使いを10名ずつ動員しましょう。雷撃、リマシターさんの名前で追加要員の要請を依頼して」
「御意!」
「なっ!?」
いま、魔力の枯渇から目覚めたばかりの、副官が驚いてる。
どうしたのかな?
「しかし、失った人材は多い、先ずはその事後処理もしなければ」
(ライトグラム伯爵とはいったい……)
「何を言ってるんですか。あの戦士たちの頑張りを無にしないためにも、ここはイケイケで攻めましょう!」
「し、しかし」
(おや、ヒイールの様子が変だ。どうしたのだ?)
とりあえず、リマシターは疲れているようなので、一晩眠ってから援軍の要請をする事になった。
◇
◆
◇
「リマシター様、どうしますか? 直ぐに部隊を再編成するので?」
戦士の1人が聞いてきた。
リマシターは苦い顔をしたまま考え込む。
遺跡は開発管理局は、重要な場面では傭兵に頼らず、自分の部署だけで仕事を完遂させていたせいか、他に頼ることを恥としていた。
「それより、リマシター様。ライトグラム伯爵のとなりにいた『雷撃』と呼ばれていた人物、王族特務隊です。しかもあの男の別名は『審議官ガルサンダー』です」
回復魔法使いのヒイールは、特務隊の顔を知っていた様だ。
「なんだと!?」
(特務隊の審議官と言えば、幹部の人間じゃないか)
ここで、リマシターは思考をはり巡らす。
(王族特務隊は基本、王族の命でしか動かない。ならば、背後には王族が? いや、たとえ勅命であっても、幹部が張り付く事態など想像も出来ん。はっ! ま、まっ、まさか……ライトグラム伯爵が王族!? そんなばかな。しかし、あの審議官ガルサンダーの態度を見ると王族と納得してしまうな。まさか国王の隠し子か? そうなると、若干16歳にして伯爵位を持つのは辻褄が合う。そしてわが部署の戦士たちを替えのきく道具扱いするのも、王族なら当たり前の事だ。となると国王と誰の隠し子なんだ? これはスクープだ、私は物凄い情報を手に入れた。しかし、まてよ。私の頭が良いことを計算に入れての『審議管』なのか。特務隊、王族のためなら、誰でも殺すような奴等だ。しかも『審議官』相手に嘘や下手な駆け引きは、即、死に繋がる。ライトグラム伯爵が国王の隠し子だと言うことは私の記憶の奥底にとどめて置こう。そうだ、王族は決して敵にまわしてはいけない!)
こうして、ヨコド・リマシターの勝手な勘違いから、生きた遺跡『不死城』の採掘権はランディの物となり、遺跡開発管理局は砦の町から、遺跡のアイテムを一番に受けとる役におさまった。
さらに、アイテム使用の優先権はエルパル領内に限り、ランディが第一優先となることも了承させたのだった。
キンジ「いやぁ、ランディさんの『ムカつく人材、使い潰し作戦』失敗しちゃいましたねぇ。でも、結果オーライっすよ。ここで作者にかわって報告っす、実は2話と3話先はほぼ完成してるんすけど、次話はノータッチらしいっす。お馬鹿な応援( `・∀・´)ノ ヨロシクーっす」




