【151話】不死城①
今は亡き、お笑い吸血鬼の居城『不死城バハムアーク』の地下2階からは、アンデッドモンスターが出現する。
そして、モンスターを倒すと確実にアイテムを落とす。
最初のモンスターは、犬型のゾンビだ。
犬の利点である俊敏さや嗅覚が失われ、力場によるパワーアップもなくなっている。
1対1なら、ユタの戦士でも無傷で倒せる。
ちょうど、3体のゾンビドッグと遭遇した。
「こ、これが遺跡を護るガーディアンか」
「た、確かに事前に知らされていなければ驚くな」
ゾンビドッグの醜い姿に、顔をしかめる。
不死城のアンデッドモンスターは、倒してしまうと、死体と一緒に腐臭まで消えてしまうのが良いところだよな。
戦士のリーダー格が叫ぶ。
「恐れるな、ここの森猿でも倒せる小者だ。見た目に騙されずに冷静に対処しろ!」
森猿って誰のことだ?
お前、顔を覚えたからな。
1体のゾンビドッグに2人で対処して戦っている。
見ると、まあまあ鍛えている様だが、相手が弱すぎるから、戦士の強さがはっきりと判らない。
3体のゾンビドッグは、あっさりと倒され、アイテムをドロップする。
ドロップアイテムは、一握りの土に似た物体だ。
「ライトグラム伯爵、なんだこれは?」
「まあ土なんですが、農作物を育てるには向いてないですね。粘土だと思ってください」
実際、この土は粘着性のある耐火粘土だった。
僕も、気づかないで捨てる所だったし。
「こ、こんなのが遺跡のアイテムなのか!?」
「リマシターさん、もっと下層に降りれば、遺跡の恩恵を実感出来ます」
「よし、ザリコ、こいつらは無視して、早く下層に向かえ!」
「はっ!」
……
…………
地下3階。
ここは、ブロンズショートソードのみを装備したスケルトンが出現する。
戦士の何人かは、怯みはしたがザリコの檄で復活して、普段通りに戦ったみたいだ。
これで、普段通りなら弱いな。
ユタの民より気持ち強いくらいか?
何が王宮騎士に僅かに劣るだよ。
完全に負けてるじゃん。
スケルトンにも、完勝して調子に乗る戦士ども。
「なるほど、倒したらこのように素材を入手できるのか」
「はっ、これなら森猿でも頑張れば日銭を稼ぐ事もできるな」
「しかし、青銅短剣1本じゃ物足りないな」
「おいっ領主、まだまだ下に行けるんだろうな?」
あのう、僕って見た目は少年だけど、伯爵なんだけどな。
「ライトグラム伯爵、私に免じて気にしないでくれ。悪気はないんだ」
(ふっ、こんなガキにすら気を使える私、優秀過ぎるな)
「リマシターさんが言うなら……」
(悪気あるだろ、もっと下層に行ってやられるがいいさ)
……
…………
地下4階層
ここで出現するモンスターは、ゾンビだ。
ゾンビ程度では、まだまだ口の悪い戦士の驚異にならない。
動きの遅いゾンビを手数で圧倒して切り伏せる。
「この化け物は思ったより倒しにくい」
「刺し技は効果があまりないな。切り伏せる様に戦え」
「こいつも犬型以上に動きが遅い。邪魔な手を払いのけて、首を切断しよう」
思ったよりまともに戦うから、つまらないな。
倒したゾンビはレンガを1つづつ落とす。
「なんだ、これは?」
「これは、レンガですね」
「それは判ってる、遺跡のアイテムがこんな物なのか?」
「そうですね、もっと下層に行けば、面白いのがありますよ? 」
「ここの者等はどこまで降りたことかあるのだ!」
「地下9階までですが、ただ」
「ただ、なんだ? 」
「命懸けになりますよ?」
「それは、昨日聞いた。我々にはその覚悟がある」
そうですか、それなら安心です。
そうして、何体かのゾンビをレンガにしていった。
彼らはレンガには目もくれない。
このレンガは耐火レンガだって事は、既に判明してるので勿体ないと思ってしまう。
……
…………
地下5階層
ここは、スケルトンナイトの階層。
剣と盾を装備して、そこそこの戦闘能力を持つ。
リマシターの戦士たちも倒すのに時間をかけ始めた。
おかしいな、ユタの戦士たちより少し強いはずなのに、思ったよりスケルトンナイトに手こずっている。
なんとか4体のスケルトンナイトを倒した戦士たちは、ドロップしたアイテムを確認する。
ここのドロップ品は、鉄の剣と盾だ。
実は浄化前のスケルトンと同じ物をドロップする。
浄化前のスケルトンの方が、強かったんだけどね。
「なるほど、ここでたくさんガーディアンを倒せば、それなりの鉄は入手できるのか」
えっ、待って! こんな階層で満足しちゃうの!?
「しかし、我々にはもっと崇高な使命がある。鉱山より便利な程度では、遺跡とは言えない」
ですよねぇ、安心しました。
ここの戦闘で、1人だけ軽い怪我人が出た。
「すまん、油断した」
「初めての遺跡なんです。仕方ないですよヒーリング」
「ありがとう」
「いえ、この程度ならなん十回も使えますから」
どうやら、優秀な回復魔法使いらしい。
「ふっ、私が連れてきた回復魔法使いは、2人とも、魔神のギフト持ちなのだよ。2人の魔力総量は合わせると、700を超えるのだ。どうだ驚いたか?」
「…………はい、驚きました」
まさか、700程度で自慢しちゃうなんて。
正確な数値は分からないけど、僕の魔力総量は少なく見積もっても4500は超えているだろう。
アリサにしたって、1800近くあると言ってたし、2人合わせて700で自慢なんて本当に驚いた。
ここからは2つのグループに分かれる事になった。
アイテムを持ち帰るよう、上層まで運ぶグループと遺跡攻略グループに分かれた。
……
…………
地下6階層
動きが速く、格闘能力もある『ゾンビウォーリアー』だ。
戦士が14人がかりで、4体のゾンビウォーリアーと戦う。
人数差もあって、危なげない戦いをしているが、なかなか倒れないゾンビ相手に真面目に戦っている。
僕が1人で戦うより時間を費やしたけど無傷で倒すことが出来たようだ。
ドロップしたアイテムを見て、僕に質問をする。
「今度はゴミ屑じゃないか。遺跡だと言うのに、素晴らしいアイテムは手に入らんのか?」
この、ゴミ屑と呼ばれた物は燃焼材。
これを火の中に投入すると、高温を発する炎となる。
ここまで、説明すれば解ると思うが、ゾンビを一通り倒し続けると。
『耐火粘土』『耐火レンガ』『高温燃焼材』これにより、より頑丈な金属を加工することが出来る『炉』を作ることができるんだ。
そんな事にも気づかない皆さんは、愚痴をいいながら、ユタの戦士や僕を扱き下ろす。
それでも、持ち帰るようだから、アホ過ぎはしないか。
ゾンビウォーリアーを累計24体倒したあたりで、下に降りる階段までたどり着いた。
キンジ「こんにちはっす、スーパーマジックユーザーキンジっす。今回は、遺跡のアンデッドモンスターがドロップした粘土やレンガが何故、重要視されなかったんすかねぇ、遺跡開発管理局の人って、バカばっかりっすか?」
ガル「説明しよう! 遺跡から発掘されるアイテムはまれで、種類は出尽くしていると思われてるんだ。だから『判別器』『測定器』『保温器』『投光器』『捕獲器』などの物しかでないと固定観念があるんだ。わかったか」
キンジ「わかったっす。タイトル地下城は3話でおわる予定っす。次回は週末の予定です。スーパーマジックユーザーキンジがおおくりしました!」




