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【15話】ランディスカウトされる

 ある屋敷の応接間に、二人の年寄りが談笑していた。


 一人はこの村の治療師マキナス・ルードマイヤだ。

「よく来たな、ハゲスキー。久しぶりに見たら、本物の禿げになりおったか……かっかっかっ」


「ハベンスキーだ! 折角土産を持参して来たのに……ブツブツ」


 暫く、昔話を交えながら話込んでいたが、急に沈黙状態になった。


「「……突然、だが」じゃが」

「「……ん?」」


 互に先に話せとジェスチャーをした後、またしても同時に口を開く。

「「ランディ・ダーナスと言う子を、知らんかな」がいるんじゃが」

 

「「……えっ?」」



 △▲△▲△▲△▲



「…………と言う訳で、ロイエンルーガさんのご子息のランディ君に、我がウエストコート高等学院に入学して欲しいのですよ」


「「はあ……」」

 ロイエンルーガとクラリスは、未だに事情が飲み込めていなかった。


 ロイエンルーガは、

(たしかに、ランディは規格外に賢い、しかも八歳にして一般兵並みの戦闘能力も有る。だから、あの名高い高等学院に入学する資格は、充分に有るだろう……しかし、新旧の学院長が雁首揃えてスカウトに来るなんて)

 と思っていた。


「しかし、お恥ずかしい事ですが、オレ……私にはこの子を入学させる資金が……」


「勿論ランディ君には、学費免除のコースに入学して貰います。このコースは難易度が高いですが、ランディ君なら大丈夫でしょう」

(なにせ、グランヒーリングまで使ってるんですから)


 ハベンスキー学院長が、続いて話し出す。

「ところで、ランディ君は八歳にしては、やや大きいですね。いっその事、九歳って事にして、来年にでも我が学院へ入学しちゃっても……うん、そうしましょう。名案です」


 ただの無茶な思い付きを、名案と断言して『パン』と、手を打つハベンスキー。


「えっ? ……でも、高等学院は十一歳からでは……」

 クラリスは真っ当な意見を出す。


「非常に才能の有る子達には、特例で一年早く入学出来る制度もあるんですよ」


「ハベンスキー、本気か?」

 と言うマキナスも、ナイスアイデア! と表情が物語っている。



 そして、ランディの知らない間に『ウエストコート高等学院』の入学が決定していた。



 △▲△▲△▲△▲



 時刻は夕暮れ……僕は、ロイエンに叱られ、軽く叩かれた。


 理由は、いくら勝算が有っても、野盗相手に戦いを挑んだ事だった。

 今回珍しく、クラリスも参加して、ロイエンと一緒に怒っていた。


 そうだな……今の僕は八歳だもんな、怒られて当然だ。

 次があれば、もっとこっそりやるか。



 少し落ち着いてから、親子三人で入学の事について話し合っていた。


 それで気になるのは、クラリスの態度。

 クラリスは、僕をチラチラ見るだけで、なかなか話に加わらない。


 いかに女心に対して鈍い僕でも解る……僕と話したがっているけど、何となく切っ掛けが無く、この状態になっているんだと。


 もしかしてクラリスは、僕を気持ち悪くて避けていた訳じゃ無いのか……


 なら試しついでに、僕から歩み寄ってみよう。

「父さん、母さん……僕を天才に産んでくれてありがとうございます」

 ニコッと微笑んだ。


「じ、自分で天才って言いやがった……」

「…………グス……」


 えっ!? グス? ロイエンの反応は、ほぼ予想通りだけど、クラリスはなんで? と思っていたら、クラリスが泣きながら僕を抱き締めていた。


「うわぁぁぁ……ランディ、よかった……よかった……ご免なさい、グスッ、今までご免なさい……」


 ごめんクラリス、僕はやっぱり女心を理解出来ませんでした。

 良かったとご免なさいの意味が『いまいち』どころか『いまさん』くらい分からんよ。


 するとロイエンがタイミング良く、僕の疑問に答えてくれた。

「クラリスはな……ランディを能無しで産んだ事に、負い目を感じていたんだ……」


 なんですって!?

「父さん、能無しって失礼ですね……」


「パパって呼びなさい。仕方ないだろ……ランディの魔力総量は、今まで聞いたことが無いほど少なかったんだからな」


 僕は反論します。

「パパ……魔力が無くても、出世の道はたくさん有りますよ?」

(既に、内政チートのプランは出来上がっているのだよ……クックックッ……異世界物のラノベ、たくさん読んだからな)


 それにしても、クラリスってこんなキャラだっけ? 僕と密着して、離れないんだけど……

 まぁ、オッパイの感触がとてもいい感じなんで、このままにして置こう。


「それにしてもなぁ、ランディ……複数の盗賊相手に良く勝てたな……そんなに弱かったか?」


「うん……僕を子供だと思って油断してた」


 そんな感じで、僕は親子団欒を、初めて経験した。

 それは、ランデイヤの記憶と日本人としての記憶、両方探しても無かった物だった。


 ランデイヤとしての記憶は無能と称され、親に捨てられた記憶。

 日本人としての記憶は、母親が他の男を作って消えた記憶。


 だから、いまの母親(クラリス)に抱き締められながら会話をするのが、今まで感じたことの無い感情を生み出していた。

幼年編までは、毎日投稿よていです。

それ以降は、応援メッセージしだいです。

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