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【145話】集結①

 case1 ハベンスキー


 ワシは今、暇をもて余しとる。


 ウエストコート高等学院の学院長を辞任したからだ。


 最後の最後で『高等学院にウエストコートあり』と知らしめてからの辞任だったので、継続の要請もあったのだが、高齢を理由に引退した。


 ワシが引退しても、両手魔法の技術は引き継がれるし、回復魔法もランディとアリサがいた時ほどではないが、平均を上回る習得率を維持している。


 暇になったとは言え、何か生き甲斐を見つけないとな……と、思っていたら。


 国から、書状が届いた。


 書状の中身は、あの辺境の地『エスパル』で教師にならないか、との事だった。


 乗り気はしないが、最後まで書状を読んだら、気が変わった。


 エスパルの領主の名前が記されていたからだ。


 エスパルの領主名前は、ランディ・ライトグラムと、書かれていた。


「さて、骨を埋める土地が、あのエスパルになるとはな」


 ワシは急いで、引っ越しの準備を始めた。



 ◆

 ◇

 ◆


 case2 レオパルダ


「パルダ、すまないね、足手まといになっちゃって。いっそのこと母を捨ててもいいんだよ。パルダ1人なら……」


「お母さんっ! 駄目だよ、そんな弱気になっちゃ」


 母は私の回復魔法では治らない、謎の病気を患っていた。


 ここ最近は、状態が悪く、誰か付きっきりで看病しないといけないくらいだ。


 今までなら仕事が終わってから、お母さんの面倒を見てれば何とかなったのだが、それが出来ないせいで、仕事を取るか、お母さんを取るか選択を迫られたので、今の仕事を辞めてしまった。


 先代の国王から、獣人の扱いは徐々に良くなっていったが、こんな事態になると、周囲の冷たさを感じてしまう。


 私はある噂を耳にしたので、賭けに出る事にした。


 かなり遠いが、ノースコート地方にあるエスパルと言う領地は過酷で、かなり住み難い所らしい。


 ただ、猛獣や魔獣と戦って生活を得る土地なのに、回復魔法使いが殆どいないと聞いた。


 ここならば、回復魔法を使う私ならば、獣人と差別されずに働けるかも知れない。


 幸いお母さんは、看病さえしていれば、移動にはまだ耐えられる。


 ここで貯蓄を食い潰すより、エスパルに懸けて見ようと思う。


 私は、東西の仲が悪いと言われているエスパルの町、ユタに行く事にした。



 ◆

 ◇

 ◆


 case3 テスター・バスター


 俺は毎日、猛特訓に明け暮れている。


 理由はこれから戦争が始まるからだ。


 今回の戦争は、王宮騎士が3分の2も出動する例年にない事態になっている。


 俺が子供の頃は、小競り合いを毎年していたらしいが、ここ10年近く戦争はない。



 しかし、ここに来てアカシア王国軍の動きが活発化してきたのだ。


 理由は、王族特務隊が命がけで持ち帰った、新型の鎧だろう。


 アカシア王国は新型の鎧を軍隊に配備して、戦争を仕掛けるかも知れないのだ。


 こんなとき、俺とジョーシンさんが団長に呼ばれた。


 もしかしたら……



「ジョーシン、テスター、待っていたぞ。私も忙しい、早速だが本題にはいる。例年、新人研修に使っていた施設を移す事になった。理由はその場所が更なる訓練を見込めて、場所も王都より10日も近くなる」



「団長、それでその話がなぜ、私とテスターに?」


 ジョーシンさんが、俺が思った事を代弁してくれた。


「そこの領主が問題なのだ。調査隊に非があったのは間違いないが、身体中に痒くなる草を入れられ、縛られて馬にくくりつけられて戻ってきたと言う」


 団長の言葉が、ちょっと信じられない。


「団長、調査隊も退役した王宮騎士じゃ」


「ああ、衰えたとは言え、そこいらの騎士より強い。その7人の調査隊を単独で倒し、その昔、王宮騎士が浄化に失敗し、闇の公園と呼ばれた、大魔境エスパルを、たった数日で浄化した化け物が今の領主だ」


「そ、その名前は?」


 ジョーシンさんが聞いてきたけど、俺は訳が解った。


 このタイミングで呼ばれたなら、その領主は俺とジョーシンさんが知っている人物だ。


「エスパルの領主、ランディ・ライトグラム伯爵、おそらく今の彼奴(アレ)は私とスクット・リッツの2人がかりでも勝てはしないだろう」



 今、ノースコートに行くことは、アカシア王国との戦争に外されたと同義だと言うのに、胸が高鳴る。


 ふふ、ワクワクしてきたぞ。


「あの、ランディか……もしかしたら、戦争に行った方が楽なんじゃ」


「……」

「……」


 ジョーシンさんそれは言わない方が。


「ジョーシン、テスター。これは上からの勅命である! 至急エスパルに赴き訓練場所を確保せよ」



「はっ!」

「はっ!」


 こうして、俺とジョーシンさんはエスパルに旅立った。



 ◆

 ◇

 ◆


 case4 ガルサンダー


 我が主、ランディ様がいなくなってからしばらく経過した。


 元子爵邸付近は、新たな商会が多数参入し、賑やかさは変わらぬと見たが、徐々に人が減っていき、今や半数以上が閉店してしまっている。


 主殿と同じことが出来るわけないだろうに。



 仕事仲間のアルテリオンが、予想より早く戻ってきた。


 しかも血相を変えて。


 まさか、王命であるシャンプーとリンスの買い付けに失敗したのか?


 この雷撃のガルに任せてくれれば、良かったのに。



 2日後、王都にいる特務隊幹部が全員呼ばれた。


 呼ばれたと言っても、王都にいる特務隊は、このガルサンダー、アルテリオン、マテララーンとサンジェルマンバカ王子しかいない。


 ボスは特務隊トップで、しかも王族なのに現場が大好きだから、出かけてしまっている。



 ここには、王様もサンパウロ王子も同席している。


 全員集まったところで、アルテリオンが立ち上がり、頭を下げてから、話始める。


「国王様の要請で至急集まって貰いました。今回の緊急会議の議題は、あのエスパルです」


 それは、知っている。

 早くその続きを言え。


「ダークソード、俺は一昨日から待たされているんだ。はやく言え」


 そうだ……バカ王子の言う通りだ。


「今回は王命もあり、馬を乗り継いで行きましたので、ダークロッドのランディがエスパルの町に着いてから、1ヶ月は経過していない時に到着したのですが、あの不仲な町『ユタ』は完全に統一されていました」


「おお……」

「さすがだな」

「少し早い気もするが、予想はしていた」


 さすがは主、しかしバカ王子の言う通り、想像できる範疇だ。


「さらに、ユタの町北側を埋め尽くしていた『魔獣』と呼ばれていた『死のモンスター』を一掃し浄化していました。これにより150年前に滅んだ町『ナパ』を取り戻し、キャンブルビクト侯爵領近くの砦から、移住計画が始まっていました」


 これを聞いた2人の王子は『バカな!?』と言って立ち上がる。


 こうして見ると、あの王子たちは兄弟なんだと思うくらい似ている。

因みに見分け方は簡単で、聡明な方がサンパウロ王子でバカな方がサンジェルマン王子だ。


「しかし、移住計画は現在難航中の様です。理由は、ユタの町で採れる素材が半年前の10倍になっていて、砦での仕事が激増しているせいでしょう。砦の住民……以降ナパの民としますが、ランディはナパの民から神格化されているほど信頼されています。そしてユタの町では、悪魔や化け物と言われていますが、出会った全ての民がランディを信頼していました」



 さすがは主……あの町の民も正しい目を持っているな。


「まだ、何か言いたそうだな? たった1ヶ月足らずで何をしたんだ?」


「いえ、ランディがやったことは後1つだけですが『レール』と名付けた、鉄の棒を地面に敷いて、その上を走らせる荷車を作っていました。砦からユタ、ユタからナパまでをそのレールで移動と輸送を簡易にするものです。詳しくは三日後の会議で。で、今回の一番重要な話は……」



 おい、まだ何かあるのか。



「エスパルに『生きた遺跡』が存在していました」


 なんだと!?


 当然、先に報告を受けていた王以外は、騒然としている。



 だが、アルテリオンはそのまま淡々と話を続ける。


「遺跡は現在調べた時点で、低層階ではそれほど脅威になるガーディアンはいません。ですが採掘できる素材も普通の鉱山や、細工屋で造れる物でした。まあ、下層に行けば分かりませんが。他の機関や部署が騒ぐでしょう。こちらとしては、北側に位置するので、特務隊を1名派遣して、定期的に様子を見る、と言うことで纏めようと思います」


 よし、主に会う絶好のチャンス。



「そこで、この俺の出番か」


「サンジェルマン、お前はバカか? 王子が長期間、王都を離れてどうする?」

 

 第二王子は本物のバカだ。


 結局、俺もずっと王都はなれる訳にはいかず、マテラ・ラーンと交代で、エスパルに行く事になった。





キンジ「こんにちは、スーパーマジックユーザ、キンジっす。今回のタイトル『集結①』って事は、次回は②なんすか?」


ガル「いや、次回は『第7レベル呪文解放』だ。あと1年、あと1年で転生前のランディに戻るぞ」


キンジ「おれも、毎年レベルアップしたいっす」


ガル「午前にアーサー、昼間にカーズ、夜に俺様の修業に耐え抜けば、毎月レベルアップ出来るぞ?」


キンジ「それ、絶対に死んじゃうやつっす」

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