表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/195

【135話】年齢150歳の雑魚

 この私の名前は、カマドーマ。

 至高の御方、バハムアーク様に命と名前を頂いた、この世に生まれ出て150年の、高貴なる存在だ。


 私はバハムアーク様から賜ったマジックアイテム『ランクサーチグラッセーズ』を装備している。


 1日3回しか発動できないが、これを使って確実に獲物を捕らえている。


 本来ならば、町の人間がもっと油断したところを襲うのだが、もう少しでバハムアーク様が自由に活動出来る様になるから、気が急いてしまう。


「ククク……いたいた。ランク2が2匹、つがいで歩いている。120年前から町を二分割させ、仲違いさせてからは、幾度かこのような愚かな餌がくる。ククク……笑いが止まらぬな」


「ランク1は、ゴミ。ランク2は、弱者。ランク3は私と同じ強者、ランク4は至高の御方の様な超越者か……私はランク3の中でも強い方だと言われたが、万が一もある。が、確実にランク2の餌が来た時だけを狙い、生きたまま切り刻み、じっくりと狩るのだ。ククク……いだだきまぁす」



 私は餌の前に立つ。


「キャア!!」

「バカな!? ここは魔獣の来ない安全地帯の筈じゃ」


「ククク……バカめ。それは至高の御方が操作した結界だ。だが、この私だけはそれを潜り抜ける事が出来るのだ。さあ、バハムアーク様の贄となれぇ!!」



「なっ? 言っただろ? 知能の高い魔獣が犯人だって」

「こ、これに俺の妹が殺されたのか? それに120年前からって、そんな」


 なんと、後ろから人の声がした。


 振り向くと、少年と青年が2人、この私を見ている。


「ククク……何処にいたんですか? 予想外ですが、贄が追加になりました。ランク2とランク……ん? ククク……メガネが曇りましたか? 」


 私はメガネを拭いて、かけ直す。


「ククク…………少年は、ラ、ラララ……ランク5!? あ、あり得ない、あり得ないっ!!」




 ◆

 ◇

 ◆


 馬の胴体に、リザードマンの上半身が合体した変な生き物がいた。


 しかも、メガネは装着してるし、やたら独り言が多い。


 その独り言のお陰で、町を仲違いさせた犯人はこいつだと、手間なく判った。


 ただ解せない。

 この魔獣が口にした『ランク5』の単語。


 剣を持っている事から、クレリック呪文を扱う魔獣とは想像しづらい。


 戦士を昇華させた職業ならあり得るのだが、恐らく、眼鏡にクレリック呪文が内包されいるのだろう。



「ククク……間違いだ、ランク5なんか聞いた事がない! きっとゴミ以下の存在に違いない! この150年を生きるカマドーマ様を驚かせた罰だ、死ねぇ!!」


 この魔獣の降り下ろす剣は鋭い。

 しかし、タイミングが分かりやすく、避けるのは難しくない。


 カン!


 軽く反撃しても、硬い鱗のせいで、ダメージがあまり通っていなそうだ。

 

 ならば……


「ククク……やるな? だが、これならどうだ『ダークベビースラッシュ!』」


 正確で早く重い一撃だと感じ取れるが、正確さが余計だった。


 タイミングが分かりやすいから、正確さも相まって、攻撃が分かりやす過ぎる。


「す、すごい、トウセンさんに勝ったのも偶然じゃないのか」


 トラジ、感心してる場合じゃないぞ。

 さあ、もっと攻めるぞ。


「第3レベル呪文……リバース……シリアスダメージ」


 回復呪文の逆呪文でダメージを与えたあと、持ってきたハンマーで頭部を叩く。


「ゴハァッ……クレリックのリバーススペルに、ダブルアタックだと!? し、しかも詠唱を省いた?」


 ちょっと待て、呪文と攻撃を併用する戦闘法『ダブルアタック』を知っているのも驚いたが、クレリック呪文の逆呪文を知っているだと。


「クレリック呪文……しかも逆呪文を知っているのか? おい、リザードケンタウロス、お前に色々聞きたいことが出来た」


「ハヒィッ!? ラララ、ランク5……ゴキュ。ヒヒィィィィィィン」


 上半身リザードマンのくせに、馬みたいな悲鳴をあげて逃げ出しやがった。

 状況判断も正確だ。

 下半身は馬だけに、速いな。


「神速!」


「速い!? 今回の領主は何者なんだ?」


 全力で逃げるリザードタウロスの後ろ足をハンマーで破壊して、動きを封じる。


 聞きたい事もあるし、トラジの妹を殺害した犯人だろうから、瞬殺は止めておくか。


「トラジ、早く来い! 妹の仇なんだろ? さて、あいつが来る前に聞いておこうか、リザタウロス。何故クレリック呪文を知っている?」


「…………ククク……この私もここまでか。バハムアーク様! 謎の化け物相手に、私はここで朽ちる様です。ならば最後の贄はこの私、カマドーマで御許し下さい。私はリザタウロスではない!!」


 リザタウロスは剣を僕に投げてきた。

 当然、避けるが、その間にリザタウロスは自身の爪を伸ばして、自害してしまう。


 レイズデッドを使ってまで聞きたい質問じゃないから、諦めるか。

 それに、事情をしっているのがもう1人いそうだしね。


 バハムアークか、覚えておくよ、リザロス。



「はぁ、はぁ、こいつ、死んだのか?」


「ああ、ちょっとやり過ぎたから、自害しちゃった。だが聞いていただろ? トラジの妹を、いや120年間にわたって、この町の人々を殺害していた犯人を」


 僕とトラジは、ハイディングミネラルで岩の中に隠れていたんだ。

 それと、安全地帯と危険地帯の境界付近で待機していたんだ。


 たった2日目で当たりを引くのは、イージー過ぎるけどね。


 トラジ以外にも、証人もいるし、東側と西側の仲違い事件は一件落着だ。


 ……とは、行きませんでした。


 リザードマンタイプのケンタウロスを、持ち帰り、町の人々に見せて、説明した。


 だが、町の人々は呆然としていた。

 それはまるで『こんな化物に町が東西で仲違いされていたの!?』とでも語っている様だった。


 だが、数時間で元気を取り戻して、東西をひとつの町に戻すと決まった。


 だけど、東西の不仲の原因は取り除いたのに、どうもギクシャクしてるんだよな。


 特に、町長の2人が。


 でも、子供たちは遊び相手と遊ぶ場所が増えたから楽しそうだ。



 僕は改めて、この町について説明を受けた。


 この町ユタは、広さのわりには人口が800人を少し欠ける人数で、かなり少ない。

 理由は農地の少なさや、魔獣猛獣により生存圏が限られているためだ。


 ユタは中央に大きな柵を作り、東西で分ている。


 その、間隔は100メートル程あるので、みんなが来たときの拠点にしようと思う。


 あと、町の南側の大森林は猛獣が多く棲息して、少しでも油断すると、こちら側が捕食されてしまう程なのだとか。


 気になるのは、100年以上前はなんとか、討伐していたと言う話なので、町の戦力が落ちたか、猛獣がパワーアップしたと言う事になる。



 北側は魔獣の棲み処で、ある意味では猛獣より厄介だと言っていた。


 ある意味とは何だろうか。


 ただ、こちらには対処法があるらしく、詳しくは教えてもらってない。


 その北側、正確には北西側になるが、地下に降りる洞窟があって、そこで売り物になる、鉱物や素材を手に入れて、僅かな金品と交換している。


 そして、洞窟から北東に進むと、150年以上前に滅んだと言われる、もうひとつの町がある。

 ここは、洞窟の魔獣よりも手強いらしく、今は遠目からでも見ていないらしい。


 もう、廃墟になっているな。



 今日は時間もないので、北側の魔獣見学に出掛けることにした。


 どうも、町人が話す魔獣の話が、頭に引っ掛かるんだよな。



 今回は、初回と言うこともあって、東西の戦士3人づつと、僕の計7人で視察に出掛けた。


 先ずは、村の中央にある湧水に集まり6人が竹筒に水を入れていた。


 飲み水は別にあるのだから、別の異図があるのだろう。


 湧水を溜めていた桶は、少量しかなくて、6人が竹筒に水を入れたら空になってしまった。


 その都度、僕を見ながらニヤニヤする。ユタの戦士。



 あぁなんか悪巧みをされてる気がする。


 ユタの戦士は3種の装備をしていて『短剣と盾』『剣と小盾』『大ハンマー』が2人づつの編成だった。


 恐らく、この編成と竹筒の水が、北側の魔獣対策なのだろう。



 深い森を歩くと、僕を見ながらニヤニヤしつつも、緊張しているのが解る。


 いったいどんな魔獣がやって来るのだろう。



 少し歩くと、前方から特定の種類の()()の気配を感じる。


 ま、まさかこの気配は……


 遅れてユタの戦士も、()()に気づいたようだ。


「いた」

「数は1体か」

「それなら、対処できるな」

「領主様、これから魔獣が来ますぜ、びびって腰を抜かさないでくれよ」

「領主様って、強いんだよな? 1体相手にしてくれねえか? その強さを見せてくれよ」

「へへ、何かあったら、助けますって。お礼は貴族様の飯で良いですか? 持ってるんでしょ? もちろん6人分な」


 話す順を追う毎に、口数が増えてきてる気がする。

 しかも、後半の3人は生意気だ。




 僕を領主と認めた様だけど、敬ってはいないね。

 骨のある戦士達で良い事だ。


 だが、一番の興味はこの先にいる()()だ。


 死の気配を纏ったアンデッドモンスター、グールが生肉を求めて徘徊していた。


バカ王子「ランディのいない弊害は他にはないのか? 俺は各種定食が消えたのが痛い」

イケメン「まさか、たった1商会が消えるだけで、これほどの影響が出るとは」

弟子「アルテシアンナ、ターベール、ムアミレプの王都への交易が減少するようです」

信者「我が王が頭を抱えて、一部の侯爵に呪いの言葉を投げ掛けていた」





キンジ「次回の神罰転生は文字数、増量になるッスよ。次回神罰転生『魔獣と猛獣』よろしくッス」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ