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【130話】ランディ、復讐する

今回、後書きに少々残酷な文章が載っています。気をつけて下さい。

 これから、復讐を始めようとしたら、ダナムに呼び止められた。


 だから、ダナムには待機を言い渡したんだけど。



「ランディ、わがままを言って悪いが、オヤジだけは、俺様に始末を付けさせてくれ」



 …………ダナムの覚悟はどの程度か確認するか。


「ダナム『始末』とは殺すって事で良いのか」


 ダナムが頼むなら、半殺しで済ますつもりだが、その後のダナムには、僕の陣営に居てもらう事は出来ないな。


「そうだ。本来なら俺様がでしゃばる事じゃないんだが、オヤジは間違った。その間違いは息子である俺様が始末をつけたい。俺は、解雇されても良い。ランディ頼む」


 ダナムが頭を下げた。


「ダナム、お前の頼みをきいても良いが、条件があるぞ」


 頷くダナム。


「僕がダナムより強い間は、ずっと僕に仕えろ。出来なければ、ここで待機だ」


「っ……ありがとうランディ、ランディ様」


「あっもう1つ、様付けもなしな」




 僕はその後、ロイエンと合流して『仕返しに行く』とだけ伝えた。


 プリウス伯爵を攻める人数は、僕、ドロワット、ゴーシュと、ベルデタルの剣士上位20名に絞った。


 お返しとばかりに、ほぼ同数で仕返ししてやるからな。


 生き残った賊は、プリウス伯爵の正確な場所を知らされていない。


 ただ、大まかな場所はわかった。

 パーティ後の貴族の移動先は分かりやすかった。


 しかし、情報のあった場所にはプリウスはいない。


 どうやら、マツヤ男爵と出掛けたようだ。



「第4レベル呪文……人物捜索LVⅠ」


 この呪文は顔と名前が分かっていれば、1㎞以内限定で探し出すことが出来る、僕のオリジナル呪文。


 この呪文を使って、この付近をウロウロしよう。



 幸運にも歩いて5分で、プリウスが僕の検索に引っ掛かった。



 プリウスの居場所は、調べると本来なら無人のはずの建物で、たまにどこかの金持ちが一時的に借用して使う場所だった。


「クククッ、ちょうどいい。中にいる人間は殆ど黒ってことだからな」


 ベルデタル剣士の半分には、逃げたときの処理のため、建物の外側を包囲させた。


 半分は、僕の手伝い。

 武器を持たずに襲ってこない場合は捕縛するから、人手が要る。


「行くぞ」


「おう!」

「はいっ」

「……」

「ああ」

「突撃ぃぃぃ」



 ◇

 ◆

 ◇



「キサマ! この私がプリウス伯爵と知っての事かっ。キサマ等は貴族に刃を向けた大罪人になったのだぞ。命乞いをするなら今のうちだぞ」


 建物内の制圧はあっさりと終わってしまった。

 戦える程度の敵はわずか10名で、僕単独でも軽く制圧出来る程度だった。


 そして、プリウスは的はずれな言葉を並べ立てている。


 ダナムの父親も一緒にいたため、捕らえて別室でダナムが始末を付ける手はずになっている。


 幸いな事に、ダナムの兄貴達はこの場に居なかった。


 僕には厳しい戒律があるから、未成年は殺せないし、僕の心情でも殺したくない。



 今は、目の前の敵の処理だ。


「さて、私はランディ・ライトグラム。ウィルソン国王に拝命された貴族だ。その僕を殺しにかかって生きていけると思うな。ちなみに命乞いは受け付けない」



 普段は使わないセリフだけど、相手の言葉で言い返すのは、大好き。


 ガルも暗殺は好まないのに、暗殺者や暗殺の依頼者には、嬉々として暗殺を仕掛ける。



「うぐっ…………しょ、証拠はあるのか。私は指示していないし、屋敷を襲った事実も知らん。確たる証拠もなしに伯爵家を断ずるなど、あってはならない。問題になるぞ!」



 数秒間、怯んだプリウスだが、捕まった犯人の常套手段に出た。

『証拠はあるのか』と。


 これには、2つ言い返せる事がある。


「屋敷を襲った等と一言も、言っていませんが? 僕はサンジェルマン王子のパーティに居たではありませんか。それに証拠なんて……僕とお前が知っていれば済むことだよ」


 残念だけど、他人に見せる訳じゃないから、僕と当事者が分かっていれば、 証拠は要らない。


「ままままま待てっ、私は物凄い利益、いや国益になる実験をしているのだ。私を処罰するのは止めろ!」


 実験ですと? 気になる。


「言ってみろ」


「くっ、我々は意図的にギフト持ちの子を、多く産み出す実験をしているのだ。これがどんな利益を生み出すかキサマでも、分かるだろ?」


 まだ上から目線で話すプリウスに感心しながら、問う。


「ふぅん、どんな実験?」


「それは、ある男に子供を産ませると、高い確率で、ギフト持ちの子が生まれる。奴隷に産ませてみた結果、5人に1人の子供がギフトを授かっていた」



 僕は直ぐに『ある男』にたどり着いた。

 僕が在籍していた学院の有名な話で『マツヤ4兄弟』ってのがあった。


 その4兄弟の内、3人がギフト持ちで、残りの1人もハイブリットだって話を。


 ギフト持ちは、10人に1人の割合って授業で話していたな。


 まあ、ダナムの母親も、ギフトの覚醒しやすい遺伝子を持っているのかもな。



 ひとつ質問しよう。


「ところで、実験に使った母体は?」


「ん? なぜ使用済みに興味があるのだ? 効率を考えるなら、再利用より新たな実験体を使う方が、効率がいいぞ」


 実験に使った奴隷は始末されたか、転売されたかのどちらかか。


 さらに、痩せ細り死ぬ寸前だった、クラリスの姿を思い出す。


 不味いな、思ったより冷静じゃなくなって来てるな。





「第1レベル呪文……リバース……ダークネス」


「グボァ!? 」

(喉が、目が見えない!?)


 暗闇の呪文と同時に、プリウスの喉を潰した。



「聞こえるかプリウスよ、もうお前の声は聞きたくない。僕のもう1つの名前は、ランディ・ダーナス。お前が僕の両親を死地に送ったのは分かっている」


「ゴ、ゴア!?」

(な、なんだって!? ま、不味い、何とか何とかしないと)


「言い訳は聞きたくないから、喉は潰した。代わりに痛みは与えないから、ゆっくりと逝くがいい」



 そして、無理矢理眠らせた。



 予定変更だ、ダナムの父親は今死んで貰っちゃこまる。



 急いで、別室にいるダナムの所に移動した。




 そこには、ダナムと知らない顔を膨らませたオッサンがいた。


 だれ?


「ランディ、すまないこれから、始末を付ける所だ」


 どうやら、殴られ過ぎて原型を止めていないダナムのオヤジさんらしい。


 酷いな。


 ボゴン!!


 ダナムに殴られるダナムパパ。


 しかし、殺すには至らない。


「おかしい、何故……」


 あっなるほど、ダナムは殺すつもりで殴ってるつもりだけど、どっかでブレーキが掛かっているのか。


 おかげで、プリウスより可哀想な結果になってる気がする。



「ダナム、悪いがこいつの始末は、国にまかせる。ダナムの兄弟で、この襲撃に関わっていない人がいれば、そいつをマツヤ家の当主に。関わっているものは身分の剥奪、プリウスとマツヤ男爵に係わっていた別の事件は、カツ丼と特務隊にまかせよう」


「ランディ?」


「悪い。プリウス伯爵は、母さんのこともあって、色々聞く前に始末しちゃった。だからマツヤ男爵をまかせると言った手前申し訳ないけど、こいつの身柄は国に任せよう」


「ああ、解った」


 ダナムも納得していないような、ほっとしたような表情をしていた。



 だけど、なんか忘れているような。


 首を捻りながら考えていると、ダナムが話しかけてきた。


「オヤジの事で王族特務隊に預けるのは理解出来たんだけど、なぜカッティ・ドーンが出てくるんだ?」


「今回、奴隷やその子供達の処理が必要になるかも知れない。だからカツドンを使うって、思い出した! 怪我人は全て治したって聞いたから。気にしなかったけど、カツドンと子供達はどうしてたんだ?」


「あれ、言わなかったか? カッティー・ドーンは、子供たちを連れて貴族の大行列を見に出掛けてたぞ。たしか、3日くらい前に伝えたはずだが……」



 あっ、忘れてた。

 そう言えば、屋台めぐりを泊まりでするような事を聞いた気がする。


 恐るべしカツドン。

 なんて、ファインプレイだ。



 さて、この事を特務隊に報告して、カツドンに特上の餌をあげて、やることがたくさんだな。



 こうして、諦めていた復讐は、意外にもあっさりと叶った。




「ん~? ん~、ん~っ!!」

(ここは何処だ? 暗い何も見えない、助けてくれっ!!)


 プリウス伯爵はとある場所で、棺桶に入れられ生き埋めになっていた。


 プリウス伯爵は、気を失う前の最後の言葉を思い出す。


 『プリウス伯爵、痛みは与えない。だけどクラリスを死ぬ寸前まで追いやった事を、噛み締めながら死んでくれ。最後に、諦めていた仕返しを実現させてくれて、ありがとう』


「ん、ん~! ん~、ん~、ん~、ん~っ!」

(い、いやだぁ! 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくないっ!)


 こうして、プリウス伯爵は静かに逝った。




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