【13話】ランディ秘密を見られる
ランディが住んでいる村から、一番近いある大きな町で、突如大規模な盗賊が姿を現した。
討伐隊は、対盗賊戦において、定評のあるグランデール伯爵。
グランデール伯爵は、見事二百人近い盗賊等を殆ど全滅させた。
グランデール伯爵は、この功績により高名な侯爵に呼ばれ、盛大な宴が繰り広げられていた。
グランデール伯爵は、次々とやって来る貴族達に、自分の武勇伝を話していた。
武勇伝では、事実を少しだけ装飾し、話を聞く大半の瞳を輝かせた。
グランデール伯爵は、二百二人の盗賊のうち、百九十五人もの盗賊を捕獲又は殺害した。
この数字ならば、十人中十人が盗賊を全滅させたと言える結果だった。
しかしながら、残りの七人のはどう扱われるのだろうか……そして、何処に消えたのだろか……
△▲△▲△▲△▲
僕は毎日戦闘訓練をしている。
もちろん、鉄板基礎の走り込みも欠かさずやってる。
僕は自分に合っている武器『棍』を使っている。
ほんとは、フレイルや三節棍の方がしっくりくるんだけど、この村には無い。
そして、嬉しいお知らせがあります。
一昨日僕は、やっとロイエンに一撃与える事に成功しました。因みに手足は一撃に含んでいないからね。
さらに本日、本気のセナリースを追い詰めていた。
「うわっ! っと……げっ!? た、たんま、たんま、まてって、ぎゃっ!」
やったぞ、ロイエンに続いてセナリースもやっつけた……
まだ二割だけど転生前の力が戻ってきたのが効いたな。
「くっそう、マジかよ……なんで八歳のガキにガチンコで負けるんだ? おれって……」
セナリースが、ガックリと膝を落としていると、
「はっはっはっ、どうだ! 我が息子ランディの力は」
ロイエンが思いっきり威張っていた。
「だんなぁ……おれより先にボンに負けといて、どうやったらそんな威張れるんだ?」
セナリースの言葉に、一瞬怯んだロイエンだったが、直ぐに元気になって、
「よ~し、本気のパパを見せてあげよう」
なんとロイエンは肉体強化魔法を二段階強化して、僕に向かってきた。
ちくしょうっ、防戦で一杯一杯だ……どうやら僕は未々本物の戦士に勝てない様です。
「うっわぁ……大人げねぇ……八歳のガキに肉体強化魔法使いやがった……プライドが無ぇのかアイツは……」
そんなセナリースも、自分の番になると、肉体強化魔法を使って僕をしごいてくれた。
「ボン! まだ力が乗ってねぇぜっ!」
外野には冷静になったロイエンが、
「八歳の子供に本気を出す大人って有りか?」
と頭を抱えていた。
△▲△▲△▲△▲
今日は珍しく家の者達が総出して不在だった。
ロイエンとクラリスは、月に一度の強制お茶会に出掛けている。
何故『強制』って言うと、ロイエンはお茶会が苦手らしいんだ。
それでも、参加するあたり、強制的に参加させられてるのかなって思ったから、そう名付けました。
やっぱり貴族だったんだね……没落寸前の地主かと思ったよ。
セナリースは両親の護衛、アイシャとシープレスは食材の大量買い込みに、レジーナは借りていた本の返却&新たな本を借りに行きました。
今、この家にはアリサしか居ない……
アリサが潤んだ瞳で僕に迫る。
「ねぇ……ランディ、いいでしょ……ねっ」
「ア、アリサ……落ち着け、待て……」
「だめぇ……もう待てない……ねぇ、いいでしょ」
「アリサにはまだ早いし、今は昼間だよ?」
「誰も居ないし、時間なんて問題なんてない!」
「やっぱりアリサにはまだ早いよ……」
「そんな事無いわ……アリサはもう子供じゃないの……ほら、見て……」
アリサは上着を脱ぎ出した。
「待てっ、アリサ待つんだ」
グサッ!
アリサはハサミを持って、自分の腕をザックザック刺し始めた。
「さぁランディ、使って……教えて……魔力の流れを……『グランヒーリング』の魔力の流れを」
この時、僕とアリサしか居ないはずの家で『ガタッ』と物音がしたのだが、不覚にも僕は気づかなかった。
「アリサ……エクスヒーリングは何回使える?」
「ん、二十回……」
そうか、まだ心許ないけど……今のアリサを説得する自信は無い!
ならば、教えましょうか。
「じゃ、約束ね……アレは一日に五回までにしてくれ」
僕は魔力の枯渇のサインが出る前に魔力が枯渇をするのを危惧していたのだ。
実は『アルテミットヒーリング』を使った時に、一度やらかしてしまったんだ。
魔力総量が少ないとこう言う事がおきる。
えっ? 今? 今は全く問題無し。
八歳の僕は凄いのだよ。
兎に角、流血しているアリサに回復魔法を使った。
「じゃ、目を瞑って僕の魔力の流れを感じて……行くよ、グランヒーリング」
アリサの傷は数秒で治った。
「どお? アリサ」
「う、ん……解ったかも……」
と言ったアリサは、再びハサミでざくざくと腕を刺しまくる。
恐いぃぃぃぃぃ! アリサはドSなの? ドMなの? どっちなの?
レジーナごめんなさい……僕はあなたの愛娘をSMの道に放り投げたかもしれないです。
僕がアリサの奇行に、あわあわしてるうちに魔法を唱えた様だ。
「……うん! グランヒーリング!」
おおっ! アリサの傷がみるみる治っていく、一発で成功したね。
この世界の魔法の習得は、案外楽なんだな。
「やった、出来た。ランディありがとう」
僕は念を押す。
「アリサ、一日に五回までだからね」
「解ってるよう……」
△▲△▲△▲△▲
ワシは、とんでもない物を見てしまった。
あの親バカが、余りに自分の息子の戦闘力を誉めるから、暇だし見に来てやったわ。
しかし、家に行っても誰も出てこない……留守か?
だが、人の気配はする……気になったので中に入ってみると、幼い男女のあやしい声が聞こえてきた。
子供がこんな事を、いやランディって小僧は、異常なほど大人びている……あり得ん話じゃない……
けしからん、ワシがしっかりと覗いてやるかの。
ワシは気配を殺して覗いてみると、想像した光景ではなかった。
代わりに、とんでもない事を口走りやがった。
『教えて……魔力の流れを、グランヒーリングの魔力の流れを』
と、言っておった。
ワシは、心臓が口から飛び出るかと思ったわ。
しかし、その驚きは、始まりにすぎなかった。
おなごは『エクスヒーリング』を二十回使えると言い出す始末。
たとえ『ヒーリング』と勘違いしても、魔力総量は200を超えるぞ?
さらには、魔力総量が12しか無い筈の、ランディが『グランヒーリング』を使いおった。
あの魔力の消費量は100だぞ100!
それに、小僧は一体だれに魔法を教わっ……はっ、まさか、アレか?
あの時一回見ただけで『グランヒーリング』の魔力の流れを読み取ったのか!?
あの時の懸念が確信に変わった瞬間じゃった。
とどめに、おなごまで『グランヒーリング』を使いおった。
あり得ん……『ヒーリング』ですら一年間教育して、三十人中十人しか習得出来ないくらい、難易度が高いのに……
……
…………
ワシは一晩考えた。
この小僧を、あの教育機関に放り込んだら、化ける……確実に化けるぞ。
ワシのコネを使ってでも、ぶち込みたい。
たとえ、あの学院長に借りを作ってでもな……
ふむ……そう思ったら、小僧が十一歳なるまで待ちきれなくなって来たの……
ワシは色々策を考えて見る事にした。
一日、二話投稿は、本日で最後です。
燃え尽きました。




