【121話】伯爵家のお茶会で
1日遅れました。
すみませんでした。
子爵級の主催のお茶会が大半を占めるなか、3回目ほど、格上の伯爵主催のお茶会に参加させられました。
大概は、ロイエンの言った通り、つまらないイベントだってのは判った。
ドリアさん、恨みますよ?
で4回目の上級貴族の訪問時に、意外なイレギュラーが起きた。
一部の紳士淑女たちに、言葉巧みに誘導され、ロイエン、クラリスと離ればなれになってしまう。
そこでやって来たのは、主催者の伯爵だった。
「初めましてランディ・ライトグラム子爵。ワタクシはアルトミリア・マクドバーダです」
「妻が強引にすまないな。改めて挨拶しよう。ワシはドームバッハ・マクドバーダだ。ワシはグランデール伯爵と旧知の仲だと言えば話は早いかも知れんな」
ここで情報を整理してみよう。
控え室っぽい場所に、あっさりと誘導されたのは、敵意を感じなかったからで、もし敵が隠れても僕1人なら対処出来る。
お茶会でも、今までの会に比べると、妬みや嫌みとかが極端に少ない。
なら会場にいるロイエンやクラリスは、気疲れ以外の悪いことは起きないだろう。
そして、伯爵と伯爵夫人。
2人とも、少年の僕を一人前として扱っている。
自己紹介の時も。自分の爵位を付けなかった。
爵位にこだわる貴族は『わたくし、イバッテール伯爵夫人よ』とか『我があのゴウマンダーゼ侯爵であ~る』とか、言うからなあ。
中には『わたしはガンバッター子爵です』とか、努力して爵位を貰って爵位を誇る、感じのいい人もいるけど、基本、嫌なやつが多い。
だが、この夫婦はそんな貴族と違うし様だし、グランデール伯は、准男爵時代お世話になった盗賊討伐隊の指揮官で、意外にいい人だった気がする。
「実は、ライトグラム子爵の事は、注目していたのよ? ワタクシの予想をはるかに超える出世。立ち上げ商会も順調の様だけど、1つ聞きたいことがあるの」
「な、何でしょうか、伯爵夫人」
なんだろ、なにか不味い失敗でもしたかな?
「いつになったら、チキ○ラーメンを売り出すの? かれこれ2年近くも待っているのよ?」
「ミリア、彼が自分の商会を立ち上げてから、まだ1年も経過していないんだ。だがランディ君、進捗状況は聞いてもいいだろ?」
なるほど……あの時、少量ばらまいたチキンラーメ○の信者でしたか。
あれは、この国では生産できないから、身内にしか食べさせてないんだよな。
「チキン○ーメンは、どう研究しても大量生産が出来なくて、僕とその仲間達しか食べていないんです。すみません」
「それならば、マクドバーダ家が力を貸しますわよ! ねぇあなた、それくらい構わないわよね?」
僕にゼロ距離まで近づいてから、自分の旦那を見ている。
「これ、ミリア……落ち着きなさい。あれは、ワシでも想像出来ない技術が、いくつも使われているはずだ。おいそれと外に漏洩する訳にはいかないだろう。しかしランディ君よ、もし手を貸して欲しいと思うのだったら、ワシが手伝うぞ」
う~ん、僕の想像した伯爵とはずいぶん違うんだね。
反省しよう。
10や20の貴族を見ただけで、すべての貴族は測れない。
そうだった、この国は、国王や王子だってちょっとおかしいじゃないか。
ここの伯爵は、今のところ嫌な気配がしない。
ロイエンやクラリスもいるんだし、仲良くしておこう。
「マクドバーダ伯爵」
「むっ、なんだランディ君?」
ちょっと、恐い顔になったけど、圧力はこれっぽっちも感じないから、真面目になっただけかな。
「実は、大量生産は今現在、不可能なんですが、少量でしたら、納品が出来るのです」
伯爵夫人の瞳がキラリと光る。
「一般市場に流さず、マクドバータ伯爵とその関係者だけに、と言うことにしてもらえれば、チキンラー○ンを納品しましょう」
さて、どうでるかな?
「それで、納品は何時頃になるのかしら? 出来るだけ早い方がいいわ」
近い、近い! 近いからっ。
奥様は、ゼロ距離から離れない。
「深夜にご迷惑して良いのならば、今夜中にはお届け出来るかと、うぷっ」
「ん~っ。やるじゃない。もぅ大好き」
「こらっ、ミリア止めんかっ!」
マダムに唇を奪われてしまった。
油断したとはいえ、動きに好意が混ざると、まったく反応出来ない。
ちなみに、油断しなければ防げるし、好意がなければ油断してても避けられる。
「あなた、ワタクシはこれから食事を控えめに取るわ。だって深夜には、あのチ○ンラーメンが食べられるのよ、オホホホホホホ」
キス魔夫人は、上機嫌の様だ。
「すまないな、ランディ君。まさか初日であそこまで気に入られるとは。恐るべしチキ○ラーメン」
ですねぇ。
「ねぇあなた、もうこの子に決めちゃいましょう?」
突然、何を言い出すんだ?
まるで、ペットショップの売りに出されている、仔猫な気分になりますよ?
「うむ、そうだな。ランディ君、さすがに長くワシ達が不在なのは不味かろう。例の品物を届ける時に、来てくれぬか? 大事な話をしたい」
こうして、お茶会が終わった後、チキン○ーメン
を持って、もう一度この屋敷に来る事になった。
◆
◇
◆
そして、深夜……
「マクドバーダ伯爵、チキンラーメ○200食分、持って参りました。伯爵には申し訳ないのですが、1食当たり銅貨1枚になるのですが、如何でしょうか?」
「あなた、これが全部で金貨2枚ですって。安いわね、全て買うわ」
1食当たり、千円相当とぼったくったのに、感謝される件。
こうなったら『伯爵様だから、安く提供しました』って事にしてしまおう。
「それはもう、グランデール伯の名前がでたし、僕自身が、マクドバーダ伯爵とは繋がりを持った方が良いと判断しました」
またしても、唇を奪われそうになったけど、うまく防いだ。
チキンラ○メンの食べ方を何通りか説明した後、本題に入る。
「ランディ君、実は王都で桁違いな規模のパーティが開催される」
伯爵が改めて言うのだから、相当な規模なのだろう。
まさか、王様や王子が忙しくしていた理由はこれだったのか?
だけど、忙しくしていたのは3ヵ月前からだぞ?
「今回はサンジェルマン第2王子様20歳の記念式典なんですが、緊急でサンパウロ第1王子様の25歳の王太子の儀式を1年早めて同時に行う事になったのよ」
ああ、これで王族達が忙しくしている理由が分かった。
ただ、第3王子のロベルトは普通に家庭教師をしているから、関係ないのかも知れないな。
そして大事なのは今まで王子が10代だったことだ。
老けてんなぁ。
「そして、今回は他国からの来賓も、すごいと聞いているのだ。今までは良くて宰相か公爵だったのだが、ベルデタルからは、国王と剣聖のトップ2がやって来るらしい」
それ、僕が原因じゃないよね? 違うよね?
「しかも、ムアミレプ王国からも、国王初の女王が自ら来るって話を聞いたわ」
それも、僕のせいじゃない……はず。
「さらには、アルテシアンナからも、次期国王と称されている大貴族が来ることになっているらしい」
あっ、これは知らない人だ、よかった。
「今回の式典パーティは桁違いと言ったが、招待された貴族の数は計り知れない」
僕、招待されていないんですよね。
貴族のそう言ったしがらみは嫌いだけど、出てくる食べ物には興味があるんだ。
「招待されたのは、公爵、侯爵、伯爵の全貴族。政務からは、宰相、大臣、局長クラスが全て呼ばれているのよ」
なるほど、僕は子爵だから、呼ばれていないのか。
だが、まだこの話は終わらなかった。
「この盛大なパーティには、4つの区画があるんだ。王都の南よりに小さな城があるんだが、そこが会場になる。城の2階が王族、来賓、公爵、宰相が集まる第一区画。城の1階が侯爵、大臣、局長クラス。城の庭園を伯爵級の貴族が集まる第三区画、ワシが招待されているのは、庭園区画なのだ」
あれ? 第四区画まであるんじゃないの?
「ランディ子爵、ここからが今夜招待したキモの。伯爵家は、2名の下位貴族を招待出来る権利があるのよ」
はっ、そうか! 招待された子爵以下の貴族は、庭園の外側でパーティに参加出来るって事か。
「そう、子爵級は1人分、男爵級は2人分の推薦状をもって、第4区画外庭区画に参加出来のだ。既に地方では、王都に向けて招待状が送られていることだろう。ここ王都でも明日が招待状を送る開始日となっている。ワシは2つある権利の1つをランディ君に贈ることに決めた」
「えっ、良いのでしょうか? 他に懇意にしている貴族も多いのでは?」
「ふっ、かまわん。逆に少なすぎる事で、断りやすい貴族もいるし、私と取り引きしたり、繋がりがあるのは男爵家ばかり、子爵家とはうわべの繋がりばかりだ。推薦状の残りをだれにするか迷うほどだ」
「あなた、言い忘れているわよ。ランディ子爵、貴方は伯爵になっても不思議でない貴族なのよ。疎む貴族も多いでしょうが、少なからず上位である今のうちに恩を売ろうと思っている伯爵家がきっといるはず」
えっと、話単体だと分かるのですが、もう既にパーティに参加できるので、話の繋がりが分からないんですが。
「これ、ミリアきちんと説明しなさい。第四区画に参加資格を持った子爵及び男爵は、さらに五家の推薦状を獲得する事で、伯爵家が集まる第三区画に参加する事が出来るのだよ」
なるほど! 僕なら第三区画に入れるかも知れないって事か。
「分かりました。マクドバーダ伯爵、ありがとうございます」
「解ってくれたかしら? 実は伯爵家も、侯爵家の推薦をいくつも戴くと、第二区画に行く事が出来るのよ。今ごろ、他の貴族も浮足立っている事でしょうね。ホホホ」
マクドバーダ伯爵と夫人は、パーティ城に入りたいとかは、思っていないみたいだ。
僕が売ったチ○ンラーメンを食べながら、ためになる話は終った。
ただ、マクドバーダ夫妻の話は完全でない事が、後に判明した。
「お父様、例の招待名簿にはもちろん、ランディの名前をいれたのよね?」
「ああ、いれたぞ。しかし解っていると思うが、私1人では☆四つしか彼には与えられない。彼を中庭に入れるのですら☆が六つ必要なのだぞ」
「大丈夫よ、お父様。彼なら六個の☆くらい集められますわ。中庭さえ入りさえすれば、私が何とか抜け出します」
「なっ!? エリザ、はしたないまねだけはするなよ」
「チッ、お父様冗談ですわ」
(隠れて中庭に行くしかないわね)
「ならば、よい」
(あれは、本気だ。連れていく護衛をボヤンキーに、変えるか。あれは反ランディだからな)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あなた? 今回の式典、招待する侯爵家は決まりました?」
「ああ、決めたぞ。だがお前にも教えることは出来ない」
(ふふふ、軽い気持ちで、ランディを招待してやったわ)
「オヤジィ、ケチケチすんなよ。どこの貴族を記入したんだ?」
(あっ、俺はランディに入れたけどな、後が楽しみだから、言わねえけど)
「サンジェルマン、言葉遣いが悪いぞ。私は税収は少ないが、公正に頑張ってる侯爵家を選んだぞ」
「サンパウロは真面目ね、私は血縁関係の濃い家をえらんだわ」
(1人だけ違う子を、招待しちゃったけど、外庭とはじゃ寂しいものね)
第一王子のサンパウロは、父母、弟の含みある言葉に?マークを浮かべていた。




