【108話】アリサの八武祭
僕の激励に、アリサは唖然としてこっちを見ている。
出した声の通りが良かったみたいで、観客の一部も、こっちを振り向いて見ていた。
この時の、僕には聞こえなかった心の声が、これだ。
(あっ、ランディ!? 見に来てくれたの? うん遠慮なしでやるのね。ハゲ学院長の言葉より、ランディ優先! 私、行きます!!)
(あっ、あんなところにランディがいるぞ。もう帰って来たのか、親父に報告だな)
(あれは、3年前うちのチームに勝った、ランディ・ダーナス!? 隣には一昨年うちのチームに勝ったテスター・バスター!? どうなってんだ)
(おお、ランディじゃないか、それにテスター・バスターまで……寂しく余生をすごしてる俺に、戦いに来てくれたのか? 泣かせるじゃねえか。よし試合なんかどうでもいい、準備運動してこよう)
(クンクンクン、何処か近くでぼっちゃまの匂いがします。下拵えが終わったら、探しに行かなきゃ)
あっ、試合が始まる。
「サウスコート高等学院VSウエストコート高等学院、試合開始!」
サウスコートチームの4人が、魔法を使う予備動作を見せた。
ファイヤーボール8発か……普通なら無理ゲーだよな。
「「「「ファイヤーボール!」」」」
「キャンセル」
ファイヤーボールを放った瞬間に、アリサが2つ魔法をキャンセルした。
「キャンソル」
「キャンスル!」
一瞬遅れて、2人が魔法をキャンセルする。
ウエストコートも、ちゃんと両利きを育ててるじゃないか。
訛ってるけど、ちゃんと2人いる……なっ!?
「キャンセル」
残り2発になったファイヤーボールだが、着弾前にアリサがもう一度、魔法をキャンセルさせた。
『えっ!? ウエストコートチームのアリサ選手、1人で2回魔法をキャンセルしました? しかも両手で? うそっ!?』
おおっ解説者が戸惑ってるよ。
解る、僕だって驚いたもん。
確かに距離があれば、発射直後と着弾前にキャンセルが出来るけど、そんなの机上の空論だ。
アリサ、すげぇ。
「ライトニング」
「キャンセル」
「キャンセル」
『ここで、ウエストコートのお家芸、電撃魔法! サウスコートチーム、キャンセル失敗!』
ほう、ライトニングを出す動作を、読もうとしているな。
解除のタイミングがほぼ合ってる、これなら2回に1回はキャンセル出来るかも。
サウスコートも、研究してるじゃないか。
数発の魔法を撃ち合った後、乱戦に突入した。
魔法合戦は、お互いほとんどキャンセルされたが、ライトニングだけは、僕の読み通り2回に1回は成功していた。
「肉体強化3! ……エクスヒーリング…………キャンセル……エクスヒーリング」
忙しなく動くアリサ。
アリサのすごいところがもうひとつあった。
アリサは、視野が広い。
人のタイミングを計る目を持っていて、あの視野広さ……これでギフトと恵まれた肉体を持っていたら、リッツ教官に襲われていたんじゃないの?
『アリサ選手、すごい、すごい、キャンセル魔法に、回復魔法の連打! 乱戦の中を自由に駆け巡る。まさに戦天使』
誉めすぎな気がするが、凄いのはサウスコートだ。
アリサがあれだけ引っ掻き回して、形勢は五分五分。
サウスコート側のチームワークは、ほぼ完成されている。
何かきっかけがない限り、勝敗が見えない。
「女だ! あの女を狙えっ」
勝負を付けに来たか。
「はぁぁぁぁ肉体強化9!! ヒーリング。 とりゃっ!」
アリサを倒すべく、やって来たサウスコートの1人が、カウンターで返り討ちになる。
『えっ!? 今、肉体強化の9っていいましたか? ……えっ、間違いない? ア、アリサ選手、八武祭の推定記録、肉体強化レベル5を大きく上回りましたぁ!! こ、これは王宮騎士十傑しか出来ない位の難易度です! アリサ選手、身体は持つのでしょうかぁ?』
どっかで、測定器を使ってんのか?
それにしても、アリサの身体はヒーリングでも、危ない反動がくるんじゃないのか?
アリサは直ぐに、行動に出た。
「ヒーリング!」
なっ!? 回復魔法を両手でだと!
あの子、人の子ですか? 巨乳ビッチの娘でした。
母親のレジーナも色々ぶっ飛んでるし、親子だと実感するわ。
『あっ、アリサ選手ぅ、か、回復魔法を使いながら、戦っています。 まさか、肉体強化魔法で壊れた身体を治しながら戦っていると言うのかぁ!』
アリサの闘い方に動揺したのか、サウスコートチームの連携が崩れた。
僅かな綻びでも、ウエストコートチームを優勢にするには充分だった様だ。
「ライトニング!」
「うっキャンセル」
「……キャンセル」
『サウスコートチーム、キャンセル失敗! エビライ選手の電撃魔法が炸裂しました!』
アリサが、この場の主人公だ。
このヒーリングがアリサを再生している10秒間は、彼女の黄金時代だ。
「ヒーリング」
黄金時代の期間延長来ました。
前と変わらず、きっかり9秒後にヒーリングをかけ直した。
「ファイヤーボール」
「ファイヤーボール」
「ファイヤーボール」
「キャンセル」
「キャンソル」
「キャンスル」
『サウスコートの起死回生のファイヤーボールは、全弾キャンセルされました! こ、こんなに強かったのか? ウエストコート学院! 一人一人の動きが素晴らしいです』
「ヒーリング!」
アリサの黄金時代は、さらに延長しました。
「も、持つはずがない!」
「耐えろ! 耐えれば、こいつは魔力の枯渇で倒れる!」
「おおっ!」
「ああ、耐え抜いてやる!」
アリサの魔力総量は、どのくらいだっけ?
僕ほどじゃないけど、学院では飛び抜けていた筈だよな。
あのまま成長してれば、少なく見積もっても、魔力総量1500はあるだろう。
なら、グランヒーリングを連発しない限り、魔力の枯渇はしばらくない。
……
…………
うん、もうすぐウエストコートが勝つだろう。
こっから、形勢を逆転させるには、無理がある。
『脱落者は、サウスコートチームが4人に、ウエストコートチームが1人。それでも諦めないで闘う勇姿は、まさしく前年度覇者! そして過去10年間で一番多く、勝利をもぎ取った学院です。動きに乱れがありません!』
残念だけど、僅かに乱れてるんだな……
じゃなきゃ、アリサが大活躍しても、圧勝にはならない。
まあ、そのアリサが相手チームを狂わせたんだけどな。
そして、決着がついた。
『勝者、ウエストコート高等学院! 2年ぶりの、優勝です。サウスコート一強の時代は終わりを迎えましたぁぁぁ!!』
興奮冷めやらぬ会場で、不穏な動きを見つけた。
そのうちの1人がやって来て、僕に話しかける。
「ランディ・ライトグラム男爵、大人しく捕まって貰おうか、貴様に拒否権はない」
あれぇ?
ここで、神罰転生クイズ!
さて、冒頭部分5人の心の声、いったい誰だったんでしょうか。
3人目だけは3択形式です。
サウスコートの5年生
テスターバスターの後輩
ウエストコートの4年生
五問正解……神罰転生マスター
四問正解……感動、超お得意読者様
三問正解……凄い、お得意読者様
二問正解……読者様、しっかり読んでくれて感謝
一問正解……今後も神罰転生をお願いします
零門正解……すみません、もう1度はじめから読んで貰っても良いでしょうか?




