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【103話】アルテシアンナ⑫

長かった? アルテシアンナ編も今回で終りです。



 ユーロガッポ軍は、ドルデルガー配下のシド隊長率いる部隊に、大苦戦を強いられていた。


 そして、楽勝と思われた戦が、予想外の被害を出してしまった事から、規律が大きく乱れる事になる


 1度目の砦内での乱戦で、捕虜になった数名は、ランディの申し出により、傭兵に限り解放されていた。


 解放された傭兵達はその直前、ランディとある話をしていた。






 そして、2度目の総力戦が終わったその夜、混乱に乗じて戻ることが出来た傭兵が、他の傭兵たちといっしょに鍋をつついていた。



「おいビルズ、よく賊の集団から逃げられたな」


「……」


「おい、ビルズ、おい! どうした?」


 夜営している傭兵ばかりのいる場所で、そのビルズは漸く喋りだした。


「あいつ等は、賊なんか……野盗なんがじゃねえ」



「なにっ!? ビルズ、どういう事だ?」


「よく考えて見ろ。あんなに統率のとれた集団が野盗なんかの筈がねぇ。相手の殆どがギフト持ち、武器、食料はふんだんにありやがるし、礼儀や品格まである。そして俺を勧誘しやがった」


「……」

「……」

「……じゃあ、あいつ等は貴族の名を騙る野盗じゃなくて、本物の貴族直轄の兵だってことか?」

「バカな! 俺等はユーロガッポ公爵に騙されたって事なのかよっ」

「ビルズ、勧誘されたってことは、向こうがどんな貴族か知ってるんだろ?」



「ああ、王位継承権第三位のドルデルガー公爵だ。俺はダメ元でここを抜け出して、ドルデルガー領に行く」



 そう言って、ビルズと呼ばれた男は大銀貨を出す。



「ドルデルガーって言ったら、最近一番活気のある領地の領主だろ? オレぁ家族もいないし、ドルデルガー領に行きてぇな」


「だけどよぉ、ドルデルガー領の刻印の入った銀貨なんて、ドルデルガー領で働けば、簡単に手にはいるぞ」


「でも待てよ、野盗ごときが簡単に大銀貨なんて渡すものか。 ならば本物の貴族なのか?」


「だがよ、大銀貨を持っていたからって、どうなるんだよ?」


 ビルズは答える。


「この大銀貨を持って、ドルデルガー領に行けば『傭兵や農夫に限り人数無制限で職を斡旋してくれる』と、貴族の少年が言っていた。それにあいつ等は化け物の集団だ。戦って勝てるなんて、全く思えないぜ」


 ビルズは、ランディの回復場面、弓矢が何度もすり抜ける場面、テスター・バスターが無双する場面を間近で見ていたのだ。



「だから俺は今夜、抜け出す。お前等はどうする? ちなみに、ドルデルガー公爵の戦力は殆ど減っていなかったぞ」




「なっ!?」

「まさか……」

「ゴクリ」

「オレぁ、死にたくねぇ」

「……俺もだ」


 ……

 …………


 翌朝、6割を超える傭兵がこの戦場から、姿を消した。




 ◇◆◇◆◇



 視界に映る敵兵の数が少なく感じるってか、かなり少ない。



 数人の傭兵に、そうなるように仕組んだけど、期待値の5倍以上だぞ。


 どうなってる? まさか一部は伏兵として待機してるんじゃ。


 油断しない様に戦おう。




 戦局を見るため、見晴らしの良い場所で監視していると、だれかの声が聞こえた。


「昨日の戦で、暗闇になる煙を見たか?」


「ああ、見た。 何だったんだろうな」


「噂じゃ、ドルデルガー様かランディ男爵殿の秘密兵器って話だ。 出回っていない遺跡の産物らしく、調べようとすると首が飛ぶってよ」


 たった1日で、恐ろしい噂になってるのですが?


「だけど、おれならこの暗闇を利用してファイヤーボールを使えば、キャンセルがうまく出来ないと思うんだよ」


「魔法使いは、固まらずに点在してるんじゃないのか? うまく行くのかよ」



 ガーン!! ダークネスを掛けた後に、攻撃魔法だと!? なんてあくどいんだ。

 こいつ、悪魔の子か?


 だが、今は戦時中……有りって言ったら、有りだよな。


 それに、毎回砦内に引き込んでの袋叩きも、芸はないし、流石に対応されているはず。



 僕は、シドさんに頼んで、魔法使いを全員塀の上に配置してもらった。

 勿論、彼らには一時間限定の飛び道具無効の呪文を掛けました。



 後は、魔法使いがいると思われし場所に『ダークネス』をぶち込む。


 盾の密度が多い場所を疑って、3発の『ダークネス』を使った。


 どの程度効果があったか判らないが、味方のファイヤーボールの連発に、敵方のキャンセルは6割方しか防げていない。


 これなら、圧勝だ。


 現に、暗闇から命辛々脱出した敵兵は、一目散に消えていった。


 『ライト』の呪文は使いきったから、今日に限り、同じ手段は使えないが、敵も同じ戦い方を仕掛け直す兵力は残ってない。


 それでも300人もの兵がいるけど、どうするのかな。


 僕だったら、一点突破で行くんだけど……



 ~~~~

 だが、ランディは気づかない。

 敵軍の士気が、がた落ちしていて、300人程度では、攻略の糸口すら見えていない事に。

 ランディの使った『ダークネス』が、遺跡のアイテムだと勘違いされ、貴族の名を騙った野盗が、そんな物を持っている筈がないと。

 ユーロガッポ軍から見て、殆どの兵がギフト持ちに見えた事。

 そんな事が成しえるのは、ユーロガッポ公爵に並ぶほどの大貴族しか、思い至らない。

 知らなかった事とはいえ、大貴族に戦をしかけてしまったのだから。

 既にユーロガッポ軍の兵の大半は、保身しか頭にない状態だった。

 結果…………

 ユーロガッポ公爵に不信感を持った兵で、身辺の軽い者達は逃げ出してしまった。


 ~~~~



 300人もいるからと、警戒して様子を見ていたら、また兵がいなくなった。


「敵は、恐れをなして逃げ出したみたいだな」


 大きな盾から、覗くようにして敵を観察するシドさん。


 それでも、残りの兵力はこちらの2,5倍くらいある。



 しかし、もう攻城戦の定石である3倍以上の兵力は割ってしまった。



 それでも、相手は戦法を変えていないから、兵を5分割して、此方を砦から逃がさないように陣取ってる。


 この日、相手はこれ以上攻めて来なかった。



 ドルデルガーさんを交えた協議の結果、敵は援軍を呼びに行ったと仮定する事になり、新たな作戦を考えている。



 結果……こちらは部隊を、大きく2つに分けた。


 そして遊撃隊を編成する。

 そのメンバーは僕、ダナム、テスター、シド部隊で最も強い2人の6人編成だ。


 大きな部隊で敵を引き付け、遊撃隊で嫌がらせをする。

最も強い6人に『ストライキング』や『ゴッドブレス』等の補助呪文で強化して圧倒する。


 それを1日に6回、夜中まで嫌がらせをし続ける。

 呪文の再取得が出来ないデメリットがあるが、相手の心身が疲弊してくると思うと、すごく頑張れる。


 嫌がらせ攻撃を仕掛けてから、2日目の夜。


 敵は1ヶ所に集まってから、撤退していった。



 ◇◆◇◆◇



 あの、厳しい戦いから半月が経過した。


 そして、アルテシアンナを発つ日が来た。

見送りの人数は驚くほど少ないが、ドルデルガーさんやライム姉ちゃん等仲良くなった人は全員いる。



「ランディ君、君が来てくれて良かった」


「そうね、何度も助けられただけでなく、夫が『国王になるために、努力をする』とまで言ってくれたのも、ランディのお陰よ」


 ライム姉ちゃんに、ギュッと抱き締められた。

 背丈がそこそこあるライム姉ちゃんに、抱き締められると、発展途中の僕の頬に巨乳がぶつかる。


 別に欲情とかはしないけど、とっても心地いい。


 あれだけ調子に乗ったのに、この2人は変わらず接してくれる。


 実はあの戦の後、大半の人達が僕を怖れるようになってしまった。


 まだ、初級のクレリック呪文しか使ってないんだけどな。


 まあ、初級とは言え、あれだけバカスカ呪文を連発出来るクレリックは、そうそう居ないだろう。



「ランディ君、アルカディアは国王が絶対の権力を持つ国家ではない事は知っている。君の能力を疎ましく感じて、迫害される可能性もある。そんな時は私を頼りなさい。私は次期国王になれるよう、本気で努力しよう」



 ああ、なんていい人なんだろう。

 でも、ウィルソン王も好きなんだよなぁ。

 バカ王子も、面白いし。


「まあ、そんな事はないと思いますが、何かあった時は頼らせてもらいます。って既に米と料理人を融通してもらってるし、感謝感謝ですよ」


「ははっ、我が領地での輸入出は、これから立ち上げるであろう、君の商会と独占契約をしよう。国が2つも間に入っているのはもどかしいな。ではランディ・ライトグラム男爵、次に会うときは、御互い胸を張って会える事を願う」


 ドルデルガーさんと固い握手を交わして、出発した。


 さて、帰りは馬車1台と身軽だから、早く帰れそうだな。


 馬の『ロシ』『アン』『サト』も一回り大きくなって逞しく育ったしね。


 ロイエン、クラリス、みんな……もうすぐ帰るからね……たくさんお土産があるんだから、グフフフフフ。


補則、ランディのダークネス成功率。

一発目、大当たり(魔法使い2人)

二発目、ハズレ(魔法使い0人、司令官1人)

三発目、当たり(魔法使い1人)


ランディが残した足跡。

『塩害と告知』『アイスプラント提供』『抗塩ジャガイモ提供』『神器、4種秘薬提供』『塩トマト提供』『王宮騎士及び王族特務隊、化物認定』『地竜生息地域の安全地帯確保及び塩害薄れる』『岩塩採掘場所入手』『雑草カヤツリグサから紙の原料及び健康食品の流通基盤を確保』『大貴族デフォルメカード、販売』『ユーロガッポ軍の奇襲を退ける』『傭兵、農夫の雇用拡大』『ユーロガッポ公爵の失脚』



ランディ「こうして振り替えると……やり過ぎたか?」


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