【101話】アルテシアンナ⑩
遅れましたm(。_。)m
ユーロガッポ公爵の私兵や傭兵で構成されているドルイズ軍は、思いもよらない苦戦を強いられていた。
「ドルイズ様、やはり敵は『竜神の愛』の所持者を多数抱えているようです」
「おのれぇドルデルガー! 私兵を増やすことより、ギフト持ちを充実させるとはっ」
公爵の地位を持つドルデルガーは、その爵位に比べて私兵が少ない。
兵の殆どを『軍部』が管理している、アルテシアンナであっても少ないと言えよう。
悪い意味で、国政に従うドルデルガーは、馬鹿正直な男だった。
ユーロガッポ公爵の私兵も『竜神の加護』持ちは幾人か有してるが『竜神の愛』を有するギフト持ちは1人しかいない。
総指揮官のドルイズと4人の指揮官は、マジックストーンの攻撃を『竜神の愛』のギフトを持つ兵が、肉体強化魔法を使って、投石攻撃をしているものと思い込んでいた。
「しかも、こちらの動きを予想していたのか、毒殺は完全に失敗した上、食料と弓矢を充分に用意していた様です」
「しかも、敵の弓兵もかなり優秀と見えます。この3日間で、回復が間に合わず、5名の兵が死亡ましした」
ドルイズの身体消耗作戦は完全に裏目に出ていて、ドルデルガー達を毒の影響から回復させ、物資の自給し、戦闘訓練を済ませるまでに至った。
さらに、私兵には攻撃魔法使いが少ない事から、砦攻略を難しいものにしていた。
「ならば、仕方ない。明朝、部隊を10個に分け、半数を見張り、残りの半数を攻撃にあてる。そして兵の疲労を見て、役割を入れ換える。ただこの事を知るのは、お前たち5人しかいない。お前たちは休めないが、やってくれるな?」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
……
…………
明朝…………
「射て、射てぇぇぇ!!」
ドルイズ軍の本格的な攻撃に、ドルデルガー配下のシド部隊は、意外にも押し返していた。
なにせ、シド部隊にいる十数人は遠距離攻撃がまるで通用しないのだから。
「何故だ! 何故当たらない? お前ら! いつも通りに狙えっ!!」
「はいっ……ゴパッ」
偶然、マジックストーンが兵の胸部に当たり、絶命する。
「いくら、急所だからって、石で即死はないだろ? どうなってやがんだ」
梯子も掛けては、壊されるか外されるかで、砦攻略が一向に進まない。
今回は梯子を使った侵入作戦に、4部隊を投入しているが、どの部隊も、作戦は成功していない。
そして、残りの1部隊が、大きな丸太を攻城兵器にして、大門に向かって突撃していた。
そう、この4部隊の大攻勢も、門を破壊するための囮だったのだ。
丸太を攻城兵器にして、特攻を始めた。
その、勢いはたとえ頑丈な門であっても、数回しかもたない……そう確信できるほどの大きさと速度だった。
「行けぇ! これで貴族の名を騙る悪党共も、終わりだ!!」
この日の戦いは、開始から、たった2時間足らずで本格化していった。
◆◇◆◇◆
攻城兵器が勢いよく突っ込んでくる。
もちろん、9割方予想通りの展開だ。
「ダナム、丸太の長さは!」
対飛び道具呪文を施した、ダナムの合図を待つ。
「……問題なし! …………5! 4! 3! 2! 1! 開門!!」
ダナムの叫び声と同時に門を開けて、丸太ごと敵を引きずり込む。
勢いが付いてた上に、仕掛けてあったロープを巻き付けて完全に丸太を砦内に収める。
「閉門!!」
攻城兵器部隊の七割を砦内に入れてしまったが、初回は豪華特典『落とし穴』が待っている。
勢いに釣られて、落とし穴に20人程度落ちていく。
これでも砦内で戦える敵は、こちらの待ち受けてる部隊とほぼ同数。
もう兵の温存はなしだ。
「射てぇぇぇ!!」
シドさんの号令で、敵兵に弓矢とマジックストーンが降り注ぐ。
「ぐあぁぁぁぁ!」
「ぎゃっ!」
「くそっ、突っ込め! 乱戦に持ち込んで、弓を使わせるなっ!!」
「なんで野盗が、こんなに統率がとれてんだよっ。話が違うぜ」
乱戦になった。
味方が負傷するのを確認して、直ぐ様、回復魔法を使う。
「下がって、エクスヒーリング………………よし、GO!」
続いてもう1人。
「下がって、エクスヒーリング………………はい、GO!」
と戦場に送り出す。
しかしエクスヒーリングは完了までに、時間がかかる。
負傷者の出没頻度に追い付かなくなってきた。
「第1レベル呪文……ライトヒール。次、グランヒーリング!…………。第1レベル呪文……ライトヒール」
一瞬で回復できる呪文は、5秒に1回と言った縛りがあるから、間に回復魔法を入れる。
この『回復呪文、回復魔法、回復呪文』のコンボは、我ながら反則技だと感じてしまう。
「あの、後ろにチョロチョロしてる小僧を殺れ!!」
正確な状況判断ができそうな誰かが、僕を殺ってしまえと叫んでる。
その声に素早く反応したのは2人。
1人は、テスターに遮れて、もう1人は僕のマジックストーンを腹で受けとめた。
「ぐぼあっ!」
腹じゃ死にはしないけど、2分は戦闘不能ですね。
今回の僕は脇役なんで、とどめは誰かに刺して貰いなさい。
若干有利な状況で進んでいたこの局面も、20分と経たずに、圧倒的な展開になり、敵を押し込んでいた。
退路が無いことから、死に物狂いで来るかもと思ったけど『降伏せよ! 一般兵や傭兵ならば、命は取らない』とシドさんの一声に、投降兵が殺到した。
と言っても、十数人しかいなかったけど。
降伏を良しとしないで、塀に登って逃げようとした奴も、ダナムに見つかり叩き落とされた。
1人『最後の一兵まで戦え!!』と言っていた煩い人は、こっそり近寄って気絶してもらった。
◇◆◇◆◇
「ランディくん、砦内の戦を見学させて貰ったが、こんな圧倒的な戦いを見たのは、初めてだよ」
いったん引いた敵軍の合間に、シドと僕は時間差で呼ばれた。
今シドさんは、自分の部隊のチェックをしていると思う。
「いえ、依然として圧倒的不利な状況は変わっていません。敵の消極的な戦いが、こちらに良いように働いているだけです」
「謙遜なさらなくて良いのよ。このような人材を派遣してくれて感謝しますわ、お父様。して、今まで私は、貴方の事を『お父様が自慢する文官』だと思っていたのですが、違ったのですね。アルテリオンが来た事を失念していました。アルテリオンと同じく『爵位』は仮の姿で、特務隊の幹部だったのですね……因みにコードネームは?」
ライム姉ちゃんがやたらと興奮してる。
僕は幹部じゃないんだけど、アルテリオンや雷撃のガルは、僕にコードネームで話しかける事があったな、たぶん冗談半分だと思うけど、それを使う。
「たしか、ダークロッドって言われてましたけど、幹部じゃないですよ? ところで、生け捕りにした人は、応急措置をして紳士的な対応で帰してあげましょう。ただし下っ端に限ります。あと傭兵を雇い直したいと思うかもしれませんが、それはしないように」
「ランディ君の言いたいことは、何となく解るのだが、聞いてもいいかな?」
ドルデルガーさんが頷きながら聞いてきた。
「はい、今回は油断のできない戦の最中です。人員は欲しいのですが、この場合『優秀な敵』より『馬鹿な味方』の方が脅威になります」
「なるほど、ランディ君が戦にも精通しているのが、よく解った」
「ドルデルガーさんが感心するほど、戦には詳しくないですから」
只の体験談ですよ。
すると、1人の伝令役が飛び込んできた。
「敵が再編成をして、先の戦法と同じ様にして攻めてきました!!」
まあ、休ませてくれる訳ないよね。
僕なら同様の戦法で攻めてみて、肝心な戦局でガラリと戦い方を変えるけど。
敵だって無能じゃない。
僕は、捕虜になってる敵兵のいる場所に走っていった。
人間の耐久度について……
ここの世界は、当然のように地球の人間より強い設定になっています。
原因は『闘気』
鹿鳴館の描く世界では、肉体の内側に宿り、強靭な身体になっています。
で、肉体強度ランキング!
を五段階評価しました。
⑤位、科学が発展しすぎた地球
④位、今の地球
③位、ランディが転生した世界、リリスが生まれた世界
②位、テンプレ異世界、カミーラやランディ達が生まれた世界
①位、不明




