【100話】アルテシアンナ⑨
僕は、クレリック呪文の『マジックストーン』で、攻撃用の石と『クリエイトアイテム』で、大量の矢を召喚していた。
オーバーテクノロジーにならないよう気を使って、木製の矢を出した筈なんだけど、例の荷馬車から5000本の矢を出しちゃったんで、荷馬車が遺跡の産物と間違われてしまって、気を使った意味がない。
そう言えばマジックストーンも、たかだか第1レベルの呪文なんだけど、この世界では『凄いアイテム』扱いになってしまった。
もう、遺跡のアイテムって事にしておこう。
マジックストーンも、腕力がイマイチな人に投げさせて、木製の盾を半壊させた事で、これが有効だと納得してくれた。
……
…………
毒を盛られた日から3日が経過した朝、敵は遂に動き出した。
ただ、こちらの様子を窺い、嫌がらせをする程度の動きだった。
大きな盾を持った20人に対して、弓を持った兵が4人。
それが、砦の四方に展開して、100人弱で攻めてきた。
こちらは『プロテクションノーマルミサイルLVⅡ』を掛けた兵が8人と木製盾に金属を張り付けた盾を持たせた補助要員が8人。
残りの大半は、休んでもらっている。
そう、向こうの24人に対して、こちらは4人で立ち向かう。
伝令係も僕を入れて5人。
別に敵を舐めている訳じゃなく、敵の大攻勢に備えてるだけなんです。
マジックストーンを投げさせる兵には、竜神の加護持ちを起用し、弓を射らせる兵には、人神の加護持ちを起用した。
これにより、マジックストーンの飛距離を伸ばし、弓は正確に連射が出来る。
まず、こちらが弓の射程圏内に入った。
「弓隊、打て!!」
弓隊と言っても、1ヶ所に1人しか居ないんだけど、言ってみたかったの。
戦は、こちらの攻撃から始まったが、相手は圧倒的多数なうえ、防御主体の様子見で来ているから、被害は与えられていない。
じりじりと詰めより、弓の攻撃がこちらにも降りかかってきた。
緩い……射程ギリギリとは言え、手で掴めてしまう。
『プロテクションノーマルミサイル』を掛けた味方には、この2日間でみっちりしごいたから、矢の攻撃に臆する事なく反撃している。
敵の放つ矢も、威力が少しずつ上がってきている。
距離が近くなってきている。
「マジックストーン隊、攻撃!!」
マジックストーンの攻撃は、相手を動揺させることに成功した。
途中、攻撃魔法のファイヤーボールが襲ってきたが、盾隊が余裕をもってキャンセル出来た。
攻撃魔法は、距離があればあるほど魔力を消費する。
大軍でたたみ掛けるなら、攻撃魔法使いの数を増やさないと攻略出来ない。
まさか、こちらの疲労を促すためだけの攻撃だったら……
程なくして、敵は下がっていった。
「被害を報告しろ!」
この100人足らずの兵を束ねる、司令官のシドさんが、状況の確認をしている。
「はっ、東側被害はなし!」
「はっ、北側も被害なし」
「こちら南側、ファイヤーボール1発、大門に被弾。損耗は皆無です」
「西側に被害はありません!!」
「解った、それぞれ一時休憩しろ。まだ1日は長いのだからな。ランディ殿、良い形で緒戦を迎えましたが、依然として我が部隊は不利と言えましょう」
そうなんだよな、こちらの強みは防御壁と物資が豊富にあることだけなんだよな。
兵の数が圧倒的に足りない。
そのうち、ガチで戦う場面に、どう足掻いても突入するだろう。
それまで、どれだけ頑張れるか……
50人程度ならば、僕とダナム、テスターの3人で何とかなるのに。
今日1日、敵は4度にわたり襲ってきたが、全て押し返した。
今日もたくさんの弓とマジックストーンを召喚したし、明日から呪文の比重を、回復呪文や防御呪文に重点にして覚えよう。
……
…………
僕は、シドさんとドルデルガーさん達とで、夕飯を食べている。
「ランディ君、君がいて本当に助かった。ランディ君の『この程度の敵ならば、退けられる』と思える程の態度には、兵も勇気づけられている」
「ドルデルガーさんありがとうございます。まあ、本当に恐いのは、これからなんですが」
「それは皆も解っているだろう。時にシドよ、私とランディ君は、既にこういった間柄なのだ。気にしないでくれ」
客人とは言え、年端もいかない男爵が、自分の雇い主である公爵に堂々と話し、意見を出しているのだから、僕の態度に顔をしかめる者も多い。
だけど、圧倒的に不利な戦いの最中だから、素の僕で行かせて貰いますよ。
「しかし、ランディ男爵殿、そなたの新魔法があれば、攻砦戦の常識が変わりますぞ? しかもあの防御魔法は無敵ではないか」
指揮官のシドさんは、マジックストーンやプロテクションノーマルミサイルをべた褒めしている。
「残念ですが、マジックストーンの有効期間は5日ですし、プロテクションノーマルミサイルもLVⅠは1時間です。上位呪、上位魔法のLVⅡなら24時間の効果はありますが、10数人が限界です」
僕の特殊魔法と言っている呪文が、対軍隊戦では、効果が薄い事を説明した。
久しぶりに、時間に余裕が出来たので、散歩をすることにした。
「第3レベル呪文……ハイディングミネラル」
門のない壁をすり抜け、敵陣の様子を窺う。
しかし、夜であっても敵軍の監視は厳しく、ちらりと様子を見るだけで終わってしまった。
全力を出して見つかったら『要注意人物発見』と噂されて、全軍突撃なんてされたらたまったもんじゃない。
だけど収穫はあった。
敵は大掛かりな攻城兵器を持っていなかった。
あるのは、長梯子と弓矢くらいだった。
……
…………
翌日も、敵軍は同様の戦い方で攻めてきた。
だが、こちらは違う。
相手が様子見で、こちらの消耗を誘うのなら、乗ってやろうじゃないか。
本日3度めの戦いで、2人はやられたふりを、3人には疲れて交代したふりをさせた。
これが、攻を奏したか判らないが、3日目も4日目も、同じ戦法で戦ってきた。
そして5日目の朝、敵軍は100人を超える部隊を4部隊投入して、一斉攻撃を仕掛けてきた。
本当の戦が、これから始まる。




