【98話】アルテシアンナ⑦
僕は、アルテシアンナでのラストイベントに参加している。
今、王都に滞在していて、三十家以上の上級貴族が集まっている。
ここの貴族って、アルカディアと違って公爵と言えども広大な土地は管理していない。
アルカディアは国を8分割して、それぞれの公爵家の名前を領地にして、土地の大きさに応じて、侯爵、伯爵、子爵に分け与えてるんだけど、アルテシアンナは直轄地のみで運営しているし、私兵も少ない。
そして王都に、公爵と侯爵の貴族が集められていた。
明日は王位継承権の新順位が発表されるんだ。
例年だと順位は殆ど変動しないが、今年は塩害大凶作が、いくつかの領地で発生したから、順位の変動が見られるだろう、と予想されている。
あと、公爵家デフォルメカードは、一部の貴族から名を売る行為に繋がると強い指摘を受けて、王位継承権二十位まで作ることになった。
更に、購入するまで絵を非表示にして販売し、購買意欲を持たせる案も勝手に出来上がり、スーパーレアとなる、国王カードまで出す様になった。
……
…………
そして翌日。
遠目から王位継承権の発表を聞いている。
国王が高台に上り、上質な羊皮紙を見ながら大きな声で話す。
「王位継承権第一位、ユーロガッポ公。そなたの領地は色々と大変じゃったろうが、よくぞこれだけの税を集めたな。よく持ちこたえたの」
「はっ、ありがたき幸せ!」
「王位継承権第二位、エンカム公。そなたは、いち速く不作に対応した、かの領地に投資と輸送路の整備に貢献したと聞く。流石は兄上の孫じゃな」
「はっ、ありがたき幸せ!」
隣にいるライム姉ちゃんは、ここまでは順位は変わらずだと、僕に説明してくれた。
「王位継承権第三位、ドルデルガー公」
この場がどよめきで、少しうるさい。
「静粛に! 王の言を妨げるなっ!」
「ドルデルガー公、そなたは突如発生した、不作の原因を『塩害』と突き止め、塩害対策を行いながら作物を作るという。稀に見る快挙を成し遂げたうえ、納めた税も素晴らしい物だった。そなたの名は改めて国中に轟いただろう」
「はっ、ありがたき幸せ!!」
隣でライム姉ちゃんが、めっちゃ喜んでます。
内々に王位継承権が上がると言われていたのにね。
「王位継承権第四位、フランクルン公。………………………………」
「はっ、ありがたき幸せ!」
こっから先は殆ど聞いていなかった。
第五位に、ゼニクルーガー公爵。
第六位に、ギルダエルダ公爵。
第七位に、ペソヤーマ公爵。
第八位に、ポンドフィバー公爵。
第九位に、ルピーゲッツ公爵。
第十位に、ウォンタマル公爵。
十一位以降は、ライム姉ちゃんも忘れたと言う。
まったく、ライム姉ちゃんは公爵夫人なのに、しっかりして欲しいものだ。
ライム姉ちゃんは終始、喜びはしゃいでたけど、僕はそんな気になれなかった。
そう、ユーロガッポ公爵の鈍く光る瞳のせいで……
◇◆◇◆◇
王都から離れ5日ほど経過して、今回は食糧の補給も兼ねて、砦に宿泊する事になった。
この砦は高さ五メートル程度の石壁で囲われていて、大門が1つと小さい扉が2つあって、内部は石造りの屋敷になっていた。
何故かこの砦を見て不安になる。
守るには適した建物なのに、どうしてなんだろう。
砦の中で出迎えてくれた人たちは、思ったより少なかったけど、公爵滞在の為人を増やしたと言う。
どうやら、普段機能している砦ではなく、10人弱で管理維持をしている建物だった。
道中にしては、美味しい食事をして一晩過ごす。
ここアルテシアンナは、アルカディアと違って調味料が豊富だ。
中級以上(子爵、伯爵)貴族が食べるような物がポンポン出てくる。
僕だって高等学院に入学する前は、固いパンに固い肉ばっかりだ。
後は、渋い木の実か、苦い木の実くらいなもんだ。
朝食も、いい香りのする食事が出てきた。
むしろ、夕飯より香りの強いメニューが出てきた。
チリチリする違和感が気になるが、呪文を戦闘系に偏らせたから、問題はないはず……
うん、美味い。
だがなんで朝から濃いめの味付けを?
疑問に思った瞬間、目の前で何人かが嘔吐した。
まずい……
「みんな食べるなっ! 毒だ!! うっ」
不味い、猛毒だ。
僕はこの程度の毒じゃ簡単に死なないが、摂取量が多ければ普通に死ぬ。
「第3レベル呪文……ライトキュア。……ふう」
慌てて、周囲を見る。
不味い、ドルデルガーさんとライム姉ちゃんが泡を吹いてる。
なんてこった、今日に限って『ライトキュア』はほとんど覚えていない……裏目に出た。
「側近! 毒の特定をしろっ! 急げ!! 公爵は僕が治す」
言葉遣いを気にしてる場合じゃない。
テーブルを踏み台にして、一気に2人のもとに向かう。
「ニュートラライズポイズン。 ニュートラライズポイズン」
2人は僅か数秒で回復する。
「えっ、治った?」
「ハァハァ、ラ、ランディ君、今の魔法は?」
「少し待って。おい、毒の特定は出来た?」
側近は焦りながら、首を横に振る。
そうだよな、まだ症状を見てから10秒も経っていないもんな。
「すまん、僕が悪かった。解毒魔法使いを集めて。それまでに僕が処置する」
僕は手近にいる3人を使って調べる事にする。
だが、1人は食べ過ぎたせいか、免疫力が乏しいせいかは判らないが、危篤状態だった。
「よし、ニュートラライズポイズン。デトックスE。デトックスF」
様子を見ていると、デトックスEを掛けてあげた人の状態は良くなってきた。
ニュートラライズポイズンを使ってあげた人は、元気になった。
もう1人は変わらない。
結果、毒の種類で予想出来るのは、Eデトックスで解毒可能な毒と別の毒の混在だ。
だけど、デトックスEで解毒すれば、一命は取り留められる。
「おい、デトックスEは使えるか?」
「はい、使えます」
「私も使えます」
さすがはドルデルガーさんのお抱え治療士だ。
猛毒系の回復魔法を2人も覚えている。
ならば僕は、護衛兵士達が沢山いる食堂に移動しよう。
「この解毒は『E』と何かだ! 後は頼む!」
返事を待たずに、この場を飛び出した。
……
…………
食堂は悲惨な状態だった。
がっついて沢山食べて、より多くの毒を摂取したんだろう。
だが、なまじ体力があるだけに、なかなか死ねずに長く苦しむ事になる。
時間が惜しい、あれこれ考えてないで、今すぐ解毒だ。
「ニュートラライズポイズン。 ニュートラライズポイズン。デトックスE。ニュートラライズポイズン。ニュートラライズポイズン。 ………………ふぅ ニュートラライズ」
「ランディ男爵、止めてくださいっ! これ以上魔法を使ったら、たとえギフト持ちでも気絶してしまいます」
「大丈夫、この場で気絶するほど愚かじゃない。ニュートラライズポイズン、さっあと4人だ」
あらかた解毒して、移動しようとしたら目眩が襲ってきて、元気な人にもたれ掛かった。
「男爵殿!!」
「男爵さん」
「ランディ男爵!」
「もう、これ以上無理しないで下さい! ランディ男爵のお陰で、殆どの者が死なずに済みました」
やはり40人近くの解毒には、無理があったか。
節約して、デトックスEにすれば良かったかな?
だけど死にかけの人に、完全解毒を掛けないのはちょっとな。
僕は支えてくれた人を振り払い、解毒作業を続ける。
「第3レベル呪文……ライトキュア。 ニュートラライズポイズン。 第4レベル呪文……シリアスキュア。 すぅ……ニュートラライズポイズン!」
ここら辺が、魔力総量の限界だろう。
小さいうちから、魔力を限界まで使ってたから何となく判る。
だけど、ここまで倦怠感が襲うとは、ギリギリだったか?
僕の魔力総量の減り具合を確認していると、食事抜きで見張りをしていた兵士が飛び込んできた。
外が、外が正体不明の軍隊に囲まれてるぞっ!
って、何があった!
見張りの兵は、毒で混乱しているこっちを見て、大混乱だった。
正体不明の軍隊……そう聞いてある男の顔が浮かんだ。
9月3日追記、
ある、町での出来事。
「ドルデルガー公爵キターー!!」
「いいなぁ、ドルデルガー様は王位継承権第三位だけど、次期国王かもしれないんだろ? 俺のルピーゲッツ様のカードとポンドフィバー様カード2枚と交換してくれ」
「やだ」
「なら、俺は王位継承権第1位のユーロガッポ公爵と二位のエンカム公爵と交換してくれ、これなら」いいだろ?」
「ふうん、本音は?」
「実はユーロガッポ公爵は王位継承権を剥奪されるって話で……あっ」
「ぶぶーー!! こっから先はネタバレです」




