【94話】アルテシアンナ王国④
「第5レベル呪文……クリエイトフードフリー」
僕が大きな荷馬車の中で出した食材は『ソルトリーフ』別名『アイスプラント』だ。
僕のクリエイトフードフリーは、食べた料理をそのまま再現するだけでなく、食材を遡って再現する事が出来る。
野菜や果物ならば、種まで遡れた。
肉は、熟成前のカット肉までが限界だったけどね。
僕の予想で、収穫1ヶ月前程度の状態をイメージした。
結果思った以上のアイスプラントが召喚された。
もう一度クリエイトフードフリーを使ってから、ドルデルガーさんが用意した馬車に載せ替えて、出発した。
「しかし、この葉っぱが、土壌を復活させる植物なのか?」
土壌復活作戦を視察に来たドルデルガー公爵が不思議そうに聞いてくる。
「それよりもおやつとして、美味しく食べられる野菜です」
「植えてから3週間後に、また来てください。これから暫く植え続けますよ。さいわい気候も良いし、治水がしっかりしてるから水捌けの良い土地がたくさんあります。クックックッ楽しみだ」
「ランディ殿? どうしても貴方を私より歳上に感じるのだが」
まあ、間違っていませんね。
「まあ、こんな見た目なんで、13歳って事になってます」
ドルデルガーさんが気に入ったから、ここまで言いました。
逆に、この人ならば……
「なるほど……深い事情があるのだな、解った。見た目と中身の違和感について、詮索はしまい。だが、私はランディ殿を子供扱いはせぬぞ」
ほらね。
◇◆◇◆◇
このまま2週間ほど、アイスプラントの苗を植え続けた。
ついでに、塩分を葉っぱに貯めることが出来る品種のジャガイモも植えてみた。
ジャガイモは約3ヶ月後の収穫だけど、メインは塩分の除去だから深く考えないでおく。
久しぶりに暇なんで、ダナム達を探すことにした。
まあ、ダナムとテスターはあっさりと見つかった。
ドルデルガー邸内に併設されている、訓練施設で遊んでいた。
そう言えば、ドルデルガーさんに注意されたっけ。
『ここの、訓練場は治外法権にしてあって、私ですら足を踏み入れたら、筋肉痛で寝込むくらい強制的にしごかれる場所だ。命の保証以外は出来ないから間違っても入らないでくれ』
って言ってたけど、当然乱入する。
すると、すぐに見つかって、連行された。
「おお~い! 時の人がやって来たぜ」
「年齢にしちゃずいぶんと、頭が良いんだっけな?」
「頭だけじゃ、いかん! 頭と心と肉体、全て鍛えないとな、武器はどれが良いか?」
武器の置いてある場所に案内されたから、木刀を選んだ。
「坊っちゃん、頭を鍛えるには、実は肉体を鍛えるのが基本なんだ」
「最悪、身体だけ鍛えれば、それだけでも生きていける」
いつのまにか、防具を身に付けされられる。
「しかし、坊っちゃんの護衛は凄いな、ダナムはこの中でもかなり強い方だし、テスターと闘えるのは、この中で2人しかいない」
もう呼び捨てなのかい。
そして、防具と言う名の重りを付けて、走り込むためのスタートラインに立たされる。
「先ずは、走って、走って、走りまくって、気合いが入ったところで、模擬戦をするぞ。もちろん実戦を想定して武器と防具は装備したまま走るんだ」
その考えには、賛成しますが、僕の両隣に短めの木刀を持った、オッサンが3人囲むように配置して柔軟運動をしている。
「先ずは小トラック100周だ。走りきれないかも? とかは心配しなくていい。3人のサポーターが無理にでも完走出来るように手伝ってくれる」
急にオッサンズが素振りをし始めた。
スパルタ教育の予感がする。
「スタートから30秒後に、サポーターも応援に走り出す。頑張れよ坊っちゃん」
そこで、やっとダナムとテスターを見つけた。
2人は心配そうに僕を見ている。
大丈夫だよ、僕、頑張るから。
~しかし、ダナムとテスターは、サポーターの3人を心配していたのだった~
「それじゃ『歓迎持久筋肉走』スタート!!」
僕は思いきり走る。
「なっ! この坊っちゃんはバカか? すぐバテるぞ」
「いや、頭が良いのがあだになった。サポーターの意味に気づいて、ビビってペース配分を忘れたんだ」
「だけど、それにしても速すぎないか? まさかギフト持ちか?」
「はい、1周」
唖然としているオッサンズの尻を叩く。
「生意気な!」
「人神の加護かぁ!」
「我らをナメるなぁ!」
オッサン達も元気に走り出す。
……
…………
………………
「ば、バカな、たった60周で、あの3人が息を切らせるなんて……」
「あたりまえだ、いくらあいつらでも、あれだけペースを乱されたら、息が上がる」
「まて、それよりもおかしいのは、あの少年だ。90周も走って、息が乱れてない」
たかだか18㎞程度の距離を、全力で走ったくらいで疲れるわけないじゃん。
僕が100周走りきった頃、オッサン達は道半ばで倒れていた。
ごめんね、長距離は人外アーサーと張り合えるほど得意なんだ。
前世の力が半分以上戻ってるから、そんなに疲れないんです。
僕のせいでペース乱しちゃったね。
「さぁ、次は模擬戦ですね。お願いします」
……
…………
「化物だ、アルカディアの戦士は化物揃いなのか?」
10戦もしないで、この施設最強の人と戦って、倒しちゃったところだった。
「心配しないで下さい。ランディほど強いのは、アルカディア国内で5人もいません。俺様も呆れてるくらいです」
「はあ、2年前は私と互角だったのに……」
ダナムとテスターが、みんなのフォローをしている。
そうして、楽しい時間は過ぎていった……が、僕は出入り禁止になってしまった。
何故だ?
◇◆◇◆◇
ドルデルガーさんと、アイスプラントの育成状況の確認に視察に来ていた。
ついでと言っては失礼だけど、ドルデルガー夫人も来ている。
見渡すと、思ったよりアイスプラントの育ちが良い。
「す、素晴らしい。こんなに青々と『葉菜』がなるとは……」
「本当ですね。ランディ殿、以前の無礼をお許しください。主人から聞きました。ランディ殿は、見た目と実年齢がそぐわない病にかかっているとか」
弁解していないせいで、間違った人物像が出来上がりそうだ。
気付くと、一部のアイスプラントには、目の細かい網がかけられている。
すげぇなこの国の技術力。
アルカディアに、そんなアイテムは無かった。
僕は、葉を1枚ちぎって、埃を払ってから食べる。
「うん、美味しい。 これは、葉をちぎっても、どんどん生えてくる生命力の強い植物です。どうぞ」
ドルデルガー夫妻に、ちぎった葉を数枚渡す。
「そのまま、食べられる種類なのか? どれ『シャク』つっ! 美味い」
「アナタ、私も……『シャク』ん!? 何なの、塩味が絶妙に効いていて、すごく美味しい」
「これは、塩害対策だけでなく『ソルトリーフ』を売り出すだけでも、どれだけの利益がでると言うのだ? これは、一株銅貨1枚……いや3枚はいけるか」
アイスプラント一株3000円かよ? ボリ過ぎじゃね?
「アナタ、貴重な塩分が摂取できる事と、特産性を活かせば大銅貨1枚でも取引が出来ます」
この女、5000円で売る気かよ。
いったい、何万株植えたと思ってんのよ?
「ライムよ、これを我が領だけで独占するつもりか? それでは国の復興が遅れてしまうぞ」
「アナタ、これは王位継承権を上げる、またとない機会なのです。ここは独占してしまうのが得策です」
「しかし、ライムよ……」
あのう、つまんない揉め事は止めて貰えませんかね?
だから、夫妻の会話に割って入る。
「失礼します。そんな事もあろうかと(ウソ)、代案を用意してあります」
「えっ?」
「な、何だと!」
僕は、塩害対策に植えたジャガイモの所まで、来てもらった。
ここでも、予想より葉が伸びている。
良い大地だよな。
でも、ジャガイモやさつまいもって『肥えた大地での実りが悪い』って聞いたけど……まぁいっかぁ。
「ランディ殿、これは?」
リクエストに答えて、説明しよう!
「これも、塩分を葉っぱに溜め込む性質を持った品種のジャガイモです。さすがに葉は食べられませんが塩害対策は、ソルトリーフより効果があるかと」
と、言ってみたのに、ドルデルガーさんは青い顔で震えていた。
「ラ、ランディ殿、そなたの国は『食物の品種改良』と言う、技術を持っているので?」
ん? …………あっ、僕の台詞で、ジャガイモの品種改良にたどり着いたのか?
恐らく『品種改良』は、この国じゃ機密事項なのかもしれない。
「品種改良? わが国のジャガイモは土地別で色々な種類があって、それを品種と言います。細かく分類するとかなりの種類に別けられるんですよ。他の領地までは詳しく解りませんが、毒性の少ない物や、逆に多い物まであるようです。 ところで、そちらの国では意図的に品種改良が可能だと、吐露していませんか?」
「あっ」
「アナタ……」
なんか騙したようで、心苦しいです。
まあ実際、騙しているんだけど。
ドルデルガー夫妻と相談の結果、アイスプラントを国中に広めて、ジャガイモを領内で独占する方針に決めた様だ。
ライムさんは気持ち腹黒だが、旦那のドルデルガーさんは、かなり良い人なので『塩トマト』栽培法を
提案してみた。
さすがに品種とか言われると解らないから、向こうの農家に頑張って貰おうと思う。
さて、一段落したら、塩害の原因を突き止めてみよう。
アルテシアンナ貴族誕生秘話②
エンカム→円カモーン
ポンドフィバー→ポンドフィーバー
ペソヤーマ→ペソの山
ギルダエルダ→ギルダ増えるだ
フランクルン→フラン来るの
アルテシアンナ10公爵、誕生秘話でした。
ちなみに、塩トマト美味しいらしいです。
実際のアイスプラント栽培は『重金属』も吸収するらしいので、お気をつけくださいませ。
葉に塩分を吸収するジャガイモも実在はしますが、食用かどうかは作者は知りません。




