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【93話】アルテシアンナ王国③

 この食事会、解りやすく言うと、A級モンスター討伐に成功した、冒険者達の祝賀会と同じような雰囲気を醸し出している。


 貴族の行うパーティとは、だいぶ違う。


 そして、出てきた主なメニューは、どでかい焼き鳥に、玉ねぎのスープだった。


 焼き鳥は、間にネギやニンニク、鶏皮等がはさんである。


 名付けて『ネギま』『ニンニクま』『トリカワま』としよう。


 様々な世界で食事をしたけど、鶏肉の間に鶏皮肉を挟んで、焼き上げたのにはビックリだ。


 たぶん個別に焼いてから、串を通して焼き直したんだろう。


 暫くビッグ焼き鳥を堪能していたら、女性グループがやって来た。


 僕は、会釈だけして『ゴロゴロ入った玉ねぎの、コンソメモドキスープ』に手を付けた。


 うまい。


「あらこの子、わたくし達より、目の前の食事に夢中ですわ」


「ワタクシ達より食事だなんて、よほど貧しい生活をしていたのかしら?」


「仕方ないわよ、このアルテシアンナ王国は、ターベールと並んで『食』が最高峰の国なのよ」


「でも、アルテリオンもどうしたのかしら、こんな子供に『全て委せた』と言うなんて、無能じゃないのは解るんだけど……」

(それでも学院の成績が良い程度で、なんでこの非常時に子供を使うのよ。お父様は何を考えているのかしら。知恵に長けた者を貸して、と言ったのに……)



 貴族のご夫人であろう『チーム淑女』のうち、アルテリオンの名前を出した、王妃様に面影のある女性がいる。

 なら、この人が馬鹿王子(サンジェルマン)の姉ちゃんか。


 ちょっとガラじゃないけど、自分を売り込もうかな。


 しかし、彼女の名前を知らない。


 一応、貰った指示書に名前があったはずなんだけど……


「お初に御目にかかります、ドルデルガー公爵夫人。ぼ、私はランディ・ライトグラムです。得意分野は、算術、個人戦闘、小集団戦闘、回復魔法です」


 あと、イタズラもあるんだけど、ここでは黙っておこう。


 すると、馬鹿王子の姉ちゃん以外の女性グループが沸く。


「あら坊や、いっぱい頑張ったんでちゅねぇ」

「厳しい事を言うけど、その努力を大人になるまで続けないと、一人前にはなれないのよ?」

「わたくしも算術には覚えがあるの、今度一緒に筆を執ってみない? 頑張れたら筆下ろしをしてあげるわよ」

「「「キャハハハハハ」」」


 化粧ゴッテゴテの鍛えていない女性には、全く興味ないです。


 そして、馬鹿王子の姉ちゃんは不思議そうな表情で聞いてくる。


「あら? 私はこの『原因不明の不作』を調べられるような人材をお父様に要求したのに、おかしいわね?」


 ならば、話そう。


「はい、原因については、大体の予想がついています。 後は、証明と対策、原因の究明と解決ですね」



「ちょっ!? いくらこんな席でも、冗談で言って良いことと悪いことがあるのよ。根拠はあるの、根拠は?」


 目を見開く姉ちゃん。


「そうですね、説明は明日にでも公爵様に致しましょう。根拠は土の味と、生き残った作物ですかね」



 すると姉ちゃんは、持っていたであろうお酒を置いて、水を誰かに要求している。


 残りの女性グループを追い払った後、その場を去ろうとした僕の肩を掴んだ。


 どうやら、逃げられないらしい。


 水をごくごくと飲んだ後、食事が終わったら呼びに行くから、食べ過ぎないように、と言って去っていった。


 あれ、逃げられないんじゃ……なかったの?


 まあいい、取り敢えず焼き鳥を腹一杯食べた。



 ◇◆◇◆◇



 そして今、ドルデルガー公爵の書斎に連行されていた。



 中には、ドルデルガー公爵、じいさんが2人と、ごついおじちゃんが2人、そして僕をキッと睨んでる姉ちゃんがいる。


「ランディ殿、ライムから話は聞きました。既にこの不作の原因を突き止めているとか。ライムは信じておらぬようなので、もう少し詳しく説明をお願いしたいのだが?」


 公爵の立場で、僕相手に丁寧に話すなんて、調子が狂いますね。

 もっと、ドンとかまえて下さい。


「はい、この土地を少し歩きまして思ったのですが、玉ネギと長ネギは、ある程度生き残っていて、ほかの作物は見られませんでした。村や町の人に聞くと、毎年一定の時期に起きる雨季を過ぎてから、不作になったと聞きました。そして土には、僅かに塩の味がします」



 ここまで、言うとじいさんと公爵夫妻がざわざわし出した。


「現段階では予想ですが、これは『塩害』です」


「なっ! 塩害……だと!? ホモル爺、ボルケ爺、聞いたことは有るか?」



 なっ! ホモ爺にボケ爺……だと!? そんなのが側近でいいのか?


 僕が驚愕していると、爺達が口を開く。


「塩害と言う名は初めて聞きますが、湾岸付近では、食べられる食物の種類が限られていますな。たしかに、ネギ類や、サボテン等が主な食材でしょう」


「しかし、海から遠いこの地で、塩の害とはにわかに信じられません。あと旦那様『ル』の発音は強めにお願いします」


「と言う事だが、何か意見はないかランディ殿」


 もちろんありますよ。


「はい、こんな事もあろうかと、あの荷馬車には塩害対策の苗が乗せてあります(嘘)。早速明日から植えてみましょう」


「なっ!? なんと我が国に来る前から、これを想定していたのか。先読みするにもほどがあるぞ。ウィルソン王よ、これほどの人材を派遣してくれて感謝する」


 なんか、ウィソンって聞こえる。


「あなた、まだ喜ぶのは早いわ。 まだ不作の原因は『塩』のせいと決まった訳ではないのですから」


 ライム姉ちゃんが釘を刺してくる。


 まあ、今回はライム姉ちゃんと同じ意見ですが、喜ぶのは、これからにして欲しい。


「そうですね。ご夫人の言う通りだと思います。それに作物が実るのにも、時が要ります。それまで、このアイテムで凌げませんか?」


 僕は、ムアミレプ王国のアンジェラ女王様から貰った『4種の秘薬』をドスンと置いて、差し出した。


「これは、何? 」

「そんな箱一つに、なんの価値があるのかしら?」


 公爵夫妻は、これを知らないようだ。

 だが、ホモ爺とボケ爺の息が止まってるくらいビックリしている。


「ま、まさか、これは4種秘薬!?」

「ばかな、只の模造品じゃろ! ケースを調べれば判る!」


 爺様達は、食い入るようにケースを開けたり閉めたり、触りまくっている。


「ホモル爺? これは値打ち物なの?」

「まて、今なんと言った? 秘薬とか聞こえたが、まさか、あのまさか……」


 夫妻の声は爺様達には、届かないようで、ケースの中身を弄りまくっている。


「ケースは本物じゃ……ここと、ここに魔力を伝える機関がある」


「ビンの中身も恐らく、本物じゃ。ランプが緑で点灯しておる」


 僕には解らないけど、本物かどうか見分ける術があるらしい。



 ……

 …………



「どう? 使える」


 本物だと理解して、ドルデルガー公爵と2人の爺様は顔を青ざめさせている。


「使えるどころか、1歩間違えれば争いの火種じゃ!!」


「一体なんて物を持ってくるのじゃ」


「いや、ランディどの感謝する。 これは早速王に献上するよう手配する。私が長期にわたって所持して良いものじゃない」



 あのう……これ、あと2つ有るんだけど。


 でも、姉ちゃんが更に疑いの眼差しで僕を見ていた。


「あなた、これを一体どこで手に入れたの? 私も知らないような稀少なものを、お父様が渡すわけないわよね?」


「はい、道中アンジェラ女王と仲良くなったので、貰いました」



「ランディ殿よ、普通仲良くなった程度でアレは貰えぬぞ、何をしたんだ?」


 流石に全て説明するのは面倒だな。


「命を助けたって事以外は内緒で」


「……」

「……」


 流石の夫婦も絶句している。

 調子に乗りすぎたかな?


 これをきっかけに僕の化物認知度が爆発的に上昇していく事になる。




アルテシアンナ王国貴族誕生秘話①。


ドルデルガー→ドル出るぞー

ユーロガッポ→ユーロがっぽり

ゼニクルーガー→ゼニ来るだー

ウォンタマル→ウォン貯まる

ルピーゲッツ→ルピーゲット!


はい、作者はアホンでございます。


誕生秘話②へ続く。

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