【9話】ランディ、アリサに回復魔法を教える
六歳になって、僕の魔力総量は更に上昇した。
ここで久しぶりに、自分の魔法使用限界を検証してみた。
ヒーリングから、アルテミットヒーリングまで、四日間費やした。
いちいち指を折るのが面倒だったが、僕は検証好きなので、実行に移した。
一日目は『ヒーリング』二百五十二回で、目眩がした。
二日目は『エクスヒーリング』八十四回で、目眩がした。
三日目は『グランヒーリング』二十六回で、目眩がした。
四日目は『アルテミットヒーリング』九回で、目眩がした。
検証結果は、『アルテミットヒーリング』は魔力をガンガン消費するので、逆に効率が悪いと判断した。
指折りじゃ回復量も分からないし、何が有効かも分からない。
でも、検証好きの僕は一応満足……最低でも魔力総量が1500は楽勝で超えているからな。
しかし、四百回近くの指折りヒーリングで、アリサに回復魔法を使っているのを見つかってしまった。
アリサの口止めは簡単だったが、一つ交換条件があった……アリサめ、なかなか策士よの……
その交換条件は、アリサにも回復魔法を教えてくれって事だった。
教える分には構わないが、回復魔法の素質を持つ人は少ない、アリサに出来るだろうか……
もう一つ問題がある……いくら回復魔法で完全に治療出来ても、六歳の女の子に傷を付けるなんて僕には無理だ。
思い付いたのは、先の尖った棒等で、アリサのお肌を自ら傷つけて貰う事だった。
ちょっぴり傷が出来たアリサに『ヒーリング』を使って傷を治した。
「どお? アリサ、何か魔力の流れとか感じた?」
「う……ん、よく分からない……けど、体の中で変な物が動いた気がするの……もう一回お願い……」
そして何回かヒーリングを繰り返したが、思うように行かないらしい、アリサは少しイライラして、ザクッと自分の腕に棒を突き立てた。
うわっ! 怖いよアリサ……って回復、回復。
「ヒーリング……アリサ大丈夫か?」
「あっ……解った気がする……」
とアリサは、自分でザクザク腕を刺して、ヒーリングを唱えた。
結果アリサは『ヒーリング』に成功した。
調子に乗ったアリサは計八回のヒーリングを使った後、目眩を訴えた。
「ランディ……なんか、クラクラする……」
あっ魔力枯渇のサインだ。
「アリサ、ここまでだよ……これ以上使うと倒れてしまうし、魔力総量が少なくなるからね」
「うん、分かった」
しかし、アリサは偶然にも回復魔法の素質持ちだったか……それに魔法の修得って意外に簡単なんだな……アリサは初回で八回も『ヒーリング』が使えたか……僕の時は一回だったから、チョッピリショック……
アリサ魔力総量87→89
この日より、アリサは僕と一緒に寝るようになる……
理由は就寝前に魔力総量を枯渇寸前まで減らしたいからだ。
まだ、この『指折りヒーリング』はバレたくない。
なんと、この事に誰も反対しなかった。
あっレジーナは少しだけ渋っていたな……理由は授乳の機会が減った事だろうな……
はい、まだ僕はレジーナに授乳を強要されているんです……もう、六歳なんだけど……
まあ、楽しいからいっかぁ。
六歳になっても、僕のクレリック呪文は第1レベル止まりだった……まさか、このままなんてないよね?
クレリック呪文は、この世界には無い術式なので、こそこそと使っている。
特に『レベルサーチ』は楽しかった。
皆の頭の上に数字が浮かんでいるからな……
でも、数日で飽きた。
だって、村には目新しい人はなかなか来ないし、殆どがランク『1』だったしな……
でも、ロイエンとセナリースはランク『3』だった。
『3』は、大した事ないが、ここら辺ではずば抜けて強い。
何せ、今の僕じゃまだまだ勝てない……
僕はこのまま目標ロイエンで頑張る事にした。
▲△▲△▲△▲△
「はっ、ふっ、 とぅっ!」
僕は、散々村中を走り回った後、ロイエン、セナリースと模擬戦をする。
武器はおねだりして、棍を使っている。
実は三節棍や五節棍の方が得意なんだけど、この世界にはそんな武器は無いみたいだ。
棍を使うようになってからは、二人とも受けるだけでなく攻撃も交ぜてきて、訓練は本格的になっていった。
そんなある日の訓練後、ロイエンルーガとセナリースが二人で話し合ってる。
「ボン……最近マジで強くなってきたなぁ……ハッキリ言って、異常だ……」
「ああ……それに、気づいたか? 俺たちがランディに一撃与えても、全く堪えていないことに……」
「旦那もそう思いますか……たしか昔そう言った変なやつがいたような……」
「まさか、第四のギフトの事か? それは無い。ランディはギフト無しって判定がでているからな……」
「旦那ぁ、その話はマジなんだよな? 『判定の儀式』失敗してねぇか? こうして見てると、どうにも『人神の加護』と『龍神の加護』二つ有るように見えるんだよなぁ……そうそう、どっかの国から来た密偵に有ったギフトな、たしか『冥皇の加護』だったらしいぜ、耐久力三倍って噂だ……」
「それこそ、『判定の儀式』の失敗だろ……そんな加護、聞いたことも無いわ」
「そうか……そうだよな……」
▲△▲△▲△▲△
僕とアリサは、親に内緒の『指折りヒーリング』を日々続けていた。
アリサも魔力総量が上がってきたから『エクスヒーリング』を覚えてもらった。
自虐回数も減るからね。
アリサは、あっさりと『エクスヒーリング』を覚えた。
僕の仮説だと、回復魔法の魔力の流を覚えて貰うには、かすり傷より、深い傷のほうが覚えが良いのかもしれない……研究対象はまだアリサだけだから、あくまでも仮説だけどね。
こうして月日は流れ、ランディとアリサは七歳になった。
※ランディ 七歳
※ギフト 暗黒女神の愛
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』『アルテミットヒーリング』
※魔力総量 3101
※クレリック呪文 第1レベル 35回
※アリサ 七歳
※ギフト 無し
※魔法の種別 回復系 ???
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』
※魔力総量 363
◆
◇
◆
ある薄暗い、部屋で二人の男が会話していた。
「ダーナス家の管理下の住人で、貧しい者達の名前を調べろ……」
「承知致しました、御館様」
「二人の時に、その堅苦しい言い方はよせ……」
「では、タイム様、調べるだけで良いので?」
「ああ……今はいい……頼むぞ」
「承知致しました」
本日さらにもう一本行きます。




