「無力」という言葉に憧れて
とある「世界最高の召喚師」とされる男のいる、小さな神殿。
その周辺には、とても深い森。
そう、ここは「世界と宇宙を繋ぐ場所」の一つ。
この「場所」の森の中に、なぜか緑髪のショートヘアの女性がいる。
しかし、これから物語の中心となる彼女は、この神殿の男に召喚されてこの「アロナエ」に来たわけではない。
なぜ、深い森にいるのか―――――。
その理由は、数年前にあった。
これは、「弱い」という事の深みを知る物語―――――。
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「なあ。 俺の仲間になってくれないか?」
声を掛けてきたのは、黄色い肌で日本という国から来たと思われる顔つきの男。
その男は、こう声を掛けてくる前に勇者を名乗っていた。
しかし、彼女はそんな男の誘いを断った。
「ごめんなさい」
というのも、前に同じ肌の色の男に誘われた事があったからだ。
その時は許可したが、いざ同行してみると自分勝手な人物と分かり、旅の途中で男の下を去った。
僧侶という職のせいなのか、何回も回復魔法の詠唱を強要されたため。
「地球人? は回復魔法を魔法使いに使わせない」という固定観念も生まれてしまった。
宿屋で寝ている時を見計らって、地元へと走って逃げた。
それからというもの、黄色い肌の勇者には抵抗があったのだ。
しかし、勇者だと言う男はそれを許さなかった。
断った彼女に、謎の圧力が。
(ここで断ったら敵として殺すからな……!)
「……すいません。 やっぱり、さっき言った事は撤回します」
地球の日本ではよく「ハーレム」と呼ばれている言葉だ。
「主人公補正」「ご都合主義」「テンプレ」の一つで、主人公の声を聞いただけで数人が虜になってしまうという。
しかも、戦闘や魔法を得意とするほど、主人公の虜になりやすいという。
無理矢理仲間にさせられると、男は人間のそれとは思えない強さで魔物等の敵を倒して進んでいき、最終的には魔王をも倒した。
地球の日本では、「チート」と呼ばれているらしい。
実際問題、この男も無傷で世界中の「敵」を倒していった。
何回か攻撃を受けていた事もあったが、全くダメージを受けていないように見えた。
回復魔法以外に特に取り柄の無かった彼女は、終始歩かされているだけだった。
男の性格も良くはなく、強さだけという印象だった。
人のタンスを物色しては、金目の物を盗んでいったりしていた。
そして、3年後。
地元の住民として暮らしていた彼女は、「魔王が復活した」と聞き、魔王城に向かった。




