異伝第1話 勇者召喚と王都消滅
if
-もしも、主人公が外道だったら-
-最初の選択が異なっていたら-
高校の授業が終わり、帰る支度をしていたら急に視界が切り替わった。
見慣れた教室が、中世ヨーロッパ風の大広間に変わっていたのだ。あたりを見回すと、近くに同じクラスの生徒がいた。少し遠くには他のクラスや学年、教師達がいる。タイミングが正しければ、ただの全校集会といえば通用するだろう。
「夢、か?」
これが噂に聞く白昼夢という奴だろうか。いや、夢の自覚があるのは明晰夢というのだっけ。しかし、五感から得られる情報が夢とは桁違いだ。この段階で俺は夢ではないと断定し、情報を分析することにした。
>新たな能力が解放されました。
<生殺与奪LV1>
スキル、ステータスを他者から奪ったり、他者に与えることができる。奪うことができる有効射程は2m。祝福、異能は奪えない。
>新たな能力が解放されました。
<千里眼LV->
ステータス、マップ、ヘルプの機能を持つ。以後、詳細はヘルプ機能による確認を推奨。
目の前にゲームのシステムウィンドウのようなものが開き、ログのようなものが流れる。夢じゃなさそうと思っていたら、夢であることを強調するような出来事が起こるとかやめてほしい。というか異能って何だ。
Q:異能って何だ?
A:この世界のルールから外れた力です。異能が発動すると世界のルールに関係なく、異能の結果が優先され、事実として上書きされます。
質問に答えが返ってきた。もしかしてログに書いてあるヘルプ機能ってこれのことか?
マップ機能もあると書いてあるので、マップ機能と念じてみる。ゲームのように2次元平面を上から見るようなマップが出てきた。普通の景色も見えている。マップも見えている。よくわからないが両方同時に認識できている。
辺りの連中は、呆けているものと慌てているものが半々くらいか。おっと、俺の幼馴染(男)の1人はいつも通り平然とした顔をしているな。あいつは肝が太いからな。動じたところを見たことがない。
よく見ると、明らかにこの学校の生徒ではない、中世ヨーロッパ風の服装をした人たちが少し離れた位置から俺たちを観察しているのが窺える。ドレスを着ている者、紳士服のようなものを着ている者、兵士のように鉄製の鎧を着こんでいる者もいる。中世ヨーロッパのような建築物だから、俺たちの服装の方が浮いているように感じる。
そんな中、こちらを見ている連中の1人が前に出る。
「皆さまお聞きください」
恐らく、俺たちと同年代の少女の、よく通る声が響く。少女は華美なドレスを着ていた。周囲には他にドレスを着ている者はおらず、一際存在感を放っていた。まあ、なんだ…。一言でいうと、どう見てもお姫様です。ありがとうございます。ちなみに隣には王様っぽいオッサンがいる。完全に姫様に食われているね。
ステータスってのもあったから、それで確認してみる。
クリスティア・ヴァン・エルディア
性別:女
年齢:17
種族:人間
スキル:<作法LV4><乗馬術LV1><気品LV5>
称号: エルディア国王女
アガード・ヴァン・エルディア
性別:男
年齢:42
種族:人間
スキル:<作法LV3><乗馬術LV3><気品LV5>
称号: エルディア国王
やっぱり王様と王女様だ。
スキルってのも見えるな。ますますゲームみたいだ。
「私はエルディア王国王女のクリスティアと申します。ここは皆さまのいた世界とは別の世界“アークス”といいます。召喚の儀式によって皆さまを勇者として召喚いたしました」
王女の一言で現状を何となく理解することができた。異世界に召喚される、よくある話だ(フィクションなら)。勇者になる、よくある話だ(フィクションなら)。フィクションなら次は魔王か邪神あたりを倒してくれと言ってくるころだろう。
「皆様にはぜひ魔王を倒し、我が国を救っていただきたいのです」
当たった。この異能ってやつで魔王を倒してほしいのかね。
王女達の話をまとめるとこんな感じになる。
・この世界は剣と魔法と魔物と魔王のファンタジー世界。
・魔王は人類を滅ぼそうとしている。
・魔王は女神と敵対している。
・女神からの神託により勇者召喚の術を行った。
・学校にいた人間すべてが勇者として召喚された。
・異世界から呼ばれたものは女神より祝福を得られる。
・祝福とは特殊能力とかスキルといったもの。
・俺たちを元の世界に帰す方法は不明。
・魔王を倒せば元の世界に帰る方法が神託で伝えられる。
違った。異能なんて一言も出てこない。そういえばさっきのログで<生殺与奪>は祝福を奪えないって書いてあったな。
あれ、じゃあ俺の祝福って何だ?自分のステータスを覗く。
名前:進堂仁
性別:男
年齢:17
種族:人間(異世界人)
スキル:
異能:<生殺与奪LV1><千里眼LV>
称号:転移者、異能者
祝福。どこ?
皆は帰る方法がわからないと言われ、悲しんでいた。そこに、魔王さえ倒せば女神からの神託により、帰る方法がわかると言われたことで、魔王を倒す方向に話がまとまっているようだった。絶望を与え、選択肢のない選択を迫る。うん、詐欺の手口だね。
情報源が1つしかない以上、全部を鵜呑みにするのは危険だと思う。特に、最後の神託云々の話は向こうに都合がよすぎる。召喚した相手が善性であるとは限らないのは、フィクションでもよくあることだ。実はラスボスが召喚した国にいたりね。
しかし、俺たちにはこの世界での伝手がないのだから、少なくともしばらくの間は、この国の言うことを聞き、力をつけ、知識を集めることにするのが、無難な選択だろう。
まずは俺たち勇者が、どのような祝福を持っているのかを調べることから始まった。この国にある魔法の道具に「祝福の宝珠」というものがある。これは、少し大きめの水晶玉みたいなもので、手をかざした者が祝福持ちなら光り輝き、どのような力があるのか表示される。これを使えば、俺の祝福も明らかになるかもしれないし…。ごめん、無理だと思う。だって、他のやつのステータスに祝福ってあるんだ。
そして俺の番がやってきた。宝珠に手をかざし、しばらくすると光って文字が映し出されるという。
待つことしばし、隣のあたりで騒いでいる声が聞こえる。あれは隣のクラスの気の強い女子グループだな。一緒にいるおどおどした女子もたしか隣のクラスだと思う。
リーダー格の女子がおどおど少女を馬鹿にするように笑う。
「何アンタ祝福無いの?本当に落ちこぼれねアンタ」
「さっき、全員が祝福を持っているって言われたのに。あんた全員に含まれないんだ。マジうける」
「そんな…」
おどおど少女は青い顔をしている。兵士が慌てて指示を飛ばす。
「急いで王と王女にお伝えしろ」
どうやら、あのおどおど少女は祝福を持っていなかったようだ。兵士の慌てようと文官の説明から考えるに、想定されていない事態なのだろう。お下げに眼鏡のテンパっている少女のステータスを見る。
名前:木ノ下さくら
性別:女
年齢:16
種族:人間(異世界人)
スキル:
異能:<???>
称号:転移者、異能者
???ではあるものの、異能の項目がしっかりとある。やはり異能持ちは祝福がないようだ。
手元の宝珠を見てみるとこちらも光らない。もうしばらく待ってみたがやっぱり光らない。やっぱり俺もか…。
大慌てで王様と王女様がやってくる。俺と少女は並んで2人と向き合う。
「この2人が祝福を受けられぬ者たちか」
「はい、宝珠が光りませんでした」
近くの兵士の補足に対し、2人は困ったような顔をして続ける。
「女神様の神託では異世界から来た勇者全員に祝福があるはずです」
「うむ、しかし神託が間違っているとは信じられぬ」
「女神様が間違えるはずありません。絶対的な存在なのです」
いや、魔王なんかの台頭を許している時点で絶対的存在ではないのでは?
「ということはこの者たちは勇者ではないということでしょう」
「うむ、元の世界で何か大きな罪を犯していたり、生まれがひどく卑しいのかもしれんな」
なんか嫌なこと言われているぞ俺たち。少女も涙目だ。
周りの連中も犯罪者を見るような目つきになっている。
「わ、私!犯罪なんかしていません!きっと女神様が祝福付け忘れたんですよ!」
少女が反論すると、王女様がすごい剣幕で返してきた。
「女神様を侮辱するとは!こんな者達が勇者のはずがありません。即刻首をはねなさい」
おい待てよ!女神の悪口1つで即処刑とか、理不尽にもほどがあるだろう。というかなんで俺も首切られる流れになっているんだよ。
クラスメイトも教師も誰も止めない。いくら、急に異世界に呼ばれて混乱しているからと言って、こんな理不尽を黙認するのか?
兵士たちが数名、剣を持って近づいてくる。
「誰か止めてくれよ!こんなことで処刑なんておかしいだろ!」
誰も答えない。皆が皆、冷たい目を向けてくる。急激に気分が冷めていく。俺は元の世界でも結構頑張っていたつもりだった。他人には言えないが、周囲の平和に貢献していた自負もある。俺を生んでくれた世界に感謝もしていた。
それは、この世界じゃ、ない。
こいつらの、ためじゃ、ない。
そんなことを考えると同時に、俺の中の何かが変わった気がした。
>新たな能力が解放されました。
<無限収納LV->
触れたものを不可視の収納空間に送る。または取り出すことができる。容量は無限。生物は収納不可。フォルダ分け、条件検索などができる。
>新たな能力が解放されました。
<契約の絆LV->
能力所有者の下位(部下、奴隷、従魔など)となる存在と契約を結ぶことができる。契約を結んだ相手とは不可視の線によって、さまざまなものを共有することができる。
>新たな能力が解放されました。
<異能拡張LV->
異能の能力を限界以上に強化できる。通常の制限を突破でき、デメリットも緩和される。
はは、大盤振る舞いだな。
>異能<生殺与奪><千里眼><無限収納><契約の絆>に<異能拡張>の効果を適用します。
<千里眼>が強化されたのだろう。わざわざ質問をしなくてもわかる。どうすれば、このむかつく奴らを1人残らず目の前から消せるのか…。
「消えろ」
俺の体を中心に黒い球体が現れる。その「黒」はブラックホールのようにすべてを飲み込みつつ大きくなっていった。最初に消えたのは近づいてきた兵士だった。身体の一部が触れた途端、ぐにゃりと歪むようにして「黒」の中に飲まれていった。その光景に驚愕し、逃げようとする者もいたが、もう遅い。最初の犠牲者を得て、勢い付いたかのように「黒」はその大きさを増していく。「黒」が呑み込むのは人だけじゃない。床だろうが壁だろうが飲み込んでいく。どんどん大きくなっていく「黒」だが、やがてその活動を止める。丁度、王都と呼ばれている土地をすべて包み隠すくらいの大きさになった頃だ。
「これが俺の異能か…。悪くはないな」
「黒」を徐々に小さくしていき、後に「虚無の大穴」と呼ばれるクレーターの中心に降り立つ。
この「黒」だが、<生殺与奪>の拡張で、触れたものを無条件で吸収し、全てを奪うことができる。そして奪ったものの中で、スキルやステータスは俺に加算され、それ以外は<無限収納>に入れられる。<無限収納>も拡張により、生物すらそのまま保存できるようになっている。
今、俺の<無限収納>の中には王都の全てが入っている。1度、<無限収納>に入れたのなら、拡張された<契約の絆>により、強制的に隷属させることができる。とはいえ、王都の連中を出してやるつもりは全くないが…。
「さて…」
残った問題を片付けようか。俺はその場にへたり込んでいた少女を睨み付ける。俺と同じく異能を持っていたから<無限収納>に入れられず、結果として奪われなかった少女だ。いかに拡張された<無限収納>といえど、自らと同じ起源をもつ異能は、取り込めなかったようだ。
「ひっ…」
ガチガチと歯を鳴らして震えている。少女もこの状況を作り出したのが、俺だということを理解しているようだった。
少女の方に1歩進む。少女は後ずさりしたいようだったが、腰が抜けており、震えているため、ほとんどその場を動けない。
もう1歩進む。少女のスカートにシミが広がり、座り込んでいる地面が濡れる。恐怖が限界に達したようだ。
もう1歩進む。少女に手が届く距離に来た。しゃがみ込んで少女と目を合わせる。
「あっ、ああっ」
目がうつろになる少女、喉をつかんで強制的に覚醒させる。気絶によって楽にはさせない。
「選べ。この場で死ぬか、俺の奴隷となり、全ての尊厳を失ってでも生きるか…」
究極といってもいい2択を叩きつける。この世界に興味がなくなり、この世界を自由に蹂躙することを決めた俺にとっては、仲間など不要だ。俺にとってこの世界にいる他人は3つのどれかに分類される。敵と、無関心と、下僕のどれかだ。
俺と同じく異能を持つ少女に対し、無関心というわけにはいかない。ならば敵として殺すか、下僕として所有するかのどちらかとなる。
「あああっ、ど、奴隷になります。だ、だから、こ、殺さないで…」
「契約成立だ…」
<契約の絆>と、奪った<奴隷術>により、少女を奴隷化する。本来の説明によると、<生殺与奪>は異能を奪えないらしいが、異能とスキルによる完全な奴隷化をしているため、その制限を外れる。
それによって俺は、少女から異能<魔法創造>を奪うことに成功した。奪った途端に???だった異能が有効化されたみたいだな。
「これを付けろ」
少女に首輪を手渡す。<無限収納>の中にあったものだ。元は王都の奴隷商が所有していたようだが、すでに俺のものだ。
「…はい」
自ら首輪をつける少女。これは奴隷を縛るマジックアイテムである、「奴隷の首輪」ではない。異能とスキルによって2重に縛られている少女にそんなものは必要ない。ただ、立場をわからせるためだけに着けさせた。
クレーターの底にいるため、穴を登らなければならない。面倒なので<天脚>の祝福を使い、空を駆けよう。異能と同じく祝福も奪えないはずだが、こちらには少し裏技を使った。<生殺与奪>のスキル変換能力だ。まず、祝福を全部ポイントに変換する。この時点で祝福としての機能を失っている。その後、同じスキルにポイントを振り直したのだ。つまり、祝福と同じ名前を持つ、ただのスキルとして俺が使うということだ。
平たく言うと女神の祝福を、そのままは使いたくなかったのだ。実を言えば、異能の拡張によりそのままでも使えたとは思うけど…。
「いくぞ」
「…はい」
少女改めさくらを抱える。
「えっ?何を?」
「天脚」
空中をまるで地面のように踏みしめ、蹴る。奪いに奪ったステータスのおかげか体が軽い。
「き、きゃああああああああ!」
少女、いや名前で呼んでやろう。さくらが絶叫を上げる。うるさいので<契約の絆>を使い、心の中で「黙れ」と命令する。
「…」
これで静かになった。ん、また漏らしているな。ゆるい女だ。
ステータスに任せて、空中を高速移動する。これはこれで速いのだが、少し面倒になってきた。
さくらから奪った<魔法創造>を使ってみよう。この世界にない魔法を自由に創造できる、強力な異能だ。その分MP消費が割増しになっているが、王都1つ分の魔力があれば困ることはあるまい。
「<魔法創造>「ワープ」」
ワープ
目視できる範囲に転移する魔法。遮るものがある場合は魔法が中断される。複数人の転移可能。
出来た。確かにMP消費は高めだが、予想通り気にするほどではない。
「ワープ」
ワープを発動し、マップ上で気になる場所に飛ぶ。
「この洞窟だな。盗賊と竜人種がいるのは…」
ワープと<天脚>を使い、数10秒で移動した先の森で、盗賊たちのアジトである洞窟を見ながらつぶやく。
ここには10名の盗賊と、恐らく捕えられたであろう、竜人種という魔物の子供がいる。
もちろん善意で助けようっていうわけではない。向こうの世界で見ることができないものをできるだけ見ていきたいのだ。
俺の最終目標は元の世界に帰ることだ。この世界には恩も義理もない。帰れるなら帰りたい。<千里眼>で確認しても帰る手段はなく、<魔法創造>で帰還魔法を作ろうとしても駄目だった。それでも俺はあきらめるつもりはない。必ず元の世界に戻る手段はあるはずだ。
と、話はそれたが、帰るにしても珍しいものを見ずに帰るのはもったいないので、せいぜい楽しんでやろうということだ。
「さくらはこの中に入ってろ」
「黒」をさくらにぶつける。さくらは急に現れた「黒」に驚きながらも、何かをしゃべる前に飲まれていった。
足手まといを置いておくつもりはない。少なくとも<無限収納>の中は絶対安全だからな。
王都を消した時ほど「黒」を巨大にすることはできない。あれは一種の必殺技みたいなもので、クールタイムがそれなりに長い。その代わり、ゴルフボール~サッカーボール大の「黒」を最大30個まで操作できる。宙に浮き、相手を追尾し、触れると消える球体はそこそこ脅威ではないだろうか。
盗賊のアジトに入る。洞窟前にいた獣は「黒」に任せた。
「やっほー」
フランクに行こう。王都での怒りも大分治まってきたからな。方針が決まったから、少し気分に余裕が出てきたかな。ちなみにこれが方針。
・元の世界に帰る
・それまでいろいろ見たりして楽しむ
・この世界への遠慮・配慮は一切しない
「侵入者だー!」
盗賊が叫ぶ。「黒」に飲まれる。
次々とやってくる盗賊。次々と「黒」に飲まれる盗賊。
最後の1人、大柄な男を飲んだところで、打ち止めのようだ。
「あー楽しかった」
ほとんどもぐらたたきと変わらない。
そのまま歩いてお宝部屋に入る。檻に入った小さいドラゴンがいたので、檻から出してみる。
「きゅいいいい」
>フェザードラゴンの竜人種が仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
「黒」をぶつけて<無限収納>に放り込む。能力は奪わずに、<契約の絆>と<魔物調教>で縛ってから取り出す。
「きゅい?きゅいい…」
なんか悲しそうだ。思っていたのと違うらしい。知らんな。仲間はいらない。下僕だけでいい。
人間形態にもなれるらしいので、変身するように「命令」した。竜形態と同じで、全体的に白い幼女だった。
なんか、俺と一緒にいたいらしい。とりあえずフード付きのローブを着て、フード部分に竜形態で入れる。幼女形態を引き連れるのとどちらがマシか比較した。この世界に遠慮しないから、フェザードラゴン狙いの奴に襲われるのは構わない。殺せばいいだけだ。しかし、幼女を連れて歩く変態と思われるのは嫌だ。人を殺すのはいいが、「ロリコン呼ばわりされたから殺した」というのはさすがに勘弁してほしい。
盗賊の宝を取るだけ取ったので、フードにドラゴン(ドーラと命名)を入れて、<天脚>で飛び立つ。ドラゴン、自力で飛べよ。
そこそこ遅いので、近くにあった街に入る。飛んで入るのはさすがに非常識なので(今更どの口が言うのか)、街から離れたところに1度着地してからにするのは忘れない。
「街に入るには1000ゴールドだよ。テイムした魔物は小型なら500ゴールドだ。フェザードラゴン?珍しいの連れてんな。それも500ゴールドだが、住人とかに怪我させたりしたら、飼い主の責任になるから注意しろ」
大人しく1500ゴールド払う。大丈夫、怪我をさせるとしたら俺が実行犯だから。
「泊朝食まで、1人と1匹で」
「4500ゴールドだよ」
ペットサイズなので部屋に連れてもいいそうだ。粗相をしたら飼い主の責任だそうだ。
起きていてもすることがないので、ドーラを抱き枕にして寝ることにした。
翌日、朝食を食って街を歩いていると、滅茶苦茶強い爺さんがいた。どうやら執事をしているようだ。王都1つ飲み込んでも持っていないような、珍しいスキルを持っていた。こっそり「黒」を仕掛けるも、驚異的な勘で避けられた。
仕方ないので、30個まとめて「黒」を放った。避けきれず、消え去る執事の爺さん。街はちょっとしたパニックになる。俺は物陰からこっそり「黒」を放ったのでバレてない様だ。
さて、朝からいいもん拾った。次はどこに行こうか。
「というわけで、やってきました奴隷商」
奴隷とか、現代日本ではまず見れないしね。店の主人に案内されて奥まで入る。とりあえず女と注文する。それだけできれいどころを紹介される。その中から、気に入った奴隷を購入する。
「その奥にいる、8歳くらいの犯罪奴隷の娘と、12歳くらいの欠損の激しい獣人娘も買うぞ」
マップで確認した内容を伝える。俺が示した先には、俺には売れないだろうと思っている、安物の奴隷がいる区画だ。
店側の人間しか知らないことを、当たり前のように要求され固まる店主。
「早くしろ…」
殺気を飛ばして指示をすると、青い顔をしながら慌てて連れてくる。
これで予定していたのは全員だな。店主に購入を伝え、金を払う。王都1つ分あるので、お金の心配はいらない。全員と奴隷契約をし、店を出る。結局総勢24名になった。店を出るとすぐに物陰に入り、「黒」をぶつけ<無限収納>に入れる。欠損の酷い獣人には<魔法創造>で部位欠損を治す魔法を作り、五体満足の状態にしてから収納した。
この街でやりたいことは終了したので、昼食を食べた後にこの街を出ることにした。門を出たところで、1度街の方を見る。この街にはあの爺さん以外にもそこそこレアなスキルの持ち主がいたからな。
「行け、「黒」…」
マップ上で確認できるレアスキルの持ち主に向けて、「黒」を放つ。5分もしないうちに目標を全て吸収できたようだ。これで本当にこの街に用が無くなったな。
さて、次は他の国をぶらついてみよう。
しまっちゃうお兄さん降臨。
「黒」はミュ○ツーの映画をイメージしていただければ…。
<異能拡張>はifストーリーだけのオリジナル設定の予定で、本編に出す予定はありません。絶対とは言いませんけど…。