1個目
天文部のお話って余り無いなぁと思って考えついたお話です。天文学については一般人レベルなのでいろいろ調べております。すごいですね、なにより写真が綺麗です。天文学初心者が書いたこのお話で、少しでも天文学に興味を持ってもらえたら幸いです。
「え、天文部?」
「はい」
桜が綺麗に咲き、学校は新学期をむかえる。
今年星条高校に入学した榛間零は、部活動の勧誘が最も盛んになる放課後に職員室を訪れていた。
「去年まではあったんだけどね、廃部になったから天文部は無いよ」
外から、運動部の勧誘の声が聞こえる。
吹奏楽部の演奏が遠くから響く。
「…嘘」
零は、入学早々に絶望感に見舞われた。
☆☆☆☆☆
零がこの高校を選んだ理由は、家から最も近いわけでも、勉強のレベルを考えた上でも無く、天文部があると聞いていたからだった。
職員室にいた先生からの情報によれば、去年は三年生しか在籍していなかったそうで、その人たちも受験を理由に早々に退部してゆき、廃部という形になったそうだ。
「…(あと、2、3人かぁ)」
創部する際には、部長と副部長を含めて三人から四人の部員が必要だそうだ。頑張ってね、と渡された専用の用紙の空欄を見て、溜息を吐く。
「(俺みたいに天文学に興味のある人、いるかもしれないし)…大丈夫」
すっかり夕焼けに包まれ、静かになった昇降口を出てようやく帰路に着いた。
次の日。
零の所属する1年5組の後ろにある掲示板に一枚のポスターが貼られていた。ポスター自体はそこまで目立たないのだが、まだ掲示物が少ないために皆の注意を引いたようだ。そこには、
『天文部部員募集中。
天文学、及び星や宇宙に興味のある人は是非。
1年5組、榛間零まで』
と書かれていた。
ポスターを見た人が零に目を向けると、望遠鏡というタイトルの雑誌を読んでいた。真剣な面持ちでページをめくり、吟味するように顎に手を当てている。
少しざわついたまま、ホームルームが始まった。
零は部員を集めるべく、手始めにクラスの掲示板にポスターを貼ってみたのだった。最も、ポスターといっても少しの文章が書いてあるだけだったが。
兎に角誰か興味を持ってくれた人がいるのではないかと内心ワクワクしながら待っていたが、その日は遂に放課後まで誰とも話すことはなかった。コミュニケーションは苦手であり、自分から話しかけることが無いので、クラスメートとは打ち解けられていない。
放課後も暇なので、教室で望遠鏡の雑誌をぱらりと眺めていると、ガラッと荒々しくドアが開けられ、1人の男が入ってきた。
「やっべー携帯、携帯…っと、アレ?」
零に気付いたのか、目線をこちらに向ける。目があって肩をビクつかせる零にバタバタと近寄りながら、話しかけた。
「君、榛間クンだよね?あのポスター書いた人!」
「え、と…うん」
ぱぁっと顔を輝かせると、零の机に両手をつき、ぐっと乗り出して言った。
「俺、入部したいんだけど」
「え」
バッと顔を上げる零。相手はニカッと笑うと、零の前の机の椅子に向かい合うように座った。
「…っ(うわ、嬉しい…!天文学について話とかできるのかな、その前になんか言わなくちゃ、えっと、その‥)」
顔を少し赤くしてワタワタしている零を見て一通り笑うと、馬津玲央と名乗った。そして、
「で、天文学って何?」
零は2度目の絶望感に見舞われた。
☆☆☆☆☆
玲央の話を聞くと、本当は帰宅部が良いのだが、一年生は半年間は必ず部活に入らなければならないので、楽そうな部活を選ぼうとしていたところ、零のポスターを見たのだという。
「何するかよく知らないけどさ、そこまで忙しい部活じゃないだろ?」
むずかしー事は解んないけど、とケラケラ笑う玲央の腕を、突然零が掴んだ。
「ちょっと‥来て」
「お?…おおおお?!」
そのまま廊下に飛び出し、走り出した。
☆☆☆☆☆
「…(しんどい)」
「大丈夫か?」
ゼーゼーと息を切らす零に反して、玲央はけろりとしている。零が連れてきたのは図書室だった。息を整えてから、零は目的の分類コーナーに向かう。
入学してから、ここにくるのは三度目だったりする。この学校は専門的な本も多く置いてあるので、本好きの零は大満足である。
向かった先は、440分類、つまり天文学・宇宙科学分野だ。ずらりと並ぶ、難しそうな単語。あまり手に取られていないのか、背表紙だけが日焼けしていた。その中から、零が抜き取ったのは「天文学入門」。
それを玲央に持たせ、適当な机に座り、読めと言わんばかりにガン見する。
「えぇ~、これ読むの?結構分厚いんだけど…」
早く、と言わんばかりにジッと見つめる零。ぐっと眉間に皺が寄る。
「簡単に口で説明してくれよぉ」
この通り!と頭の上で手を合わせ、ガバッと頭を下げる。零はオロオロした後に観念したのか溜息を吐いて説明をしてあげた。
「…。地球外で起こる、自然現象や法則を探す学問…。天体とかも、それに含まれてる」
へぇ~、と言う玲央は、興味なさげにパラパラと本をめくる。ふと、一枚のカラー写真のページを見つけて開いた。星の写真だった。
「うわ、これ綺麗だな」
「ハッブル天体望遠鏡、バグ星雲」
覚えてるのか?!すげー!と言う玲央はつい先程とは打って変わって目を輝かせている。そこで、そういった写真が沢山載っている図鑑を取り出して来て、ソッと横に置いた。
「これが、木星の衛星イオ。こっちが海王星で、コレが…」
ペラペラめくる音とともに説明する声が重なる。それは今までに無いほどハキハキしていて、心なしか楽しそうだった。
ちまちまと思いつくままに書いていくのでおそいです