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会話劇。ごちゃごちゃした文章になってしまったかも…。
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『昔な…、いや、それほど昔という訳ではないのだが、貴様等人間が世界大戦と言っている争いが起きるほんの前のことなんだが、貴様とはまた違う形であるが、この魔王城にも一人の人間が足を踏み入れたのじゃ』
部屋に入ると直ぐにルーテシアが話を切り出す。
手短にあったテーブルに剣を置き、自分はその隣に置いてあった椅子へと座る。
『ほうほう、それで?殺されたのか?』
『いや、違う。その頃は今の魔王ではなく、先代がまだ居た頃なんだが、そやつはその先代魔王と共にこの城に来たのだ。違う形と言ったのは、そやつは何故か先代魔王に気に入られておってな。二人でこの城に来ると、先代魔王はそやつをわらわ達に紹介したのだ』
『それでもいくら魔王に気に入られたからって言っても、他の奴等が反対しただろ?』
『その通り。わらわも含め、その頃はまだ幼かったファラも大反対したわ。魔人と人間は相いれない存在だとな』
『おいおい、ちょっと待て。大戦前って言ったら六十年近く前だろ?お前今何歳だよ』
『…女性に年齢を聞くもんじゃないと教わらなかったのか。まぁ…いい。わらわ魔人は貴様等人間とは命の量・時間の感覚が異なる。そうだな…、人間の年齢で考えると、0歳~50歳が幼少、51歳~150歳が成人、その後300歳くらいで晩年となるのかの』
『ふむふむ。人間の四倍くらいってことか』
『まぁ、話を戻すがそやつは最初はやはり受け入れられないでおった。それでも、先代魔王の客人として、表だった騒動はなかったのじゃが』
『こいつ、年齢のこと誤魔化しやがったな』
『ごほんっ!しかし、それでも、時と共に魔王城全体の雰囲気が好意的なものに変わっていったのじゃよ。まぁ、もともとそやつに人を惹きつける何かがあったのかもしれんが…人間どもの中でも慕われていたらしいしの。わらわもファラもそして残りの【四天の王】の奴らも大戦直前には親しい関係になっていたと言えよう。そして、あやつは人間と魔人の架け橋になろうとしたのじゃよ』
『へー。そんなこともあるんだな…。大戦前だったからなのか?お前等魔族はどうかわからないけど、俺等人間は魔族は人間を滅ぼそうとする…その、なんだ…【悪】だって教わってきたからな』
『【悪】か…。ふん、そんなもの観測者側の立ち位置が変われば、変化する…酷く脆弱なものじゃろうて。そういうお前はわらわとこうやって普通に会話しているが、いいのか?わらわは人間様が忌み嫌う魔人の中の魔人じゃぞ』
『いやっ!別に…俺は…。なんだろうな、いきなり想像できないくらい色々なことが立て続けに起こったのもそうなんだけど…、こうやって普通に会話できるんだなぁって…。あぁ!もう!俺の事はいいんだよ!それで?そいつは皆と上手くやって今はどうしてんだ?流石に寿命になったか?つーか、魔人の年齢じゃあ、まだ先代魔王様は生きてんだろ?なんで代替わりしたんだ?』
『ええい、そう矢継早に質問するでない。順に話すわ。それで、そやつとわらわ達はそれなりに上手くいっておったのだが…。そうだな、ガルフ等三人のお前に対する態度を疑問に感じなかったか?』
『あぁ。憎むべき相手と話す態度では無いよな。それはお前も当て嵌まるんだけど…。まぁ、だからかこうやって普通に俺も話をすることができるんだけどな』
『ふむ。それもこれもあやつが残していった思い出が原因じゃろ。人間とも分かり合えるかもしれない…そんな幻想を抱くほどにはわらわ達とあやつの関係は良好なモノであったのだ。しかし、色々なことが起きて大戦は始まってしまった。貴様等の間でもそこら辺のことは知っておるだろう?』
『あぁ、俺等人間の王様達が魔族に暗殺されたのを切っ掛けに始まったって』
『我等魔族も然り。先代魔王が人間どもの手によって暗殺されたのが切っ掛けと…そういうことになっておる』
『先代魔王も暗殺されてたのかよっ!…ん?待てよ。そういうことになっているって本当は違うのか?』
『そうじゃ。その事実を知るのも今ではわらわとファラ、そして先程のリーズの三名だけじゃろう。まぁ、それすらも真実とは言えないのかもしれないのだがな』
『真実ってなんだよ』
『わらわが知っているのは、人族の王共が死んだことによって、魔王城を攻め込む為に大群を編成しだした頃、魔王城唯一の人間であったそやつが先代魔王を殺したのじゃ』
『なっ!?そいつは先代魔王と親しかったんじゃないのかよ!』
『恋仲と言ってもよかったじゃろうて』
『じゃあ、なんで!?』
『だから、真実はわからんと言ったであろう。わらわだって何故あやつが先代魔王、セラリス・イクス・ヴァルグランを殺したのかは、わからん。唯、あの日あの時、血相を変えてあやつが先代魔王に会わせろと魔王城を訪れ、その後、先代魔王の私室で大きな物音がしたのを聞きつけた、わらわ三人はそこで抜身の剣を手に持ったヤツと床に置かれた先代魔王の衣服を目にしたのじゃ』
『衣服?殺されたって言うくらいなら…その、死体とかなかったのか?』
『なかったのじゃ。その場で消えた様にな。わらわ達もヤツにセラ様は何処へと問うたわ。そこで、あやつは自分の手で魔王を殺したと言い放ったのじゃ。そして、あやつは逃げる様にして魔王城を後にしたのだ』
『そ、そうなのか…。それで、争いは起きたのか。でも…なんで?』
『そう、なんで?なのだ。わらわも今現在でさえその問いに答えを見いだせていない。そして、長くなったが当初の話に戻すとな、今の魔王、ファラはそやつを酷く慕っておってな。その時のショックも誰よりも大きかったのじゃ。それから、ファラは憎しみに身を任せ、魔王の名を継ぐと共に大戦を引き起こした。その大戦においてファラは遂にその手でそやつを殺したのだ。しかし、大戦後は人が変わったように無気力な感じになってしまっての。唯、【人間】という言葉のみに強く反応するようになってしまったのじゃ』
『なんか、壮絶な話だな。つーか、そんなん俺なんか視界に入った時点で殺されるんじゃねーのか?』
『そうかもな』
『おい!どうすんだよ!生き残る方法があるみたいなこと言ってたじゃねーかよ!あれは嘘か?騙したのか!?』
『落ち着け。嘘はついておらん。話を戻すが、大戦後わらわもこの魔王城を離れ、一人放浪の旅にでたのじゃ。ファラまではいかんでも、わらわもそれなりにショックでの。それに、気になることが多すぎた。何故、ヤツがセラ様を殺さなければならなかったのか?ならばセラ様の遺体はどこに?人間の王を殺した奴はどいつだ?考えれば考えるほど、袋小路に行き当たるだけであった…。しかし、貴様に会い、こんな境遇になった時に真実への糸口を掴んだのだ』
『お、おれ?』
『そうだ。あの日あの時、セラ様とヤツが魔王城から消えた日、奴の持っていた剣は今までの物とは異なっておった。刀身は金色に輝き、その中心には蒼く光る宝石が埋め込まれておったのじゃ』
『え?それが…待てよ。刀身…蒼い…宝石…変わった…、まさか!!』
『そのまさかをわらわは疑ったのじゃよ。セラ様の髪の色は金色、そしてその魔核は蒼い物であった。ちょうどわらわの銀髪と紅い魔核の特徴がこの剣に現れた様にな』
『そ、それじゃあ…先代魔王はそいつに…俺みたいに剣に封印されたって言うのか!?』
『それが真実とは言わんよ。しかし、糸口ではあると確信したのじゃ。だからこそ、貴様をこの魔王城に連れてくるように仕向けたのじゃよ、人間』
『な!?そん時はまだ俺は生まれてもなかったんだぞ!そいつとも会ったことも無いし、今初めて聞いた話だ!俺は無関係だ!』
『ふぅー。少し、落ち着け。わらわもこれらの事で貴様が犯人だとするのは早計だと思っておる。しかし、何かしらの繋がりはあると思う。小僧、この剣はどこで手に入れた?』
『こ、これは…カイル先生に…。それでも、この剣をくれた人はまだ三十歳くらいだし、大戦時には生まれてないはずだ!』
『しかし、何かしらの情報は握っているやもしれん』
『実際、これからどうするんだ?』
『それは、ファラ次第じゃな』
その言葉とともに扉が開き、ガルフが顔を出す。
「リーゼが来た。ファラ様が貴様と会うってよ。ついてこい」
『話は取り敢えず、ここまでじゃ。貴様も腹を決めろ』
「わかった。今行くよ」
そう返事をし、席を立つ。
とてつもない陰謀に巻き込まれたことに気づきながらも、その答えを導き出すには、今のラグナには不可能であった。