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 エルト村村長宅隣にある施設“止まり木”。

ここは村の村長が身寄りの無い子供達を保護し、育てている施設である。

木造二階建てでエルト村の他の建物とほぼ変わらない造りだが、大きさは比べものにならないほど大きい。この村一番の大きさと言っていいだろう。と言うのも先程述べたとおり、村長が営む孤児院のスペースとカイルなどの大人が開く学校の様な施設などが一緒くたになっているからだ。

そしてその孤児院の二階にラグナとロックが相部屋になっている部屋がある。

彼等もこの孤児院“止まり木”の一員である。

「ラグ!朝ごはんの時間だよ!そろそろ起きろよ!」

「…ん。まだ、眠い…」

「そう言って朝の掃除もサボったろ!村長カンカンだぞ!」

「爺は別に―――」

「流石に朝ごはん食べなきゃ、マルダさんも怒るぞ!」

「鬼婆はヤバい!」

 ロックの最後の言葉に跳ねる様に飛び起きる。

「ほら、下に降りるよ」

「お、おう!ちょっと待ってて」

 そのまま二段ベッドを飛び降りると、慌てて寝間着を脱いで、いつもの服に着替える。

「おっしゃ!行こうぜ」

「まったく、十五になっても君は変わらないね…」

「ん?何か言ったか?」

「いや、なんでもない」

 ロックのため息交じりの言葉はラグナには届かず、部屋の外に出ようとする。

そんな相変わらずな相棒の姿に出かかった言葉を呑みこみロックも後に続く様に一階にある食堂へと向かうのだった。


「くらぁあーーー!!!糞ガキ!」

「あま?なぁんだほ。んぐっ、何だよ糞爺」

 食堂に着き、止まり木の孤児院にいる子供達が全員集まったことにより、食事の挨拶を済ますとかきこむ様に口にモノを放り込みだしたラグナに向かって、老人が顔を真っ赤にして駆け寄る。

そんな老人―――村長に向かって口の中の物を呑みこむと、悪びれることなく糞爺とのたまうラグナ。

その態度に更にヒートアップする村長。

「貴様!また朝の掃除をサボったな!それに昨日は儂の話の途中に逃げたろ!壇上にお前等を呼ぼうとしたのに赤っ恥を掻いたわい!」

「爺の話が長いのが悪いんだよ。それに悪いならロクも同罪だろ?」

「ラグ!」

 我関せずと頭を竦めながら、食事を続けていたロックがラグナの裏切りに腰を上げる。

「ロクはいいんじゃ!どうせ、貴様が無理矢理誘ったんじゃろ!」

「あんだぁ?また俺だけ悪者かよ!」

「貴様はもうこの止まり木では年長者じゃろ!それなのに何時になっても糞ガキじゃな!」

「なんだと糞爺!」

「ラグ、落ち着けよ」

「はいはい!そこまでにしな!」

 口論は更に続き、終いにはお互いの胸倉を掴みあうという、十五の少年と老人二人でやるにはいささか可笑しな光景を造り出した所で、大きな掌が二人の襟首を掴み上げ、二人を無理矢理引き剥がした。

「んげ!?おに…マルダさん!」

「ま、マルダ!年寄にこの扱いは酷いんじゃないのか?」

 その状態で手を放すことによって、宙に浮いた二人は仲良く床へとお尻を打ち付ける。

「あんだい?何か文句でもあるのかい?私が皆の為に作った朝食を食べずに騒いで、挙句に皆の食事の邪魔をしていた奴らにそれ相応の御仕置をするのに何か不満でもあるって言うのかい?」

「「ありません」」

 この孤児院止まり木の食堂のコックであり、孤児たちの母とも呼べる存在のマルダ。

年は三十後半だが見た目は大の大人も腰が引ける程の偉丈夫なのだ。

仁王立ちして此方を睨んでくる、その鬼の様な形相を見て、老人と青年は等しく、土下座するのであった。



いつもの様に慌ただしい食事も終わり、後片付けも役割分担が決まっており、直ぐに終わる。人々も疎らになったところで、ラグナとロックの二人が食後のお茶を飲んでいる。

「いててっ。あの鬼婆、思いっ切り頭殴りやがって。くそっ!」

「アレはラグが悪いんだし、仕様がないよ」

「お前は大人達にいい顔してるから、こういう時は得だよな」

 少したんこぶができた頭を擦りながら、恨めしそうにロクを睨む。

「そ、それより今日の予定はどうするんだい?」

「あん?うーん、今日はカイル先生の授業が午前中に終わるだろうし、午後からは森でまた特訓しようかな。ロクは?」

「僕はそのままカイル先生に指導をお願いしようかなって思ってるよ」

「それじゃあ、午後は別々に行動するってことでいいな」

「そうだね―――」

 ロクの言葉を遮る様に外から鐘の音が長く四回鳴ったあと短く一回鳴る。

「やばい!もうこんな時間だ!」

「カイル先生に怒られる!」

 この国の時間を知らせる機能は教会にある鐘の音で成り立っている。この鐘はどこの村にも存在する。というか、鐘があるから村となっていると言った方が正しいのかもしれない。魔法によって世界各地に散らばるこの鐘は同じ時に同じ回数だけ、鐘を鳴らす。

時間の捉え方は現代と同じで午前、午後で十二時間ずつ、計二十四時間で一日を構成している。

長い音が一時間、短い音で三十分。

始まりは五時からでそこから最大七回鳴る―――つまり正午。そしてそこから一回に戻り、また八回鳴った午後八時で鐘の音は一日の仕事を終える。

午後八時から午前五時までの間は『安息の時間』と呼ばれ、人々が時間を気にすることなく生活ができる時間と呼ばれ、鐘の音は鳴らない様になっているが、それが本当の理由かどうかは定かではない。


長く四回、短く一回―――つまり午前八時半を知らせる鐘の音にラグナとロックの二人は慌てて、お茶を飲み干すと自分等の部屋へと急ぐ。

「ラグ、ロク!またギリギリじゃない!早くしないと遅刻よ!」

「わ、ごめんごめん」

「リン!カイル先生の足止めしといてくれ!」

「嫌よ!大人しく怒られなさい!いーだ!」

 二階へと駆け上がり、部屋の前まで来たところで隣の扉が開き、一人の少女が出てくる。

ラグにリンと呼ばれたその少女は綺麗な栗色のロングヘアーをなびかせ、自身の指を瞼に当てると、舌を出し、あっかんベーっと二人にやるとスタスタと歩き始めてしまう。

「あの糞女ぁ!」

「ほらほら、僕等も急がないと本当にカイル先生に怒られることになるよ!」

 がるるっとリンの後を追いかけそうになるラグの首根っこを捕まえ、部屋へと入る。



なんとか急いだ甲斐もあり、カイル先生が講義室に入ってくるよりも先に教室内に飛び込む。

「あっぶねー!」

「早く、席に着いちゃおう」

「あら?間に合っちゃったの?」

「お陰様でな」

 空いていた席へと座った所で、一番前に座っていたリンが悪態をつく。

軽口を叩きながら、グルリ周りを見渡すと、どうやら自分たちが最後だというのがわかる。

この講義は“止まり木”の中でも年長者グループが受けるもので、ラグ、ロク、リン以外には四人の男女が席に座っている。

“止まり木”の子供達は全部で三十人ほどいるのだが、ほとんどの子がまだ幼く、他の大人が幼稚園の様な施設を開いており、みなそちらに行っているのだ。

“止まり木”の歴史は古く、今の村長の二代前からあるそうで、もう百年近い歴史がある。その中で育ち、巣立つ者は数多く、皆村に残ったり、首都を目指したりと様々だ。

この場にいるラグナを含めた七人が次に巣立つグループと言っていいだろう。

 そうこうしているうちに長い鐘がが五回鳴り、カイルが教室内に入ってくる。

 そのまま教卓が置かれているところまで来ると、グルリと教室内を見渡し、一度頷く。

「うん。どうやら遅刻、欠席などはいないみたいだね。それじゃあ、今日の授業を始めよう。今日は魔法の階位と札付についてだよ」


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