エピローグ
エピローグ
辺りはどこまでも続き、その終わりは目にすることができないほどの大草原。
その場所にそれまたどれほどいるのかもわからないほどの2つの大群が向かい合う様に対峙する。
片や、人間やエルフ、はたまた亜人や獣人など様々な種族で構成され、片や魔族という一種で構成された異なる大群であるのがわかる。
その場所から少し離れた所にある丘に一人の男が佇む。
「やっぱり、こうなったか…」
男は目の前の光景を見て、悲痛な表情を浮かべる。
「止めようと思えば、止められたのかもしれない…。こうなってしまったのも俺の責任か…」
『主よ、そう悲観するでない。まだ未来が決まった訳ではないであろう?自分のやった行いを否定することだけはやめてくれ』
さらに続く、男の声に対し、何処からか声が聞こえる。その声は男を優しく包むかのように慈悲に溢れたものであった。
「俺が俺で選んだ道だ。否定なんてしない、ましてや後悔なんてしている暇はないさ。…すまない。お前には迷惑かけてばっかりだな」
『もう慣れたさ。どんな形であれ、こうやって最後までお前の隣に立つことができて、わらわは幸せじゃ』
「…ありがとう。しかし、此処まで来るのに本当に色々なことがあって、本当にいろんな奴等に会ってきたな」
『…寂しいか?』
心配そうに呟かれた、その言葉に男は苦笑する。
「全てはあの時から始まったんだよな。まったく、あの時はまさか自分がこんな場所に来ることになるなんて夢にも思わなかったよ。退屈だった毎日がお前に出会ったことで劇的に変わっていった」
『わらわもじゃ。色の無かった世界にお前が色を付けてくれたのだ』
男は背中に下げていた鞘から剣を抜く。
その切っ先は薄らと金色に輝き、柄と刃の間の部分には美しく輝く蒼い宝石のようなものが装飾されている。
「悪いけど、もうちょい付き合ってもらうぞ」
『ふん、いいさ。お前の寿命が尽きるまでは、付き合ってやるさ、人間』
「頼りにしてるぜ、魔人」
楽しそうに笑うと、直ぐに真剣な顔つきに戻る。目にするは二つの大群。
「決めたよ。俺はこの世界の敵になる。それが俺の出した答えだ」
『ならば突き進むのみじゃ。この世界に住む全ての物に憎まれようとも、お主が思うままに進めばいい』
「ルドルフやカーマイン。その他、アイツ以外の【二十四の時】の奴らには悪いことしたな…。アイツ等にはもう許しを請う暇もないだろう」
『ファラやルーなども物凄い剣幕で怒るだろうよ』
「あはははっ!それは怖い…いつかわかってくれるかな…。たとえこの道が茨の道だろうと、はたまた間違った選択だったとしても、それをぶん殴ってでも正してくれるヤツが現れてくれるだろう」
『そうだな。…そうなればいいな。お主が<常世の間>でわらわに語ってくれた夢が叶えばいいな』
「あぁ。…ただ一つ、後悔があるとすればアイツをこの後の世にも残すってことだけだな…。魔族も人間も多分、もう俺の声は届かない…」
『それも後世の奴等がどうにかするだろう。わらわの【四天の王】は脆弱ではないぞ。それにファラだっているしの』
「そうだな。【二十四の時】の中にもアイツの異変に気づいてくれるやつが現れるかもしれないしな」
『ならば…』
「あぁ!それじゃあ、そろそろ時間だ。一発でかい花火を打ち上げますか!」
男は剣を片手に目の前の大群へと突進するのであった。