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飼っていた子猫

作者: 宵待 黒
掲載日:2026/10/26

飼っていた子猫が死んだ。


二年経つかどうかという頃に居なくなった。

僕はいつも彼に惜しみなく愛を注いだ。

側にいる時はいつも撫でてやり、一人になりたがる時はそっと視界の隅でその姿を眺めていた。


子猫が僕の元を去ってから気がついた。

彼は既に子猫ではなかった。

それはそうとしか言えない。元々の生まれを知らず、その上で二年も経っていたのだから。

私が見ていたつもりだった子猫は、とっくの昔に

いや、おそらく初めから子猫ではなかったのかもしれない。


子猫は時たま悩んでいるように見えた。

心配して側に行くと甘えたように縋るので、撫でて宥めていた。

けれどきっと、そんな事をしても彼の苦しみを取り除いてあげられてなかった。

彼と私は異なる命で、通じ合えていたように見えたのは、きっと願望が入り混じった主観でしか無かった。


どこにも姿が見えない子猫を思い、その想い出に浸る。

一緒に行った場所、お互いに話した事、抱きしめた時の温もり、撫でた時の心地よさ。

そのどれもがもう二度と無いのだと、一人になった部屋を見て考える。


せめて心の中だけでも子猫の温かさを思い出していると、瞼の重みを感じ始めた。

いつもは側にいる彼を撫でて、その少し後から聞こえる大きなイビキを子守唄にしていた。

その事実に気がつくと、冷めた心の感触で意識が現実に引き戻された。


子猫は時々、ふらりと煙のように姿を消す時があった。彼の自由意志を尊重するなどという、振り返るとみっともない言い訳を口にしながら過ごしていた。

それでも不安を抑えられていたのは、きっと居なくなる前には会いにきてくれるだろうと思っていたからだった。

今になって思う、彼は、あの何度も居なくなっていた彼はきっと、抱えきれなくなってたんだろうって。

結局子猫は別れの思い出を作る間もなく、旅立ってしまった。


1人になって、独りになって思う。

彼の為に何ができていたのかと。頭を撫でた時の幸せそうな声も、近くに来てくれた事も、沢山の愛を捧げた事も。私の為にはなっていたけれど、子猫の為になっていたのかは分からない。

彼も嬉しそうにしていた記憶があるけれど、同時にそれもおそらく願望が産んだものかもしれないと思っている。


飼っていた子猫はもう居ない。

読んでいただきありがとうございました。

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