第7話:ジャック様の家の夜会に参加します
前世の記憶を取り戻してから、3ヶ月が過ぎた。私がクラウディオ殿下の婚約者から、婚約者候補になったとこで、やはり貴族界ではかなり話題になっているらしい。
色々な憶測が飛んでいるらしいが、私の我が儘に耐えられなくなったクラウディオ殿下が私との婚約破棄を希望したが、お父様の力で、一旦婚約者候補にという話で落ち着いたというのが、貴族たちの見解の様だ。
それを聞いたお父様がかなり怒っていたが、言わせたい人には言わせておけばいいと私は思っている。
ちなみに私だが、この3ヶ月お茶会や夜会にも参加せず、平和に暮らしている。昔の私は、お茶会や夜会に積極的に参加していたが、さすがに少し疲れた。それに公爵家を継ぐなら、ある程度の勉強をしておきたい、そう思ったのだ。
ただ、なぜか何度もクラウディオ殿下から、王宮に遊びに来るよう誘われたが、お勉強で忙しいと丁重にお断りしている。一度私の様子を見に公爵家までやって来たことがあったが、ちょうど領地に出向いていた為、会う事はなかった。
はっきり言って、これ以上彼に関わりたくはないのだ。このまま疎遠になっていき、婚約者候補を辞退するというのが、私の思惑だ。
「デイジー、今日また王妃殿下から、お茶の誘いを受けたよ。でも、丁重に断っておいたから。それから、来週予定されているレクシティーオ公爵家の夜会は、私1人で参加するよ。デイジーはまだ、参加したくないだろうからね」
「レクシティーオ公爵家の夜会は、私も参加するつもりでおりますわ。私が階段から落ちてからもう3ヶ月も経っております。これ以上、私が顔を出さない訳にはいかないですし…」
何よりも、ジャック様に会えるチャンス。そう、ジャック様は、レクシティーオ公爵家の三男なのだ。彼に会えるこの日を、私は心待ちにしていた。そして社交界に姿を現すのは、この日にしようと決めていたのだ。
「でも…まだデイジーに関する心無い噂も流れているし…無理して参加しなくてもいいんだよ」
「私は大丈夫ですわ。来週の夜会、楽しみにしておりますので」
そう言ってお父様にほほ笑んだ。
「そうか、分かったよ。でも、もし辛かったりしたら、すぐに屋敷に帰っていいからね」
「ありがとうございます、お父様」
もう昔の私ではないのだ。私の変わった姿を見たら、皆驚くかしら?それに何より、ジャック様に会えるのが楽しみでたまらない。
前世で大好きだったジャック様。あぁ、考えただけで、胸が高鳴るわ。早く来週にならないかしら。
ワクワクしながら過ごす事1週間、やっと夜会当日を迎えた。久しぶりにメイドたちに磨き上げてもらい、ドレスに袖を通す。今日のドレスは、私の瞳の色に合わせたエメラルドグリーン…と言いたいところだが、ジャック様の瞳を意識して、緑よりのエメラルドグリーンにした。
そう、ジャック様の瞳の色は、緑なのだ。宝石もエメラルドをあしらったものにした。
「お嬢様、とてもお美しいですわ」
「ありがとう、ジェシカ。それに皆もありがとう」
前世の記憶を取り戻した頃は、私がお礼を言うと目を見開いて固まっていたメイドたちだったが、3ヶ月一緒に過ごすうちに、すっかり今の私に慣れてくれた。そもそも、お世話をしてくれている人に、横柄な態度を取る何て人として最低よね。
本当に昔の私は、どうかしていたわ。
「お嬢様、そろそろ行かないと、夜会に遅れてしまいますよ」
「そうね、それじゃあ行ってくるわ」
メイドたちに見送られ、お父様の待つ玄関へと向かった。
「デイジー、今日の君も本当に美しいよ。もしデイジーに失礼な事を言ってくる人間がいたら、すぐにお父様に言うのだよ。わかったね」
「お父様、大丈夫ですわ。私に失礼な事を言いに来る猛者はいらっしゃいませんわ」
そう、私は貴族界でもやりたい放題だったため、一部の取り巻き以外は、極力皆、私に近づいてこないのだ。今回もきっと、わざわざ私に近づいてくるものはいないだろう。
早速お父様と一緒に、馬車に乗り込んだ。久しぶりの夜会、それも今日は大好きなジャック様の家が主催する夜会だ。無礼のない様にしないと。
「最初はお父様と一緒にいてもよろしいですか?」
「ああ、もちろんだ。ただ、私は今回の主催者でもあるレクシティーオ公爵家の方々に挨拶に行くが…」
「私も一緒に参りますわ」
「そうか、わかったよ。それじゃあ、一緒に挨拶に行こう」
お父様が私に優しく微笑んでくれた。よし、これでまずはジャック様の家族に、挨拶が出来るわね。私がいかにまともな令嬢になったか、ジャック様の家族に見せつけないと!




