第34話:断罪は逃れましたが…
「殿下、私は…」
「そうそう、君には言っていなかったのだけれど、今日父上とクレスティン公爵が学院に来たのは、僕と君の卒業に関する書類にサインするためなんだよ。僕たちは1年で貴族学院を卒業する事になっているんだ」
「えっ、貴族学院をですか?でも…」
「なんだかんだ言って、僕は王太子としてまだまだ未熟だ。この1年でしっかりと人間関係も築けたし、残りの1年は国王になる為の勉強に励もうと思ってね。デイジー、君もだよ。君はろくに王妃教育を受けていないだろう。1年後には、僕たちの結婚も決まっているからね。貴族学院で、ゆっくり遊んでいる暇はないのだよ。それに僕たちは、卒業認定試験も突破しているから、2年間学院に通った事と同じ証明を受ける事が出来る」
何と!そう言えば少し前に、何やらテストを受けさせられたわ。あれが卒業認定試験だったのね。て、ちょっと待って、という事は…
「あの、私とクラウディオ殿下は、正式に婚約を結び直すという事なのですか?」
「ああ、そうだよ。公爵に聞いていないのかい?貴族学院は1年で卒業し、残り1年は王妃教育を受けるという事。さらに貴族学院を卒業すると同時に、僕たちが正式に婚約する事が、既に決まっていたのだよ。それから、貴族学院を卒業したら、君には王宮で暮らしてもらう事になっている。既に公爵とは話が付いているから。ねえ、公爵」
嬉しそうにお父様に話しかけるクラウディオ殿下。
「すまない…デイジー。君の気持ちを考えると、どうしても言い出せなくて。それにしても、まさかデイジーがその様な事で悩んでいるとは夢にも思わなかったよ…昨日もっと真剣に話を聞いてあげればよかった。ごめんね、デイジー」
「お父様のせいではございませんわ。私が変な勘違いをしたのがいけないのです。ただ通常、正式に結婚をしてから相手方の屋敷に住むのが一般的かと…」
「そうだね、でもデイジーは、放っておくと僕から逃げてしまうだろう。今回の様に、公爵を連れて国を出ようとしていた様だし。君を野放しにしておくと、どこか遠くに行ってしまうそうで、僕は不安でたまらないんだよ…それに、ジャックにも好意を抱いていた様だし…」
私の方を真っすぐと見つめ、それはそれは不気味な笑いを浮かべるクラウディオ殿下。その顔を見た瞬間、体中が凍り付いた。
この顔、知っているわ…エンディング寸前で、完全に病んでしまったクラウディオ殿下が、ルイーダ様に見せた顔だ。
「デイジー、僕から逃げられると思ったら大間違いだよ。もう二度と僕から逃げられない様に、王宮内でしっかり監視させてもらうよ。もう諦める事だね。君がいくら僕を嫌っていても、もう僕からは絶対に逃げられないから…」
その上、セリフまでレベルアップしている。確かに漫画では、なんだかんだ言ってルイーダ様は、クラウディオ殿下を愛していた。それに愛情表現も、彼女なりに伝えていた。
でも私は…
一気に血が引くのを感じる。
私は今までクラウディオ殿下を避けて来た。という事は…
間違いなく私、監禁されるわ。そして狭い部屋でずっと過ごすのだろう。でも…命があるだけましか。
お父様も私がクラウディオ殿下と結婚すれば、断罪される恐れもないだろう。
「デイジー、続きは王宮で話をしよう。それから、君が学院に来るのは、今日で最後だよ。本当は1年生の最終日まで学院に行かせてあげようと思っていたが、君が僕を捨てて、国を出ようとしていた事を知った今、もう学院にも行かせられないからね」
どうやら私は、今日で学院最後の様だ。ある意味悪役令嬢デイジーは、漫画通りに進んでいるのかもしれない。
だってデイジーはこの日断罪され、数日後にはこの世にいないのだから。もちろん、学院も今日が最後だった。ただ私は、これからも人生が続くのだ。
この病んだ王太子殿下と一緒に…
「ミーナ様、皆さま、私と仲良くしてくださり、ありがとうございます。もしまた会える機会がございましたら、仲良くして頂けると嬉しいですわ。それからルイーダ様、私の勘違いのせいで、ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
クラウディオ殿下に抱きかかえられている状況の中、私は皆に頭を下げた。
「デイジー様、そんな…今生の別れの様に言わないで下さいませ。たとえ学院でお会いできなくても、また夜会などでお会いできますわ」
「そうですわよ。またたくさんお話をしましょうね」
そう言ってほほ笑んでくれる令嬢たち。ごめんね、みんな。私は今からクラウディオ殿下に監禁されるから、きっと皆には会えなくなるわ。もしかしたら、一生会えないかもしれない…
ちなみにルイーダのメイドがお茶を飲むのを止めたのは、お茶の葉が古かった事に気が付いたからです。それをデイジーが断罪が始まったと勘違いしたのでした(;’∀’)




