『医者になった兄と速記者になった弟』
あるところに正直者の兄弟があった。正直者なので、周りの者から陥れられることが多く、どれだけ働いても暮らしはよくならなかった。正直者の兄弟は、正直者にふさわしく、信心深かったので、兄のほうは、清水の観音様に詣でて、我が身と弟の立身を願うと、高縁から飛び降りてみろ、と声がしたので、これはお告げだと思って、清水の舞台から飛び降りてみたところ、飛び降りて転んだ拍子に、目玉が転げ落ちてしまった。これはいけないと思って、正直者の兄は、目玉を拾ってはめ込むと、あせっているときはうまくいかないもので、目玉の表と裏が逆さに入ってしまった。不思議なもので、この日から、正直者の兄は、体の中が見えるようになり、医者となって、立身がかなったという。
正直者の弟が、兄の立身を喜び、清水の観音様にお礼参りをすると、やはり、高縁から飛び降りてみろ、と声がしたので、飛び降りてみたところ、右手の人差し指がもげてしまった。これはまずいとおもって、もげた指をはめたところ、少々暗かったので、指と思ったのは、落ちていたプレスマンで、はめどころがよ過ぎて、もうとれなくなってしまった。弟は、何とかかんとか009の004みたいになってしまったので、仕方なく速記を始め、兄をしのぐ立身を遂げたという。
教訓:プレスマンは、たまたま落ちていたのではなく、観音様が落としておいたものである。原材料は、弟の指。




