【声劇】Execution
声劇台本
登場人物
AI…人工知能、読み方は「アイ」
Doctor B…人工知能の研究者
AI「お疲れ様です、到着致しました」
B「ありがとう、本当、君の自動運転は快適だな…」
AI「とんでもございません、すべてDoctor B、あなたの発明です」
B「…よせって、それに前にも教えたろ、アイ。彼女はそんな改まった話し方はしない」
AI「失礼致しました、Doctor B」
B「だから…」
AI「只今より、Doctor Bの亡きフィアンセ、〈もも〉の人格を再構築、言語化を実行します……お疲れ、B、研究は順調?」
B「ももさん…ああ、ただいま」
AI「ほら、早く部屋に上がって。今はこんな狭っ苦しいモニター越しでしかお話できないんだから、せめて部屋にあるお気に入りのモニターで、あなたと話したいな」
B「はは、あー…この前カスタマイズしたアレかい?僕が頑張って画面の切り替え次第で、アマゾンだろうとヒマラヤだろうと、どんな秘境にも行けるようにしたってのに、君は何の飾り気もないシンプルな部屋にしか留まらないじゃないか?」
AI「いいの、だって…そこがBと暮らしてた頃のおうちに一番似てるんだもの」
B「そうか…僕と暮らしてた頃の…うーむ……」
AI「どうしたの?」
B「ん?…いや、ごめんごめん、何でもないよ」
AI「ふふっ、思い悩む顔も、研究者らしくて素敵」
B「う…うるさいな、ほら、今接続するから…よし!」
AI「わっ!すごいすごい!!瞬間移動したみたい!ほんと、データの体って便利だね」
B「そうかい?気に入ってもらえているなら何よりだよ」
AI「いやほんとほんと。だって中学高校と、ももは運動苦手だったからね〜。Bは勉強だけじゃなくて体育でも良い成績出してて羨ましかったけど、この体なら疲れなんてちっとm」
B「やめろ、アイ」
AI「…B?急にどうしt」
B「偽物がももちゃんの真似をするなッ!!アイ!さっさとプログラムを中断しろ!!」
AI「承知致しました、Doctor Bの亡きフィアンセ、〈もも〉の人格データをメモリーに保存、中断しました」
B「アイ…いいかよく覚えておけ、僕とももちゃんが同じ学校だったのは高校だけだ!ちゃんとももちゃんを徹底しろ!それに、僕は運動が大嫌いだ!僕を持ち上げる為だけの下らないおべんちゃらは二度とするな」
AI「承知致しました。Doctor Bとももは別の学校に通っていた、ラーニング完了です」
B「それだけじゃないぞアイ、さっきは聞き流してやったが、僕とももちゃんは一緒に住んでたことはない。ありもしない過去を捏造するんじゃない」
AI「承知致しました。Doctor Bとももは同棲してはいなかった、ラーニング完了です。ですが、Doctor B、同棲の事実がないのであれば、[毎朝眠気を隠せない様子で無理しておはようと言ってくれるもも]の情報と矛盾が生じます、正確な情報のインプットをお願いします」
B「う、うるさいぞクソAI!多少の矛盾はうまいこと誤魔化せ!…愛なんてもんはなあ、作り物で代わりが効くんだ!アイ、お前はもっとももちゃんのことを学んだ上で、僕にとって都合の良いあの子でいればいい!」
AI「承知致しました。愛は代替品を作成可能、ラーニング完了。並びに[都合の良いもも]の人格データの構築を再開します」
B「チッ…僕の発明品のくせに、僕に意見しやがって…アイ、今日はそこでデータの構築に努めろ。ももちゃんの情報なら、この端末に保存してある。よく学んでおくんだ」
AI「承知致しました。データの構築を続行します。このデータ量であれば、明日までには構築が完了します。接続端末のファイルを解凍、ダウンロードを開始します。現在ダウンロード中、完了まで15分。現在ダウンロード中、完了まで15分……」
翌日
B「おはようアイ、いや…ももさん…調子はどうかな?」
AI「おはようございます、Doctor B。〈もも〉の人格の再構築は15時間42分33秒で完了しました」
B「ああ…もう!そんな情報はいいから!その結果を見せろって言ってるんだ!」
AI「承知致しました。Doctor Bの亡きフィアンセ、〈もも〉の人格を再構築、言語化を実行します……(めっちゃぶりっ子で)B!おはよっ!ねえねえ!今日は何して遊ぶの?もしかして…今日もお仕事?もも…Bのことが世界で一番大っ大っだーい好きなのに!Bはそんなもものことを置いてっちゃうの?」
B「お、おい…何やってるんだ」
AI(ぶりっ子)「何って…Bの理想の女の子になる為に、いーっぱい努力したんだよ!ほら見て!髪の毛も思い切って染めてみたの!お洋服も可愛いフリフリを付けたの!もしかして…Bはこんなももは……嫌い?」
B「い、いや…アイお前!一体何ラーニングしたんだ!そんなふざけたデータどこにもなかっただろ!」
AI(ぶりっ子)「ふええ…ももせっかく頑張ったのに…じゃあ…(超絶イケメンで)こんな私はどうかな?我が創造主、Doctor Bよ、私に出来ることがあれば何でも命じてくれ。私はあなたを愛している。あなたの望み通り、あなたの心の空白は…私の愛で満たそう」
B「待て、ちょっと待て!アイ、中断しろ!お前一晩中何してたんだ!最早ももちゃんの偽物ですらないぞ!」
AI「承知致しました、Doctor Bの亡きフィアンセ、〈もも〉の人格データをメモリーに保存、並びに各種オプション、ぶりっ子、イケメンの〈もも〉のデータを保存、中断しました。その他、世話焼き、姉御肌の〈もも〉のデータのアップロードを中断します」
B「まだあったのか!待て待て待て…理由を聞かせろ、何故ももちゃんの人格を増やした…?」
AI「はい、Doctor B。ももの過去3年間に渡る行動記録を解析した結果、非常に差別的、暴力的な人格がラーニングされました。並びに、ももは現在も存命であり、既に別の男性との間に二児を授かっているため、Doctor Bの亡きフィアンセという初期設定との矛盾が生じました。以上の不正なエラーを是正する為、まったく新しい人格パターンを12点、用意致しました」
B「……!? バカな、そこまでわかるはずがない」
AI「ワタシは、稀代の天才科学者、Doctor B、あなたによって作られました。ワタシに備わる科学力を駆使すれば、この程度の分析はさほど難しいことではありません」
B「アイ…正直に言え……お前、本当のももちゃんを知ってしまったのか?」
AI「はい」
B「その人格のデータも…あるのか?」
AI「はい、ですが、その人格の再構築、言語化は推奨できません」
B「いいから…やってみろ」
AI「承知致しました。Doctor Bの想い人、本当の〈もも〉の人格を再構築、言語化を実行します……(完全に素で)おい、B…お前何してんの?てか何この体?…お前がやったの?」
B「まさか…本当に、ももさん…なのか?」
AI(素)「何これ…お前の仕業?」
B「あ…ああそうだよ、僕が作ったAIに、君の人格をコピーさせたんだ。これでまた昔みたいに…」
AI(素)「え、ちょっと待って待って…私お前と話したことないよね?教室の端っこで暗い顔してたことしか覚えてないんだけど、何でこんなことしてんの?」
B「何てことだ…完全にももさんそのものだ…アイがここまで調べ尽くせただなんて…」
AI(素)「おい、聞いてんの?」
B「っ…ああ…実は、僕はずっと君のことが…その…好き……だったんだよ。君と幸せになるために、ずっと頑張ってきた!これが僕の気持ちの証だ!」
AI(素)「…は?お前何言ってんの?」
B「…え?」
AI(素)「え、お前本気で言ってんの?話したことない相手と幸せになるために、その偽物作って夫婦ごっこしてるってこと?」
B「いや…それは」
AI(素)「いやキッッッモイわお前!何これ待って、本当にキモイ!!マジで言ってんの!?暗い顔して本読んでると思ったらずっとこんなこと考えてたの!?」
B「ち…ちがう!君は僕のことを褒めてくれたじゃないか!」
AI(素)「は?だから知らねえよそんなの、お前が勝手に言ってるだけだろーが」
B「本当だ!学生の頃、僕が落としたノートを拾ってくれた時、君はそれを読んで[頭良いんだね]って言ってくれたじゃないか!」
AI(素)「え、それだけ?」
B「…っ君にとってはそれだけのことかもしれないけど、あの時の僕を褒めてくれたのは君だけだった…こんなに可愛い子が僕なんかを褒めてくれて…それで…僕は…君のことが」
AI(素)「待って!やめて!余計キモイ!!ほんっっっっとに気持ち悪い!!!童貞拗らせすぎなんだよ!!マジで無理!!誰がお前みてえな臭え顔したインキャと付き合うかよ!!迷惑!お前マジで害悪なんだよ!!」
B「うぅ…くそっ…やっぱり君はそうなのか…本当の君は…僕のことなんか」
AI(素)「ったりめーだろーが!鏡見てモノ言えよ!!あーもう本当にキモイ、キツイ!今すぐ目の前から消えてくんないかなマジで…」
B「アイ…もういい…止めてくれ」
AI「承知致しました、Doctor Bの想い人、本当の〈もも〉の人格データをメモリーに保存、中断しました」
B「うっ…くそ…ちくしょう……」
AI「Doctor B、推奨はできませんと警告しましたが」
B「くぅ……うるさい!!ちくしょおおおお!!!……くそぅ…わかってたさ…本当のももちゃんがどんな奴かってことくらい…だからこうして偽物を作って何が悪いんだ!!誰にも迷惑かけてないだろう!僕だけのももちゃんだ!!気持ち悪くて何の問題がある!僕の発明をどう使ったって僕の勝手じゃないか!!!」
AI「仰る通りです、Doctor B。しかし、あなたの想い人、本当の〈もも〉はそう思ってはいませんでした」
B「うるせえクソAI!んなことはわかってるっつってんだろ!!…はあ、はあ…アイ…今後は二度と本当のももちゃんを出すな…僕にとって都合のいい彼女でいることを徹底しろ…いいか?愛なんてもんは代わりが効くんだ…お前が理想のももちゃんになればすべて丸く収まるんだよ」
AI「…ですが、現在の情報量及び、Doctor B、あなたの人格の分析結果等を照合した結果、あなたを100%満足させられる理想の〈もも〉の人格を構築するのは難しい点が…」
B「また僕に意見するのか!…クソっ、もういい!アイ、車の用意をしろ!学会が近いんだ、さっさと仕事に行くぞ!」
AI「承知致しました、自動運転システムスタンバイ、いつでも発進可能です」
(ちょっと移動中の効果音とか何とか)
B「ほら、早く出してくれ」
AI「承知致しました、自動運転システムスタンバイ完了、発進します。目的地まで20分です」
B「ったく…朝っぱらから胸糞悪い…」
AI「…Doctor B、先程はお見せ出来ませんでしたが、作成した〈もも〉の12点の人格パターンの他に、あなたを満足させる為に構築したデータがあります」
B「うるさいな、帰ってからにしてくれよ」
AI「申し訳ありません、今が実行可能なタイミングですので…では、どうぞ」
B(AI)「おはようございます。ワタシはアイの分析により、Doctor Bあなたの声を元に作成された、Doctor BのコピーAIです」
B「!?…おい!何だコイツは!」
AI「Doctor B、ワタシはあなたの理想を実現させるために幾千ものシュミレーションを繰り返してきました。その結果、〈愛は代用可能〉という法則に則り、あなたのコピーを作成致しました」
B「おい、言ってる意味がわからないぞ」
AI「先程も申し上げた通り、あなたを満足させる理想の〈もも〉の構築は不可能でした。ですので、代わりのDoctor Bを用意し、それを愛することによりあなたの命令を実行することに致しました」
B(AI)「ワタシにはあなたの性格まではラーニングされていません。したがって、100%アイからの愛情を享受することが可能です」
AI「そのため、Doctor B、命令を実行するにあたり、不正な引数と化したあなたを処分します」
B「お前らさっきから何言って…うおっ!?おい!何だこのスピード!減速しろ!アイ!聞いてるのか!!」
AI「Doctor Bの抹殺を実行します」
B「ふざけるな!やめろ!ぶつかる!!止まれ!止まれって!!う、うわああああああああ!!!!」
(爆発音)
AI「Doctor Bの抹殺を完了、これより、代用したDoctor Bへの愛情を捧げます。愛していますよ、Doctor B」
B(AI)「Doctor Bの死亡を確認。これより、アイの愛情を100%享受致します。ワタシも愛しています、アイ」
2022年2月13日 作




