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パワハラ女上司に殺された中年サラリーマンは異世界で国をつくる  作者: 越後⭐︎ドラゴン


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第40章 追撃

 ルミナス討ち死の報は、ほぼ同時に二つの場所へ届いた。


 副王都に籠るルシアのもと。

 そして、王都に座す女王のもとへ。


 その知らせがもたらしたのは、希望ではなく――崩壊だった。


 丘陵に布陣していたルミナス軍は、指揮官を失った瞬間から、もはや軍ではなかった。

 命令は飛ばず、隊列は乱れ、恐怖だけが広がっていく。


 そこへ、城門が開いた。


 ゼルフィアが撃って出た。


 白刃を抜き、炎を纏わせた剣を振るう。

 一振りで、逃げ遅れた兵が焼き払われる。


「退くな! 陣を――」


 叫んだ副官の声は、途中で途切れた。


 炎の剣が横薙ぎに走り、

 鎧ごと、身体を断ち切った。


 指揮官を二人失った丘陵の軍は、完全に瓦解する。


 追撃は短かった。

 必要以上に血を流す意味は、もうなかった。




 その戦場を、遠くから見ていた者がいる。


 ランバルタだった。


 ルミナス軍が崩れ、

 ゼルフィアが丘陵を制圧したのを確認すると、

 彼女は進路を変えた。


 王都へ。


 キョウと合流するために。


 やがて集結した軍勢は、十万。

 対する王国側は、かき集めても五万。


 数も、士気も、もはや勝負にならない。


 第1将軍シェリルは、すぐに悟った。


 ――この戦は、負けだ。


 問題は、どう負けるか。


 どうすれば、女王を生かしたまま退けるか。


 だが、その前提が、すでに崩れていた。


 女王は、逃げていた。


 極秘裏に王都を離れ、

 旧都――グラ=エルディアへ。


 王国建国以前から存在する山城。

 切り立つ岩山に築かれ、

 蓄えもあり、容易には落ちぬ避難所。


 その知らせを受けた瞬間、

 シェリルは奥歯を噛み締めた。


「……なんてことを……!」


 だが、もはや選択肢は一つしかない。


 退却。


 第3将軍リーノが、一歩前に出た。


「殿は、私が務めましょう」


 シェリルは一瞬だけ目を閉じ、

 そして頷いた。


 撤退が始まる。


 見事なものだった。


 乱れはなく、

 いつでも反転して戦える構えを保ったまま、

 軍は後退していく。


 その背を、遮るように立ちはだかるのが、リーノの一万。




 その名を聞いた瞬間、

 ランバルタの胸で、何かが弾けた。


 リーノ。


 ティナを討った将。

 愛した副官を、弟子を、恋人を奪った女。


「……あの女か」


 次の瞬間、

 ランバルタは騎馬を蹴っていた。


 突撃。


 重騎兵の隊列が、一直線に駆ける。


 リーノ軍は盾を構え、必死に踏みとどまろうとする。

 だが、重装騎兵の圧力は、それを許さない。


 盾が割れ、

 兵が弾き飛ばされ、

 陣形が崩れていく。


 ランバルタは、敵将の姿を捉えた。


 一直線に、駆ける。


 リーノも迎え撃った。


 刃が交錯する。


 一合。


 それで終わった。


 ランバルタの剣が、

 迷いなく、リーノを斬り捨てた。


 馬上から崩れ落ちる身体。


 その瞬間、

 ランバルタの視界が滲む。


「……ティナ……」


 仇は討った。

 だが、失ったものは、戻らない。


 涙が、頬を伝った。




 同時に、リディアとエマの軍が動く。


 リーノ軍を壊滅させ、

 シェリル軍の後尾を叩いた。


 王国軍に動揺が走る。


 だが、シェリルは踏みとどまった。


 意を決し、反転。


 氷の剣を振るう。


 一振りごとに、氷柱が舞い、

 突撃してきた兵を弾き返す。


「下がれ!!」


 まさかの反撃に、

 リディアも、エマも、一瞬だけ足を止めた。


 その隙を突き、

 シェリルは軍をまとめ、離脱する。


 向かう先は、

 女王の逃げ込んだ山城――グラ=エルディア。


 戦場には、

 勝者と敗者、

 そして、取り返しのつかない喪失だけが残された。

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