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パワハラ女上司に殺された中年サラリーマンは異世界で国をつくる  作者: 越後⭐︎ドラゴン


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第26章 

 リディアは北方の異民族一万を率いて、ついにキョウの陣へと合流した。


 草原の彼方から現れたその軍勢は、

 角笛と共に土煙を上げながら進み、

 兵たちの士気を一気に押し上げた。


「……来たか」


 キョウは胸の奥で、ようやく一つの不安が消えるのを感じていた。


 すでに各地から義勇兵が雪崩れ込むように集まり、

 キョウの軍は八万に迫る大軍となっていた。

 農民、元兵士、解放された男たち——

 立場も過去も違う者たちが、ただ一つの旗の下に集っている。


 一方、ヴァルティア城では、まったく逆の空気が流れていた。


 城門を閉ざしたまま、帝都へは何度も援軍要請が送られた。

 だが、返ってくるのは沈黙ばかりだった。


「……なぜだ。なぜ援軍が来ん……!」


 貴族の一人が叫ぶ。


 帝都はそれどころではなかった。


 王国が、ついに本格的に牙を剥いたのだ。


 第2将軍ルミナス率いる四万、

 第3将軍リーノ率いる三万。

 合計七万の軍が、帝国領へ侵入した。


 迎え撃つのは、四天王ランバルタの五万。


 二方向からの侵攻に対し、

 ランバルタは軍を割らざるを得なかった。


 副官ティナに三万を預け、リーノ軍へ。

 自身は二万でルミナス軍に対峙する。


 帝都には、

「ヴァルティアからの救援要請」

「ランバルタからの緊急支援要請」

 その両方が同時に届いていた。


 だが、ゼルフィア直下の二万は、

 帝都防衛の最後の切り札。


「ここを動かせば、帝都が空になる……」


 結局、どこにも出せなかった。

 帝国は、完全に手詰まりだった。


 さらにヴァルティア城は、

 もっと致命的な問題を抱えていた。


 兵糧である。


 実はすでに、残り一ヶ月分もなかった。

 だが、その事実を知る者はほとんどいない。


 知っていたのは——

 メルティナだけだった。


 彼女は黙っていた。あえて口にしなかった。

 城内の貴族たちが、あまりにも身勝手だったからだ。


 そして一ヶ月が過ぎ、

 ついに隠しきれなくなった。


「おい、長官! 兵糧の配給が減っているぞ!」


「説明しろ! このままでは飢え死にだ!」


 怒号と恫喝が、執務室に叩きつけられる。


 だがメルティナは、冷えきった目で彼らを見た。


「……そもそも、あなたたちが逃げ込んできたからよ」


 一瞬、貴族たちは言葉を失った。


「本来、ここはここまで籠城する予定の城じゃなかった。

 あなたたちが、戦場から逃げてここへ流れ込んだ。

 その結果、兵糧が尽きようとしている」


 貴族たちの顔が青ざめる。


「な、なにを……!」


 メルティナは三人の貴族に視線を向けた。


 そして、静かに術式を紡ぐ。


 床に淡い光の陣が浮かび、

 三人の身体がびくりと跳ねる。


 次の瞬間、三人の瞳から光が消えた。


「……私、少人数なら首輪なしでも強化できるようになったの」


 それは、バフ術の進化だった。

 対象は限定されるが、精神と肉体を強制的に従属させる。


 三人の貴族は、もはや自分の意思で言葉を発することすらできない。


「あなたたちは、

 それぞれ千を率いて出撃しなさい」


 他の貴族たちは、言葉を失った。

 もはや、メルティナに逆らうことができなかった。


 こうして——

 三千の兵が、城門を開いて打って出た。


 キョウの陣では、異変にすぐ気づいた。


「……少なすぎる」


 キョウは空を仰ぐ。


「この兵力で、今さら撃って出る理由がない」


 三千の兵は、異様に強かった。


 強化された女貴族たちが先頭に立ち、

 その一撃一撃は、重く鋭く、兵をなぎ倒していく。


 キョウの軍は連合軍。

 寄せ集めであるがゆえ、陣形にはどうしても薄い場所が生まれる。


 そこを、三人の女貴族が鋭く突いた。


「突破された……!」


 リディア、セレナ、エマが、それぞれ迎え撃つ。


 リディアは大剣を振るい、

 一人目の女貴族を正面から叩き伏せた。


 セレナは距離を取り、

 光の矢を一点に集中させ、二人目を正確に射抜く。


 エマは——

 三人目と激突し、完全に押されていた。


 受けるのがやっとで、

 一歩も前へ出られない。


「く……っ!」


 そこへ、キョウが割って入った。


 一閃。


 女貴族の身体は宙を舞い、

 地に伏した。


 残った兵たちはすべて捕虜となった。


 尋問の結果、すべてが明らかになる。


 ・ヴァルティア城には、もう兵糧がない

 ・帝都からの援軍は、永久に来ない

 ・城内の貴族たちは、すでに内輪揉め寸前


 それを聞いたキョウは、静かに立ち上がった。


「……全軍に伝えろ」


 セレナが息を呑む。


「総攻撃だ。

 今日で——ヴァルティアを取り戻す」


 八万の軍が、一斉に動き始めた。


 ヴァルティア奪還戦。

 ついに、決着の時が来た。


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