表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パワハラ女上司に殺された中年サラリーマンは異世界で国をつくる  作者: 越後⭐︎ドラゴン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/46

第25章 再会

 ヴァルティア陥落から半年。

 反乱の炎は消えるどころか、帝国中へ広がっていた。


 男の地位向上を掲げたキョウの思想は、

 ヴァルティアを失ってもなお民の心に残り続け、

 帝国の貴族たちが送る鎮圧軍さえ退ける勢いとなっていた。


 そんな中、キョウはセレナの手を引いて独立都市を制圧し、

 シオンの死を招いた張本人・サーシャを退けた。


 そして——

 その街で、一人の女将校と再会する。




 山岳地帯で半年間籠城していたエマは、

 わずかな部下と共にキョウのもとへ駆けつけた。


「キョウ様……!」


 彼女は一目見るなり、堪えきれず抱きついた。

 山風に晒された髪は乱れていたが、

 その瞳は半年間の苦労と、生き延びた喜びで潤んでいた。


 キョウは少し驚いたように息を呑んだ。


「エマ……無事でよかった」


「っ……はい……でも……っ」


 声が震えたのは、疲れのせいだけではない。


 エマは気づいた。

 キョウの隣に立つセレナの、落ち着いた微笑を。


 そして、ふとしたキョウの視線の向き。

 それは以前より、セレナに寄り添っていた。


(……ああ、私……こんな気持ちだったのか)


 胸の奥がずきりと痛んだ。


 主従以上を望んでいたわけではない——

 そう思っていた。

 でも、今は分かってしまう。


 この涙は、再会の喜びか。

 それとも——隣を奪われた痛みなのか。


 エマは自分でも答えを出せなかった。




 だが戦は待ってはくれない。


 エマの兵、セレナの術士隊、反乱軍の若者たち……

 次々と「自由を求める者」たちがキョウの旗の下に集まってきた。


 気づけば、その数は五万。


 瓦解しかけた帝国の支配は、

 一地方領ヴァルティアから再び崩れ始めていた。




 一方そのヴァルティア城では、

 メルティナが長官として立て籠もっていた。


 本当はキョウに投降したかった。

 だが貴族残党四万の監視の中では、裏切りは許されない。


「あの時、待てばよかった……

 キョウ様はきっと戻ってきた……のに……」


 自責で眠れぬ夜を繰り返す。

 かつて「殺せ」と叫ぶほど帝国を憎んだのに、

 その帝国に膝を折った自分が許せなかった。


「私は……どう償えばいいの……」


 その問いだけが胸を刺し続けた。




 そして——

 キョウは決断する。


 ヴァルティア城の攻略には、どうしても一人の戦力が必要だ。


 リディア。


 北へ逃れた彼女は異民族を服属させ、

 族長として君臨していた。


 使者を出しても、返答はない。


 セレナはキョウの顔色を何度も盗み見た。

 彼女の胸の奥で、

 “リディアには勝てないかもしれない”という恐れと、

 “キョウが奪われるかもしれない”という焦りが混ざり合う。


「行くのね、やっぱり」


「行かないと……あいつは戻れないままだ」


 セレナは唇をかみしめた。


「……気をつけて。

 私は信じて待つわ。でも……」


 でも——

 “早く帰ってきて”。

 その言葉は胸に沈めて、口にはしなかった。




 キョウは単身、北方草原へ向かった。


 乾いた風が吹く広野の中央で、

 リディアは待っていた。


 その気配は、以前より鋭く、どこか孤独だった。


「来たのね。何度も使者を送りつけるから……

 覚悟を決めたわ」


「話がしたかった。お前が——必要だから」


 その言葉にリディアのまつげが震える。


「……そういうこと、簡単に言うな」


 キョウがもう一歩近づけば、

 誓いが壊れてしまいそうだった。


 だからリディアは大剣を構える。


「北の掟よ。従わせたいなら叩き伏せなさい」


「分かった。お前を連れ戻すためなら、何度でも相手する」


 互いに踏み込み、草原の大気が震えた。


 最初の一合は鉄と鉄の悲鳴。

 二合目は地面を砕く衝撃。

 三合目は空気が裂けた。


 キョウは分かった。


(……強くなってる。あの時以上に)


 リディアも気づいていた。


(……この人、前よりずっと……静かで、怖い……)


 互いに手が出せないまま、

 風が吹き——落ち葉が舞い上がった。


 一瞬の視界の欠片。


 二人の影が交差した。


 一閃。


 リディアの大剣が地へ落ちる。

 肩口から血が滲み、よろめきながら笑った。


「……やっぱり……勝てない……っ」


「勝ち負けじゃない。戻ってきてほしい」


「……ずるい……そんな言い方……」


 リディアは涙をこぼさない。

 だが声は震えていた。


「生きて……キョウ。

 あなたが世界を変えるなら……私はその隣に立つ」


「約束する。絶対に、負けない」


 二人の誓いは、草原の風に溶けて消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ