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サンクチュアリ  作者: 葉山麻代


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ピチャンピチャンピチャン

 ピチャンピチャンピチャン。


 一生懸命水を舐めていた。


「猫缶買ってきたのよ」

「にゃー」


 顔をそらされた。


「あら? 興味ないの?」

「にゃー」


 今度はこちらを見て鳴いていた。


「困ったわね。何なら食べる? って、聞いて分かる訳ないわよね」


 すると、黒猫はぴょんと流し台に飛び乗り、昨日、鶏の笹身を提供した皿に、ひょいと足をかけて示した。


「もしかして、昨日と同じ鶏の笹身が良いの?」

「にゃー!」

「そう、なら少し待ってね」

「にゃー」


 冷蔵庫から鶏の笹身を出し、ジッパーバッグに入れ、平らに並べてから空気を抜いて茹でた。こうするとパサパサになりにくいって、何かで聞いた。


 茹でている間に、自分のご飯も作ろう。米を炊いて、中華だしとワカメと溶き卵のスープを作って、キュウリを細切りにして、胡麻ダレを作って、笹身をほぐしたものをのせ、棒々鶏が出来上がる。

 普段なら、笹身をスープで茹でるのだけど、スープの材料を猫が食べて良い食材か判らないので、味をつけずに加熱したのだった。


「私にも笹身、分けてね」

「にゃー」

「はい、できましたよー」


 1つの皿に笹身だけをのせ、もう1つの皿は細切りキュウリの上に笹身をのせておいた。

 スープや胡麻ダレを取って戻ってくると、なんと、キュウリがのった笹身の前を陣取っている。


「キュウリ食べるの?」

「にゃー」

「なら、あなた用にキュウリ切ってくるわ」


 キュウリの細切りを切って戻ってくると、言葉が通じたのか、場所を移動して待っていてくれた。


 皿にキュウリをのせ、どうぞと皿を渡した。モグモグと、美味しそうに食べている。猫って、キュウリ食べるのねぇ。と、感心しながら眺めていた。皿が空になると、にゃーと鳴き、部屋を出ていった。


「あら、食べたら帰っちゃうのね」


 私は苦笑し、自分のごはんを食べ始めた。

 翌日は休日なので、少し本でも読もうと思ったが、そうだ、本は無いんだったと思い出し、悲しくなった。


 考えても仕方ないが、貴重な本の再購入は絶望的で、汚れた水で張り付いたページは、二度とその中身を読むことは叶わない。私にとっての本は、有名絵画より貴重で、宝石よりも価値のあるものだ。飾りもするが、実用的に読みもする。


 寝る前に考えると絶望的なので、考えるのを止めた。


「にゃー、にゃー」


 黒猫かと思ったら、白い仔猫だった。


「あら、どうしたの? 迷子?」


 なぜか猫はキョロキョロし、誰かを探すように部屋の中を歩き回って見たあと、出ていってしまった。


「猫、多いのかしら?」


 テレビもないので、雑誌を隅から隅まで読み終えると本当にすることがない。たまには早く寝ようかしら? そう考え、しっかり戸締まりをした後、さっと風呂に入り、早くから布団に入った。早すぎて眠れるかしらと心配していたが、あっさり眠れたらしい。



 眠った私に、声をかける人がいた。これは夢かしら?


○△□▼○☆◎(協力を感謝する)

「なんですか?」

○△□▼○☆◎(協力を感謝する)


 私は意味が分からず聞き返していた。知らない言葉だったのに何となく言っている意味はわかった。でもその声は、感謝を繰り返すだけで、詳しく説明はしてくれない。


「良く分からないけど、お役に立てたなら良かったです」


 私の返答に、相手の感謝の声は止まった。私はそのまま眠ったらしい。もしかすると夢だったのかもしれない。

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